第99話◆策略
「な……んだ……コレは……!!」ソータはそう言うと物凄い勢いで黒い球の中に吸い込まれていった。
「「!!?」」アイリ以外のその場にいた全員が驚愕すると、アウグスト法皇は声を荒らげる。
「……アイリ!! ソータをどこに消したッ!!」
「だから言ったじゃない、ガルガシア。私がこの世界の危機を伝えた時に、貴方がソータを手紙で呼び出したのよ? まだ早いって言ったのに」
「それは、お主がソータ・マキシを強くする為に呼び寄せる必要があると申したからだ!! こんな小さな球に封印するとは聞いていない!!」
ちゃんと話し合っていたはずの二人が言い合いをして、一番被害の大きいサモンシールダーは放ったらかしの状態であった……。
「……ソータは無事なんですよね? どうやってこの封印を解けば良いんですか?」クレリアは真剣な顔で静かにそう言うと、アイリは答える。
「問題ないわ。この球の中には、私の友人たちがいる……。一時的に亜神の世界に行ける道具よ。そこで彼を徹底的に鍛え上げる……」
「アイリ殿……ソータ殿は既に世界最強クラスの力を持っているはずですが……徹底的に鍛え上げるとは……?」と言ったムチ。空気を読まないガチとヴィオラは何故かはしゃぎだした。
「なるほど! 徹底的に筋肉を鍛え上げるというわけか! HAHAHAHA!!」「よりかっこよくなって帰って来るのか!! くぅ~! 結婚が待ち遠しい!!」
「黙りなさい!!」そんな二人にクレリアは今まで見たことも無いほどの真剣な顔でピシャリと言い放った。
その瞬間、ガチとヴィオラが黙った。
「二人は心配じゃないの? アタシたちのリーダーであり、エレニアンネの貴族様が何の説明もなく突然“封印”されたのよ?」今までの元気なクレリアとは違い、静かに怒りながら続ける。
「アイリ様。アタシが助けに行きます! アタシもその世界へ連れて行ってください!」
「強くなる気概があるのならそうしてあげたいけど……それは出来ない。自らの意志ではなく、この球に引き寄せられなければ入る事は叶わない代物よ」
まさにさっきのソータがそうだ。彼の反応を見る限りでは、入ろうとする意志など無視して吸い込まれていったように見える……。
「では、どうすれば……!」そう言うクレリアに「この球は貴方が持っていなさい。ソータ・マキシが力を身に付ければ、自力で出てくるでしょう」
そう言ってクレリアに黒い球を渡すアイリ。
「わ、分かりました……」
――それと同じ頃――ヴェシアナ領。
うるさい車輪と蹄鉄の音を鳴らして、西から馬車を引かせる行商人の男が現れる。
「どうも、こんにちは!」と言って、ヴェシアナの町に現れた行商人。
「行商人の方ですか? いらっしゃいませ」とローナが応対する。
「こちらのお手紙をソータ殿に渡しに参りました」と言って男は手紙を渡してくる。
それを見ると、ディアイス拳国の拳王からの呼び出しのようだ。一体、ソータに何の用だろうか……?
「承知致しました」と言ったところで、領民で大工のアルグスが近くに居たので声を掛ける。
「アルグスさん、こちらソータさん宛の手紙です。ソータさんのお部屋のテーブルに置いておいてください」と言って、アルグスに渡す。
「承知しました、ローナ様」と言ってそれを受け取りそそくさと古城へ入って行く。
その後、行商人はローナにしばらく町の案内をしてもらい、いくつかの品々を購入した。中でも、黒胡椒の芳醇な味わいはかなり感動してもらい、一樽購入していった。
行商人は案内してもらいながら領内を見ていると、ローナ以外のサモンシールダーのメンバーがいないことに気付く……。
「では、そろそろ私は次の町へ行こうと思いますが……すみません、ローナ様。大変恐縮ですが荷物の積み込みを手伝っていただいてもよろしいでしょうか?」と言われたので「分かりました」と返して協力することにした。
積み込むものは、衣類などの布製品が中心だったので、ローナの力でも問題なく持ち上げることが出来た。
坦々と運んで行き、最後の荷物を置くために、馬車の荷台に上ったローナを突然閉じ込める御者。それと同時に荷台の隅に隠れていたレイザックが突然姿を現し、ローナの口元を布で覆う。
「キャッ!?」突然のことに驚きつつも、布に付けた薬品で眠らされる……。
「御者、急いで出発しろ。アイラ、この娘にスキルを!」レイザックはそう指示し、アイラは「分かってるわ」と言ってゴッデススキルを駆使してローナのスキルを封印した。
馬車が走り去ってからしばらくすると、ローナがいないことに気付く領民たち……。
「ローナ様ー!!」「ローナ様どこですかー!!」
「見つからない……もしかしたら森で魔物に襲われているのかもしれない!」「いや、でもローナ様は強いぞ!?」
と皆が口々に言うが、一人がポツリと「もしかして、さっきの行商人に連れ去られたんじゃ……」と言った。
その瞬間、ヴェシアナ領は大騒ぎになった。
だが、ソータが長い事主導してきた彼らのチームワークは凄まじく、ハンターを中心に念の為ローナの捜索と領内のパトロールを開始しつつ、他の農民は今までの仕事は必ず行った。
――アウグスト法国。
「では、私たちは戻ります……」そう言ったクレリアに「私も行こう」と言って付いて行こうとするアイリ。
「アイリ様もいらっしゃるんですか?」と驚くクレリアに「まだ襲ってくることは無いとは思うが……ソロモン72柱のうち一柱でも、ヴェシアナ領にソータがいないと気付くと大変なことになる……そのための保険だと思えばいい」
「うむ……それならアイリよ。くれぐれも無理をするでないぞ」とアウグスト法皇は送り出してくれた。
今回はそれほど急いでいる旅ではなかったので、ヴェシアナへの帰り道も急ぐ必要はなかった。
だが、ソータがいなければ、一気に不安が押し寄せる……。それに状況説明が出来るアイリがいるとはいえ領民は怒るだろうな……。という考えが離れないクレリア。
「どうかしたのか?」とヴィオラに声を掛けられる。
「ソータがいないとさ……ちょっと不安なんだよね……」そう言うクレリアにアイリは「貴方はサモンシールダーの副リーダーみたいな立場?」と聞いて来たので、頷く。
「それなら重荷に感じるのは無理もないけど、どちらにせよ彼には強くなってもらわなければならないから」
「そうですね……」
少々重い空気になってしまったが、仕方のない事だ。
相変わらずの高速スピナーとミスリル蹄鉄でかなり素早いが、国境を跨ぐほどの距離なので、どうしても時間は掛かる。
ソータの件をアリス陛下や、サタナイシャ伯爵に伝えるべきかと思っていたが、アイリに「それは手紙で伝えなければ、説明で長居する羽目になって領地をローナ嬢に任せっぱなしになってしまうぞ」と言われたので、一先ずは帰ることにした。
そういう事情があって、少し急ぎ目に進み、数日経つ頃にはヴェシアナ領に到着した。
――ヴェシアナ領。
クレリア達が馬車を降りると、多くの領民が駆け寄って来た。
「おかえりなさいませ! 大変です!! ローナ様が……!!」「ローナ様が大変なんです!!」など口々に言う。
サモンシールダーの全員とアイリが降りると、クレリアが皆に聞く。
「一旦落ち着いて! ローナちゃんがどうしたの!?」
「連れ去られたんです!!」という領民に「えっ!!?」「何だと!」と反応するクレリアやムチたち以外にも、鋭い目になるアイリ。「……誰にだ?」
アイリを見て少し気になっていたようだが「恐らくは行商人かと……」と言っていた。
そこで急いで街道の方へ行って確認するが、領の近くを通る街道はヴェシアナに滞在せず通過する馬車もあるし、ヴェシアナの前を普通に冒険者チームが通って行ったりすることもある。
それが理由で、車輪の跡が消えてる可能性は高いし、消えてなくてもどれがローナを連れ去った者が乗った車輪かは分からない……。
「……一体どこへ行ったんだ……」という領民たち……。
そこへ「見つけた!!」と後ろから声掛けてくる人が現れた。タイミング的にローナを見つけた! ということかと思って急いで振り向くと、一人の女性が駆け寄ってきていた。
赤髪の女性で、黒い動きやすそうな服装をしている女性だ。
「貴方は……?」領民にそう声掛けられた彼女だが、クレリアは見覚えがある。
「あれ……? 確かソータのお姉さんですよね?」と声を掛けると「えぇ、久しぶりね。クレリアちゃん」と言って挨拶してくれた。
彼女はソエラ・マキシ。ソータの姉だ。
「実はソータに伝えないといけないことがあって……ソータはどこ?」
領民たちも先ほどからソータの姿が見えないことが気になっていたらしく、黒い球の説明をする。
みんなかなりのショックを受けていたが、ソエラの話を聞くことになった。
「ソータがいないのはもうこの際仕方ないか。……私の部下が潜入して裏取りしてくれたんだけど、エルドラド国王がローナちゃんの誘拐を命じたの! それを伝えようとしてたら……もう連れ去られたのよね?」
「そうなんです……」と言うクレリアに「あ、そう言えば……!」と大工のアルグスが「実はソータ様宛に手紙が来ていたんです!」と言って、持ってきてくれた。
「……本来ソータ宛だけど、便宜上サモンシールダーの副リーダーである私が開けるわね?」と領民たちに声を飛ばすと皆が頷く。
「ってこれ……ディアイス拳王様からの手紙……?」
“拝啓、ソータ・マキシ殿。ディアイス拳国、拳王ゲオルグ・ディアイスだ”という書き出しで、ディアイス拳国の古都に来てほしいという文言だった。
「あ、それ!」ソエラがいきなり大きな声をあげた。
「その手紙、偽物よ!」
詳しく聞くと、ソータたちに、ディアイス領に強いモンスターが現れたということにして、サモンシールダーの派遣を要請する手紙だそうだ。
そして、オーディン様を召喚出来る彼女を危険に晒す可能性があるので連れて来ないように……という文言を入れておけば、ローナだけを残してくれるはず。
その隙にローナを連れ去り、ディアイスとエルドラドの国境には、サモンシールダーを迎え撃つ軍勢を用意しておこうとしていたらしい。
「私たち、ソエラ盗賊団に掛かればエルドラドの策略なんて筒抜けよ!」と言って親指を立てていた。
「さすがは領主様の姉上様だ!」だとか「さすがはマキシ様のお姉さまだ!!」と領民たちがいうので、ソエラが固まる。
「……りょ、領主……?」目が点になっている。
「はい! 我々ヴェシアナの民を治める領主様、ソータ・マキシ・フォン・ヴェシアナ子爵様です!」とテリーが言うと、ソエラはヴェシアナ領内中に響き渡るほどの大声を出して驚く。
「えええぇぇぇぇぇぇーーーッッ!!??」
ローナが連れ去られた事よりも、激しい衝撃と驚きがあったのだった。
「ソータが……子爵……」と魂が抜けたようになっているソエラを尻目に、アイリは話し出す。
「ヴェシアナの民たちよ。ソータ・マキシ殿と一番話していた……もしくは仲良くしていた領民は誰だ?」と言うと、みんながテリーを見る。
「えっ……! いや、俺はたまたまマキシ様に声を掛けていただいただけで……」彼はそう言っていたが「今は謙遜している暇はない。悪いがここは仕切らせてもらう」
そう言ってアイリが決めたことは、ヴェシアナの領主代理はテリー。領における全ての指示をテリーに任せる。
そして、自分で判断できないことは、近隣の領に相談すること。また、ソータが封印されたことやローナが連れ去られたことは手紙で、近隣各国に早馬で送るようにと徹底的な根回しを指示した。
「皆さんはどうするんですか?」というテリーの問いにクレリアが答えた「決まってるでしょ? ローナちゃんを助けに行く!」
こうして、クレリア、ガチ、ムチ、ヴィオラ、アイリ、ソエラがローナ奪還メンバーということになった。
「出発は今から六時間後! みんな、急いで準備して!!」クレリアは、そう指示を飛ばし、準備を急がせた。
――エルドラド王宮――地下牢。
地下牢に閉じ込められているのは、ローナだ。昔、アリス女王が捕まっていた牢と同じ場所に閉じ込められているが、今回は鍵は四重にもかけられている。
「貴様は四日後、城下町の演舞台の上で処刑される。悪魔を召喚したければやってみるがいい。……出来るものならな……!」そう吐き捨てるように言って去って行く魔法師団長のアイラ・パーレイス。
「……本当に召喚ができない……」ローナがそう言ったが、それどころか片目の赤く燃えるような光も消えている。
ローナはステータスを確認してみる……。
名前:ローナ・マクスウェル 年齢:16
職業:ハンター
Lv:44 HP:1040/1040 MP:16483/16483 SP:982/982
攻撃力:284 防御力:540
魔攻力:4784 魔防力:5530
敏捷力:663 精神力:139
ゴッデススキル(封印中):エインヘリヤル
通常スキル(封印中):【鎚術マスタリー:Lv2】【高位魔法:Lv3】【炎属性魔法:Lv7】【氷属性魔法:Lv6】【風属性魔法:Lv6】【土属性魔法:Lv6】【雷属性魔法:Lv7】【光属性魔法:Lv7】【闇属性魔法:Lv3】【回復魔法Lv:5】【防御魔法:Lv6】【魔力操作:Lv7】【同時召喚:Lv3】【支配:Lv6】【輪廻の女神の加護:Lv-】【不死鳥の加護:Lv-】
スキルリストの所に“封印中”と表示されていた……。明らかに魔法か何かの類だ……。
「だが……まさか貴様が生きてるとは思わなかったぞ……モルグルで確実に心臓を貫いたはずだが……」
向かいの誰も入っていない牢屋にもたれて、話し始めるレイザック。
「ソータさんたちが助けてくれました……! 皆さんは、私の神々の力を頼りにしてくれているんです!」
いつもと変わらぬ気弱そうに見えながらも、強い意志のある眼でレイザックを見上げた。その眼に見覚えのあるレイザックは怒りに震えながら答えた。
「悪魔召喚の間違いだ!! ……まぁいい。おい、魔女。冥土の土産に教えてやる。……お前が召喚を使えないのは、さっきの女……魔法師団長のアイラ・パーレイスのゴッデススキルによるものだ」
「ゴッデススキルの……?」
「彼女のゴッデススキルは“封印”……対象のスキルを文字通り封印して使えなくすることが出来る。自由に封印と解除の切り替えが出来る上に、術者が死ぬまで効果は続く……」
笑みを浮かべながら話すレイザック。
「そんな……!」
「そう悲観するな、魔女よ。すぐにソータ・マキシもお前の元へ送ってやる。地獄で幸せに暮らすんだな! ハーッハッハッハ!!」
そう言ってレイザックは去って行く……。
「ソータさん……助けて……」
冷たい静寂に包まれて、申し訳程度に詰まれた枯れ草に身を包み、彼女は涙を流した。
――エルドラド城――玉座。
「素晴らしい……素晴らしいぞ! レイザック、そしてアイラよ!! 二人には戦争の責任を帳消しにし、どんな褒美でも取らせよう!!」エルドラド国王は嬉しそうに両手を広げて言った。
「「はっ!! 有難き幸せにございます!!」」二人は頭を下げながら言ったが、そのまま黙ってしまう。
「……どうした? 何でも言ってみるがいい。まずはアイラ、言ってみろ」
「では恐れながら……悪魔召喚の魔女を殺した後、私めに奴の死体を譲っては頂けませんか? 奴の目から現れる特殊な光……あれを詳しく調べたいのです。事が済めばさっさと焼却して適当に埋めてしまいましょう」
アイラはそう言って、エルドラド国王へ言うと、国王は笑顔のまま答えた。
「おお、良いぞ! しっかりと死亡を確認した上でなら、どのように使っても構わん! 奴は奴隷以下の存在だからな!! では、レイザックよ、お前の願いは何だ?」
「恐れながら……魔女さえ殺せば王国の脅威は大罪人のソータ・マキシとアウグスト法国のみになります……我が息子、エルディア・トトラーシュの第一大隊復帰をお願い申し上げます……!」
その言葉を聞いて、国王の笑顔は無くなった。
「ほう……? 奴は裏切ったと聞いているが……?」
この真顔だ。この真顔が本当に恐ろしいのだ……。全ての真理を見通すかのような眼……。
あの魔女と同じ眼だ……崇高なる国王陛下なら良いが、同じ眼をあんな小娘が……!!
「はっ……私は今後老いてゆくのみ……再び裏切るようなことさえしなければ、我が息子、エルディア・トトラーシュに絶対的強者を授けたいのです……!」
「何故あの出来損ないの裏切り者にするのだ? 優秀な者がいるではないか。例えば……ほれ、そこの……」エルドラド国王が視線を向けた先には黒い甲冑を着た兵士たちが列になり、微動だにせず立っている……。その中で一人がこちらを向くと、前に出た。
「はっ! エルドラド近衛兵、アリシエラ・トトラーシュにございます!」アリシエラは敬礼をする。彼女をしばらく見つめたレイザックだったが、再び口を開く。
「いえ……陛下。エルディアは本当に強くなりました……見違えるほどに。……そして、元々ステータスが優れていれば手放すつもりもありませんでした。彼は……私や他の兄弟たちが長年修行を積んでも習得できなかったトトラーシュ家の奥義、撃滅凋落刃を錬成学院時代にアッサリと習得しました……」
レイザックは悔しそうにしながらも、強く拳を握りエルディアを想った……。
ハンターになってからしばらくすると、第一大隊兵の中でもトップクラスの実力を身に付け、一部分だとしても自分を超える奥義を習得した未来ある天才の芽だ。
代々続くトトラーシュ家最弱の出来損ないであったエルディア……彼の芽が蕾になり、花咲いたその瞬間……誰にも負けない最強の戦士になる……。そうに違いなかった。
それ故に、自分の後継者はエルディアだけだ……そう考えていたのだった。
「……よかろう。レイザックよ、どうやらお前の眼は本気だ……当然、約束を違えることはしない。再入隊の準備をさせよう。……だが、奴が再び裏切らない保証は無い。場合によっては、隷属の契約をさせる可能性もあることを覚えておけ」
「……はっ! 感謝申し上げます!!」
隷属の契約というのは読んで字の如く、奴隷契約のことだ。だが、たった一度だろうと裏切りはとてつもない大罪……本来であれば死罪であるにも関わらず、どんな褒美でも取らせるという陛下の計らいに感謝をするレイザック。
ちなみにこの再入隊だが、レイザックや他の大隊長たちは、隊員を解任することは出来ても入隊させる権限は無いのだ。
それらは、全て国王と近衛兵団の幹部、そして全大隊長と魔法師団長が話し合って、最終的にそれぞれ所属予定の大隊長との面談の後に入隊が決まるのだ。それが理由で、レイザックの一存で解任は出来ても入隊させることは出来ない。
国王を中心に幹部たちで話し合う理由は、入隊予定の新人たちが国益になるかどうかを判断するためだ。
それと同時に必須となっている強さも見るのだが、たまに現在の第二大隊長の男のようなグラディエーターですらないのに天才も現れる……。
彼は第二大隊入隊時に、エルディア以外のトトラーシュ家の人間たちが新人の時よりも遥かに強かった。さらに、その上で伸び代まで感じさせられたのだ。
――ヴェシアナ領。
「どうか、ご無事で!」とテリーに言われたクレリアは「うん!」と答えると、馬車の中にいる仲間に声を掛ける。
「みんな! 準備はいい?」クレリアが言うと「あぁ」「大丈夫だ!」「いつでも大丈夫よ」とムチ、ヴィオラ、アイリが答えてくれたので、御者席にいるガチに伝える。
「ガチ、出発して!」「承知した! 筋肉号、出発!! HA~HAHAHAHAHA!!」と高笑いしながら、エルドラド王国を目指すのだった。




