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エリンヘリヤルの召喚術士  作者: ジュエル
第一章★出会い編
12/96

第10話◆初戦闘



(ステータス……)


 名前:ソータ・マキシ 年齢:12

 職業:なし

 Lv:8 HP:201/201 MP:99/99 SP:89/89

 攻撃力:61 防御力:49

 魔攻力:50 魔防力:52

 敏捷力:55 精神力:122

 ゴッデススキル:経験値10倍/天賦の才

 通常スキル:【槍術マスタリー:Lv1】【拳術マスタリー:Lv2】【炎属性魔法:Lv1】【氷属性魔法:Lv1】



「こんな感じかな……」


「さすが……というべきね、ソータ」

 錬成学院の入学式を二日後に控えたある日、街のパン屋さんへ一人で行っているとクレリアと偶然会ったので、一緒に遊ぶことになった。

 それまでは、長女のアルマに教わりながら魔法の勉強もして、何とか炎属性魔法と氷属性魔法が使えるようになれた。どちらも初歩魔法程度しか扱えないが……


「ポニ子、お前の能力値はどうなんだ?」


「ポニ子って言うな! ……ええっと……本当はゴッデススキルが無いと覗けないけど、特別に見せてあげる!」と言ってクレリアは紙に書き出してくれた。


 名前:クレリア・ラピス 年齢:12

 職業:なし

 Lv:5 HP:127/127 MP:82/82 SP:77/77

 攻撃力:40 防御力:35

 魔攻力:33 魔防力:31

 敏捷力:51 精神力:42

 ゴッデススキル:能力透視

 通常スキル:【刀剣術マスタリー:Lv1】


「こんな感じ!」


「おぉ、普通に強いな」


「はぁ? アンタほどじゃないでしょ? バカにしてんの?」何故毎回そっち方向へ話を持っていくんだポニ子は……。


「本当だよ。俺がそれくらいのレベルの頃は、精神力以外で50を超えていた能力は無かったぞ?」


「そ、そうだったんだ……じゃあ、アタシがアンタに追いつければ、アタシの方が強くなる可能性だってあるわけね!」両手を腰に付け、エッヘン! と言ってもおかしくないポーズを取るクレリア。


「まぁ、負ける気はないけどな!」当然、ここは下手(したて)には出ない。




「……テメェ、人に迷惑掛けといてその程度の対応か? あぁん!?」少し離れた所から男性の声が聞こえてきた。

 その方向へ目を向けるソータとクレリア。


「何だ?」


 そちらへ行ってみると、少し開けた大通りで男性に胸ぐらを掴まれているソータたちと同じくらいの年齢の男の子がいた。

 周りには野次馬がたくさんいるにも関わらず、男の子を助けようと行動を起こす人は誰一人としていなかった。

 ……にも関わらず、胸ぐらを掴まれている彼は一歩も引かずに淡々と返している。


「僕は真っ直ぐ前を見て歩いていた。貴方が突然横から突っ込んできて、自分で自分の服を汚したんだろう?」


「テメェ……言わせておけば生意気なガキだ! 一度痛い目に遭わねぇと分からねえようだな……!」


 そう言って、殴るために後ろに腕を引く……


 ……が、ソータがその男の手を掴んで、殴るのを阻害していた。


「な、何だ!?」男がこちらに振り返ると、腕を放す。


「テメェ、コイツの味方か?」


 そう言われたソータは笑顔になると答える。

「いえ、通りすがりなんですけど……弱い者イジメをする、歳だけ重ねた見苦しい大人が目に入ったものですから、つい……」笑顔を崩さずに挑発するソータ。


「何だとテメェ……ぶっ殺してやる!!」


「ちょっと、ソータ!? 逃げて! その男レベル高いわよ!!」クレリアがそう叫ぶと、喧嘩を吹っ掛けられていた少年が目を見開く。


「ソータ……コイツが……!?」



「死ねや、クソガキィッ!!」目の前にまで襲い掛かってきた拳を屈んで躱し、篭手を腰に装着し、左右の手をその場所にはめ込むだけで紅蓮の手甲を装備出来るようにしていたソータは、それを瞬時に装備する。

 そしてその場で反撃を繰り出す。


 男の胸部に思い切り右ストレートを放つと、見事に直撃した。

“拳術マスタリー発動――”

 重く鈍い音と共に拳は男の胸部へ若干沈むが、男に効いている様子はあまりなかった。


「ウッ……! 中々の威力のパンチじゃねぇか……!!」


「効いていない!?」ハッとするソータ。


 クレリアのゴッデススキル能力透視で見えていた男のステータスは……


 名前:ルディ・ガレット 年齢:34

 職業:無法者

 Lv:21 HP:481/485 MP:97/97 SP:247/247

 攻撃力:274 防御力:266

 魔攻力:73 魔防力:83

 敏捷力:251 精神力:171

 ゴッデススキル:マスタリーアップ

 通常スキル:【拳術マスタリー:Lv4】【斧術(ふじゅつ)マスタリー:Lv3】【闘争心:Lv2】【威圧:Lv3】【盗術:Lv2】


「ソータ! 一旦体勢を立て直して!」右ストレートで攻撃したソータに声を飛ばすクレリア。


「あぁ!」返事をして離脱を試みるが――


「逃がすかぁッ!!」と男は叫ぶと、ソータの右手首を掴んで顔面に容赦なく連続パンチをする……


「ぐっ! ……うぐっ!!」……しばらく続いた攻撃の手が一旦止むと、そのまま後ろに突き飛ばし、ソータはその場で尻もちをつく。


「あ~ぁ……こんなガキが歯向かってくるたぁ……俺も程度が下がったかな……」拳の関節をぽきぽき鳴らしながら男はソータを見る。

 だが、そのソータの目からは闘争心を失ってはいなかった。


「テメェ……何だその目は……!!」今度はそのまま胸ぐらを掴みに行く男。その瞬間――ピロリッ! という音が頭の中に響いた。

“新しいスキル【反骨心】を修得!”


 何かスキルが増えたようだが、そんなことはどうだっていい。問題は目の前の男が意外にも強いことだ。


 再び目の前にいる男に意識を向けたタイミングで、ソータの胸ぐらを掴みにいっていたその腕は、最初に喧嘩を吹っ掛けられていた男の子が掴んだ。

 そして、ソータとクレリアに対して一言……。


「俺の名前はエルディア。元はといえば、俺が吹っ掛けられていた喧嘩だ。俺が買うよ、君たちは逃げるんだ」それを聞くと尻もちをついた状態のソータが口を開いた。


「それを言うならエルディア。俺も煽ったとはいえ、手を出されたんだ。売った喧嘩は……押し売りだ!」そう言いながら立ち上がり、ファイティングポーズをとるソータ。


「そうか……」それだけ言うと、掴んでいた男の手を放しその場から離脱すると、ソータと横に並んでから剣を抜くエルディア。そして一言。

「だったら、コイツを懲らしめるのを手伝ってもらおうか」


「そのつもりさ……!」


「あ、アタシもやるわよ!」そう言ったクレリアは、ソータとエルディアの少し後ろでレイピアを抜いて構える。


「ポニ子、コイツの弱点は何か解るか?」後ろにいるクレリアに声を掛けるソータ。


「……魔法能力が低いわ。200を超えた能力値だらけなのに、魔防力は83しかない! でもマスタリーアップっていうゴッデススキルがあるから気を付けて!」

 ちなみにマスタリーアップというのは、拳術マスタリーや斧術マスタリーなどの武器マスタリー系のレベルを表示よりも上げることが出来るスキルだ。

 さらに、マスタリー系のスキルの修得も早くなり、レベルも上げやすくなるので、子供時代に特に真価を発揮する早咲きのゴッデススキルだ。


「そこの嬢ちゃんは能力透視持ちか……だったら能力がバレ切ってる以上後回しで問題ないな! 先に前のクソガキ二人を相手にしてやる……!」


「ソータ、キミは魔法は使えるかい?」エルディアが男から目を離さずに聞いてくる。


「あぁ、初歩魔法だけなら炎属性と氷属性を使える」


「だったら問題ない……ソータ、俺の剣に炎属性を頼む」


「えっ?」


「魔法剣という技術だ。良いから使え」


「あ、あぁ! ……フレイム!」エルディアの剣に向けた手からソフトボール程度の大きさの火球が飛ぶ!

 それが着弾すると、エルディアの剣には炎が纏っていた。


「これが魔法剣フレイムソードだ! 行くぞ!!」エルディアは男に駆け出す!


「だったらこっちも……! 魔力解放!」と言って紅蓮の手甲から魔力を放出させ、それを手甲に纏う。


「二人揃って魔法武器かよ……! 最近のガキってぇのは身の丈を超えた装備を持ってるから怖いねぇ……!」そう言うと、男は拳を構えて駆け出す。


「くらえっ!」エルディアのフレイムソードによる斬撃は、受け流され、エルディアの顔面に思い切りパンチが入った!


「ぐあぁっ!?」吹き飛ばされるエルディア。

 エルディアの顔面にクリーンヒットを食らわせ、ニヤッと口角を釣り上げた男は言う。

「おいおい、坊っちゃん。動きが直線的すぎるぜ?」そう言った瞬間、下から物凄い衝撃と痛みが襲ってきた!

 エルディアが吹き飛ばされる直前に横から懐に入り込んだソータが、男の顎にアッパーを繰り出していたのだ。

“拳術マスタリー発動――”


「ぐはぁっ!!」魔力を纏った瞬間、威力が跳ね上がる紅蓮の手甲。


 クレリアは男のHP数値を見ながらレイピアを構えて駆け出す!


 HP:373/485――


「ソータ! アンタ攻撃一発で100以上のダメージ与えられてるわ! その攻撃方法で続けて!」


「了解! ……立てるか、エルディア」一撃離脱をしたソータがエルディアの前で男に顔を向けたまま聞く。

「問題ない……!」


 ソータは、ふらついている男の視界に入らないよう素早く彼の後ろに回り込む。

 立ち上がったエルディアはそれを見て、前に立ちはだかり囮となる為、剣を再び構え直す!

 フレイムソードによる斬撃をどんどん繰り出して命中させていく! だが流石にやられっぱなしではない。


「ちょっと手を抜いていたら調子に乗りやがってクソガキが……!!」そういうと、思い切りエルディアの腹に蹴りを入れ、とてつもない衝撃で、ふっ飛びそうになるエルディアの胸ぐらを掴んで、裏拳をかます!


 裏拳と同時に胸ぐらを掴んでいた手は離された為、今度はふっ飛ばされ、近くの木箱に激突するエルディア。


「でやぁっ!!」背中に鈍い打撃の音が聞こえる……。ソータによる魔力を纏わせた篭手の攻撃だ!

“拳術マスタリー発動――”


「ぐっ……!」後ろの対処をしようと振り返ろうとする男の脇腹をレイピアで突き刺すクレリア!

「えぇいっ!!」

“刀剣術マスタリー発動――”


「ぐはぁっ!?」その場で膝から崩れる男。


 クレリアのゴッデススキルによって見えていた男のHPは、127/485 と書かれていた。

 ソータの最初のアッパーによるクリーンヒット、その後のエルディアによる連撃、そしてソータの紅蓮の手甲による打撃とクレリアの刺突攻撃。これらの蓄積が男を追い詰めていた!


「ば、化物共が……!!」と言って男が立ち上がった瞬間、後ろから声がした!


「お前たち! 何をしているッ!!」執事のような格好をした男性が走ってやってきた。

 詳しい状況を確認するために辺りを見回す男性。

「え、エルディア様!? お怪我を……!!」


「下がっていろジイ! 無礼を働いた悪漢をこの場で斬る!」エルディアはそう言ってゆっくりと立ち上がると、フレイムソードを向ける。


「そうは参りません! お父上がお呼びでございます!」ジイと呼ばれた執事のような男がエルディアを抑えた。


「父上が!?」


「エルディア……アンタってもしかして凄い偉いやつ……?」クレリアが聞いてみる。


「一緒に錬成学院に合格したじゃないか。ソータ・マキシとクレリア・ラピス……だったかな? 俺の名前はエルディア・トトラーシュだ」


「なッ……!?」驚いていたのはクレリアではない。戦っていた敵の男の方だった。

 とんでもない人間に手を出してしまっていたのだ。目の前にいたのは、エルドラド王国軍第一大隊長の息子だった。


「そこの男よ! エルディア様を痛めつけたのは貴方ですか?」先程戦っていた男に対して言う執事。


「あぁ……」


「エルディア様、この男の処遇をどうしますか?」


「……殺すだけだ!」

 そう言ったエルディアに「待て!」と声を掛けるソータ。


「なんだよ……?」そう言うエルディアに「何も殺すことはないだろ!」と言うソータ。

「そ、ソータ……? 何言ってるの……?」有り得ない発言をしたように呆気に取られるクレリア。

 しかし、エルディアと執事……そして悪漢までもが同じ表情をして驚いていた。


 すぐに平静を取り戻すとエルディアは「……お前は一体何を考えているんだ!」と怒り出す。


「私もエルディア様に同意見でございますが……」と困った様子を見せる執事。


「甘い考えだというのは分かっています。ただ、彼は一度間違いを犯した……。反省の色が見られなければ次は無い……という対処にしていただけないでしょうか?」

 そう言って頭を下げるソータ。


 そう言うソータに近付く執事。

「貴方のお名前は?」


「ソータ・マキシと申します」頭を下げたまま答えるソータ。


「そうですか……。貴方があのゾルダー・マキシ様の……」そう呟いた執事。

 そして悪漢の方へ向くと続けた。 

「お前は、本来なら処刑されているところだ。だが、ソータ殿の慈悲により処刑は免れた! 感謝するんだな!」


「クソッ……!!」


「……ヒール!」執事がそう唱えると、エルディアの傷は一瞬にして癒えた。ソータにも同じくヒールを掛ける。


「あ、ありがとうございます……」ソータは執事にお礼を言うと、エルディアは「この野郎! ゴミクズをみすみす逃がすつもりか……!」とソータに掴み掛かろうとするが執事はそれを抑えた。

「エルディア様。ここは抑えましょう! ……罪人の為に頭まで下げる……そのような考えをお持ちの人間は初めて見ました……。その考えがどのような結果を生むのか見てみようではありませんか」

 執事はそう言って、ソータに一瞬の微笑みを見せるとエルディアを連れて帰って行った。






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