あまりにも気位が高い
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
こんな人には絶対なれないなぁと思いながら、後輩ちゃんと共に縮こまります。
私の先輩にしこたま仕事が出来る人がいる。ふんわりおっとりしていて、柔らかい雰囲気の人だった。男性の多い中の紅一点。苦労もそれなりに多い筈なのに、何時も優しい。素敵な人。
ある時トイレに入っていると、こんな噂が聞こえてきた。
「あの中に入るなんて、○○、男に媚び売ってるんじゃないの?」
「仕事出来ない方がウケいいもんね」
キャラキャラと笑う、姦しい耳障りな声。誰を指しているかは明白で、だからこそ血の気が引く。私はこの場を出る事が出来ず、その場で縮こまっていた。その時。
「あら、出世も出来ない貴方達がなにを仰ってるの?
それとも、私の上に立つ方々を、男性方を『隙だらけで、マウント取りやすい女性を選りすぐる』と、そう形容なさいたいの? それは私達に対する侮辱と受け取りますわ」
先輩の甘く、優しい、先輩の声だ。声色はいつも通り変わらないけれど、凄みがある。ドアを挟んだ先から冷たい空気が流れ出す。重たい沈黙が流れ出す。先に折れたのは、相手の方だった。
「行こ……」
足音が遠くに行くのを感じながら、そろっと扉を開けると先輩と目があった。私か居るとは思ってはいなかったらしく、目を丸くする。
「あら、ごめんなさいね。そんな青い顔なさらないで。怖い事は何も起こさせないから、安心なさって」
先輩の声音は全く変わらない。にこにこと微笑んで、私を気遣う様に顔を覗き込む。
「こういうの、良くあるんですか?」
「まぁね。貴方も気を付けて、あしらい方を覚えないと。どうしようもなくなったら、相談は何時も受け取るから」
それから一緒にデスクに戻った。先輩は今あった事を決して上司に報告しなかった。ただ何時もの様に人の二倍仕事をして、時折雑談に乗って、去っていった。
俺の先輩にしこたま仕事が出来る人がいる。普段はおっとりしているが、目の光は常に鋭く、常に隙がない様な人だった。嘗めた真似したらきっと殺される。そんな気配がやはりある。
この前別の課の上長が、彼女をからかった事がある。
「女の子は仕事出来ない方が可愛げあるのに」
「あら、それでは社会は回りませんわ。それとも……自尊心を守る為に、目下の女性を侍らせたいのですか?」
口調は甘く、言葉にはキレがある。からかった方の上長は冷や汗を掻きながら『冗談だよ……』と言って去っていった。
気位が高い人だ。自分を嘗める輩を総じて自分の力で排する程。それはされた事を俺達の上司に話さない事からも分かった。
とある曲を聞いて連想したキャラ。
ふんわり、おっとりしているけど、『嘗めたら潰す』、『誰も見下す事を許さない』そんな子です。
敵も多いけど、味方も多い。
『多少馬鹿な方がウケが良いのに』に対して、
『そうやって下見ないと自分の精神保てないの? アンタ随分と可哀想だね』
という特大級の煽りを丁寧な口調で返してます。
何でも出来る優秀な人にそういうのは、やっぱり凄く失礼ですよね。
ちなみにこんな性格になったのは、指導者が理由。
『問題見つけたら自分で何とかしろ』
『性別に甘えんな』
『新しい課題を持ってきた。諦めるなよ』
こんな事を言う上だったし、何とかしてきたので、そりゃもう気位も高いし、強かだなと。
降りかかる火の粉は全て自分で払う。鎮火する。
多分、綺麗な脳筋。