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エリンヘリヤルの召喚術士  作者: ジュエル
第一章★出会い編
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第2話◆ゴッデススキル



「起きなさい、ソータ」身体を揺すられて目が覚めるソータ。


「んん……?」


 笑顔の母親がいる……この人は俺の母親、リエナ・マキシだ。……それにしても、メッチャキレイだなこの人……


「今日は、町の神殿で女神様からスキルを頂戴出来る日よ。ほら、お着替えはそこに置いてあるから着替えて顔を洗ったら、いらっしゃいね」笑顔で俺の頭を撫でて部屋を出て行く母親。


「……母さんは産まれた時からずっとキレイだけど……全然変わらないな……」そう口に出してみたが、それは当然なのだ。

 今の俺、ソータ・マキシの母親であるリエナ・マキシは、12歳の誕生日に神殿へ行って女神から固有スキルを授かった。通称ゴッデススキルと呼ばれるそのスキルの内容は、不老というパッシヴスキルだった。

 パッシヴスキルというのは、常に発動されるスキルのことである。また、自分が持っているスキルはステータスを開いて確認することが出来るらしい。

 何でゲームみたいなシステムが? と思ったが、元々こちらの世界で生活していた人間が、俺が元いた世界へ転移して、そこで勉強をしてゲーム開発したのが始まりらしい。

 それ故に、こちらの世界で開けるステータス画面のインターフェースは、元いた世界のゲームの物と酷似していた。


 ――話を戻すが、不老スキルという名前のこれは、18歳頃~20代前半くらいから外見の年齢をとらなくなるというスキルだ。このスキルを欲しがる女性は非常に多い。当然、いつまでも若く美しくいられるからである。

 そして、俺が元いた世界とは違って、ここでは剣や槍を使った、モンスターとの戦いがある。不老スキルの本義(ほんぎ)は、この戦闘において発揮される。


 ……誰もが、どれだけ鍛えていても、老いていく事で力が弱くなってしまうのは当然のことだろう。しかし、不老のスキルがあれば、努力次第でどこまでも強くなれるのだそうだ。

 ゲームで例えると、寿命で死ぬまでは最大レベルの制限が無くなったようなものだと考えれば良いだろう。

 そして、不老スキルは外見が老けなくなるのと同時に、内臓も老化せず、その寿命も必然的に長いものとなる。


 この世界で知ったそんなスキルの豆知識を頭の中で再生しながら、着替えをする。家は結構裕福な家で産まれることが出来たので、それほど不自由しないで生活出来た。

 ……12歳になった俺がもらえるスキルは何だろう……? たぶんだけど、エンさんが作ったガチャガチャから出したカプセルだよな……?

 どんなスキルだったっけ……? 二つあった事は覚えてるけど……まぁ、いいか!


 マキシ家は父母含めて五人家族の、三人姉弟(きょうだい)だ。俺こと、ソータ・マキシはこの三人姉弟の末っ子で、長男だ。つまり、上は長女と次女だ。

 ずっと女所帯だったので、俺が産まれた時に父親はたいそう喜んだそうだ。


 父親の名前はゾルダー・マキシ(43)。ゴッデススキルは槍術の才。母親はリエナ・マキシ(41)。ゴッデススキルは不老。

 長女はアルマ・マキシ(19)。ゴッデススキルは魔法習熟5倍、次女のソエラ・マキシ(16)。ゴッデススキルは敏捷上昇値7倍だ。


 父親ゾルダーは寡黙で、左目に眼帯を付けており、その眼帯からは古傷がはみ出ている。髭は髪の色と同じ青色で、口髭と顎髭の両方を少し伸ばしており、ワイルドでカッコイイ。


 母親リエナはいつも遠くから見守ってくれるような女性で、髪色は明るい金髪。後ろで一つの大きな三つ編みにしている。これがまた綺麗さの中に可愛さがあって素敵だ。これが母親でなければ惚れていたかもしれない。


 長女アルマは薄い緑色の髪でセミロング。瞳の色も珍しい緑色をしていた。目が父親似で若干鋭いのだが、いつも笑顔で話し掛けてくれる為、柔らかい印象しかない。


 次女ソエラは元気な女の子といった印象で、その元気そうな見た目通り、髪色は真っ赤に燃えるような色だ。髪型は頭頂部と後頭部の間の高い位置に一つ縛りしている。顔は全体的に母親ソックリで、元気で活発な母親のようだった。父親に言わせてみれば、ソエラは不老スキルが発揮される直前の母親そのものだそうだ。


 そして、俺は元の世界通り黒髪で黒目だ。顔は以前の日本に住んでいた時の子供の頃のそのままだった。

 だが、元々の地球の頃の俺の顔は、特に目付きがゾルダーにソックリだったので、転生する際に少し似た人間の子供として生まれるのではないか? という考えに至った。


 ここまでで分かると思うが、家族全員の髪色が違う。しかしそれはこの世界では当たり前のことで、産まれて髪が生え始めた頃、空気中に漂うマナと呼ばれる魔法の源を髪が吸収することで発色するらしい。

 ちなみに俺の黒髪というのは滅多にいない珍しい色だそうだ。全く髪がマナを吸収しなかった場合は真っ白になるので、黒髪というのは髪にかなり多くのマナが吸収されたことの証らしい。

 また、この髪がマナを吸収する……という話は、当人の魔法の強さとは一切関係ないようだ。


 五人で食卓を囲み朝食を摂る。


「ソータ、今日は誕生日だね! おねーたんとどこか行く?」そう言ってきたのは、現在19歳の長女アルマだった。


「今日はいいや。本を買ってもらうんだ!」とりあえず年齢相応に返しておくことにする。


 すると「じゃあアタシがお姉ちゃんと行くー♪」と続く次女のソエラ。しかし母親はそれを止める。


「ソエラは今日は学校でしょうが! それからアルマ。休暇中とはいえ、あまり遊び過ぎちゃダメよ?」


「分かってるよ~! じゃあ、おねーたんはソータに本の読み聞かせてあげる~!」と俺の頭を撫でるアルマ。


 因みに、アルマが俺に向かって一人称を、()()()()()と言っている理由は簡単で、俺は幼少期に幼児感を演出する為にわざと、おねーたんと呼んでいたのだ。

 アルマはそれが気に入ったらしく、事あるごとに「おねーたんはねぇ~」と話してくる。正直若干ウザい。しかし、優しく面倒見の良い姉なので、そこは大目に見る事にした。


 今食べているのは、キッシュのような食べ物と、魚の切り身にコーンスープだ。どれも今朝母親が作ってくれたもので、とても美味しく感じる。

 キッシュについては元の世界のパン屋さんなどで食べたことはあるが、焼き立てだからか、あれよりもずっと美味しい。魚の切り身は元の世界でも普通に一般家庭で食べるようなものだ。そしてコーンスープも、元の世界で時々飲んでいたコーンポタージュだ。


 ・

 ・

 ・


 しばらくすると全員が食べ終わったので、俺が全員の食器をまとめて洗い場に置いておく。これはもう自由に歩いたり走ったり多少重いものを持ったり出来るようになってから自発的に始めたことだ。

 元の世界でもこれは普段からやっていた。これを初めてこちらの世界でやった時は父親は目を丸くし、母親は感激、姉二人は「えー!?」と驚いていた。


 そりゃあそうだ。転ばずに歩けるようになった子供が自発的にそんな事を始めるんだから……。




 ――ソータは、小さなカバンに必要な荷物を入れる。必要な荷物と言っても、ペンとゴワゴワした紙を数枚入れているだけだが。そして、腰にナイフを差している。

 出発の準備が整って、玄関に置いてあるイスに座ってしばらく待っていると、母親は食器洗いを済ませてやって来た。


「おまたせ、ソータ。じゃあ、神殿へ行くわよ」そう言って母親は俺の手を取って家を出る。


 白い外観の綺麗な家を出て、神殿へ歩く。その神殿に祀られている女神様の名前はエン・マーディオーらしい。あの時、境界で知り合ったあの女神様だ。

 ハトのような鳥がパタパタと飛び去っていき、真っ白な石で造られた美しい噴水広場を抜けると、色とりどりの花が咲いている花壇が両端にあり、その奥に白く美しい建物が鎮座している。あれが女神の神殿だ。

 街並みは、中世ヨーロッパのような印象も受けるが、この街は特に全世界中で見ても、かなりの発展を遂げているようだ。


 ソータが着いた頃には既に長蛇の列が出来ており、その最後尾へ並ぶ。

 母親は俺に耳打ちをしてくる「今のうちにステータス確認しておきなさい」


 頭の中で「ステータス」と念じながら、手の平を空中でサッと横に振るとそこに表示される。因みに基本的には他の人には見えないらしい。……基本的には。


 名前:ソータ・マキシ 年齢:12

 職業:なし

 Lv:1 HP:30/30 MP:13/13 SP:10/10

 攻撃力:12 防御力:8

 魔攻力:10 魔防力:9

 敏捷力:8 精神力:122

 ゴッデススキル:なし

 通常スキル:なし


 こう表示されていた。

 精神力が異常に高いのは、生まれ変わっていて精神年齢が高校生だからだろう。元々高校生の割には落ち着いた性格ではあったので、特別高いとは思わなかった。

 ちなみに、この精神力というのはモンスターなどから幻惑魔法や精神支配魔法を使われたりした場合の耐性で、毒や麻痺魔法なども何故かこの精神力の数値が高いと効かないらしい。


 一通り確認し終えると「やったわねぇ!!」「うんっ!」という声が前から聞こえてきた。母親らしき人と小さな娘……と言っても同い年だが、親子が手を繋いで歩いてきた。

 きっと良いゴッデススキルをもらえたのだろう。続々に良いスキルをもらえているようで、ほとんどの親子がニコニコしている。


 ……時々、魂が抜けたような顔をしている親がいるが、それは見なかったことにする。



 そんな風景を眺めながら二時間半ほど待っていると、とうとう自分の番がやって来た。



 ――女神の神殿内。


 神殿に入ると、扉の前で修道女が待っていた。リエナとソータを見ると深々とお辞儀をしてきた。

「お待ちしておりました……。まずは、お名前をお願い致します」頭を上げた修道女がそう言うとリエナも続いて一度お辞儀をしてから、続いた。

「マキシ家リエナでございます。長男ソータ・マキシをお願い申し上げます」

 リエナがそう言い終えると、その修道女は「エン・マーディオ―様のご加護があらんことを……」と言うと、少し横へ移動して続けた。

「それでは、お母様はあちらへ……」修道女はそのままリエナを案内する


 それと同時に、こちらへやって来た白いローブの牧師がやって来た。

「さ、ソータ・マキシくん。キミはあそこにある祭壇で膝を付いてあの女神像に祈りを捧げなさい……一緒にやってあげるから、真似してごらん」彼はそう言うと一緒に祭壇まで来てくれた。


「……こうですか?」

「そうそう。そのまま目を閉じて祈ってみてごらん」おじさんは笑顔で教えてくれた。

 素直に従って、祈りを捧げる……


 ・

 ・

 ・


 しばらく祈りを捧げると、真っ暗だったはずの視界はやがて真っ白になっていき……やがて、その視線の先にはエン・マーディオーが現れた。


「記念すべき12歳を迎えし子よ……名前を名乗りなさい……」

 エンは目を閉じている状態で、如何にも女神様らしく言う。そんな人だったっけ……?


「ソータ・マキシです……お久しぶりです」俺はとりあえずエンに挨拶をする。


「……んっ?」エンは片目を開ける。


「えっ? もしかして、あの時の……?」徐々に両目を見開いていくエン。


「……そす」


「大きくなったわねぇ! ……は、おかしいか。かわいくなったわねぇ! …………って、あれ? えっ? えぇっ?」急に驚き始めるエン。


「どうかしました?」


「ど、どうして記憶があるの……?」わなわなと震えているエン。


「転生って、そういうものじゃ無いんですか?」


「き……き……」


「き?」


「記憶消すの忘れてたあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」頭を抱えて叫ぶエン。


 あぁ、本当は記憶を消すつもりだったんだな……

「……あの、エンさん。良いからゴッデススキルくださいよ」


「え? あ……そうだったわね! ……はい“経験値10倍”と“天賦(てんぷ)の才”ね……」ポンッポンッと優しい衝撃が二回、身体に触れた。


「ソータ・マキシ。あの金のカプセルを引き当てたキミならこの世界で頑張っていけるはず……」どんよりした雰囲気のままエンが言う。


「何を落ち込んでるんですか?」と聞くと、「先輩女神に怒られちゃう……時々人間を転生させる時に、前世の記憶を消すの忘れちゃうの……」と言っていた。


 たまに“前世の記憶を持っている”という事で話題になる人がいるが、どうやらあの不思議な現象は、ただ単にエンが記憶を消し忘れていたらしい。

「なら、今記憶を消しますか?」と尋ねるとエンは首を横に振って続けた「私の転生術の記憶消去は、全ての記憶を消去するものだから、もしも今やったら自分の名前ごとこの世界の記憶も全て消しちゃうことになるのよ……」


 さすがにそれは困るな……。

 そう考えているとエンは「まぁ、仕方がないからそのまま生活してくれる? ……もしそれでもって言うならまたここへいらっしゃい」と言った。


「分かりました。……それはそうと、エンさん。この世界で俺は何をすればいいんですか?」


「それはそうとって……いや、貴方は何も悪くないものね……」そう言ってエンは一息つくと続ける。

「基本的には、王国軍に入って世界の為に戦うも良し、全世界の財宝を狙うハンターになるもよし、盗賊団に入って盗みをするも良し、ありとあらゆる犯罪に手を染める極悪人になるもよし……全ては貴方の選択次第よ」


 女神様が言うことか? と少し思ったが、境界の内部(シノラ・ト・エントス)で言われた「やられたら徹底的にやり返しなさい」という言葉を思い出した。

 ……なるほど。自分が最初にやる側の可能性も含めて話してくれたんだな。と理解することにした。


「……何をしても良いんですね?」


「うん、法に触れようが触れまいが、何をしても良いわ。でも、責任を取るのは当然自分自身。そのことだけは忘れないこと! ……いいわね?」


「わかりました」


「じゃあ……キミの人生に幸があらんことを!」


 スーッと白い景色が黒い景色に変わり、まだ目は開けていないものの自分の身体がかすかに光っている事に気付く。

 そして次第に、自分の身体の光は無くなっていく……


「ソータくん、目を開けて大丈夫だよ」後ろからさっきのおじさんの声が聞こえた。


「はい」そう言って、目を開けるソータ。


 牧師は、どこからか取り出した石版を読み上げながら言う。

「さて……ソータくんのゴッデススキルは、経験値10倍…………!?」二つ目のゴッデススキルを見た牧師は目を丸くして石版を見て固まる。


「き、キミ……エン・マーディオー様にゴッデススキルを二つも……?」


「あ、はい。二つもらいました」


「えっ? ウソ……!?」後ろから母親の声が聞こえる。振り向くと、母親は目を丸くしながら、両手で口を抑えている。


「す、すごい……! すごいぞキミは……!! こんな人間は見たことがない!! 私は今、この世界の英雄になる少年と話している……!!」大興奮する牧師。落ち着けよ。


 その後は神殿中が大騒ぎになったが、ゴッデススキルに関しては個人情報の中でもトップシークレットらしく、情報が外に洩れることは無かった。

 また、女神の神殿は世界各地にあるが、その体制は独自のものとなっており、いずれの国家にも属していないものとなっている。これは、この世界の国際法に基づいて、ゴッデススキルを習得した者の個人情報を守るためだそうだ。


 ――とは言っても、親しい人間が出来た場合、自分のゴッデススキルを伝え合うのが常識という側面もあり、友人が出来た場合のゴッデススキルの扱いは中々に面倒なもののようだ。



 ……(ステータス)再度ソータはステータスを開いて確認すると、確かにゴッデススキルを二つ習得していた。

 エンには感謝しないとな。天賦の才がイマイチどんなものなのか分からないが……。




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