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鏡の向こうの運命のヒーロー  作者: 武田カヌイ
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運命の鏡に映し出される未来

「運命の鏡に映し出される未来」は、人生に絶望し、どんな努力も報われなかった若者を描いた物語です。しかし、ある日彼が偶然出会った不思議な鏡によって、彼の運命は一変します。

特殊な警察機関「特運課」の存在を知り、主人公は運の力を持つ人々に巻き込まれていきます。この物語では、主人公と鏡、そして特運課と運の力という要素が絡み合い、主人公自身ですら理解できない展開が始まります。

物語は特運課のメンバーたちが犯罪と戦いながら、主人公が出会った不思議な鏡によって人生が変わった経緯が明かされていきます。彼らは様々な謎を解き明かし、新たな運命の扉を開いていくでしょう。

 運のない男、西村俊介(にしむらしゅんすけ)は幼い頃からその呪われた運命に苦しんでいた。どんなに努力しても上手くいかず、23歳にして彼は孤独な一人暮らしをしていた。生計を立てるために動画配信業とアルバイトに勤しんでいたが、それでも彼の苦労は絶えることがなかった。

 ある日の午後、西村はぼんやりと横になり、アパートの天井の木目を凝視していた。その静寂な空間に、なんとなく胸騒ぎが襲ってきた。彼は深いため息をつきながら、自分自身に向かってつぶやいた。「もしも、運が向いたら、今までの努力が報われるかもしれないな…」

 しかしその時、彼はまったく予感することができなかった。運命の皮肉とも言える出来事が、彼の願いが叶うことによって起こるとは、彼の最悪の結末であることを夢にも思っていなかった。

 アパートを出た西村は、手に持つスマートフォンで街並みを撮りながら、のんびりと歩いていた。穏やかな風が彼の頬を撫で、気持ちを落ち着かせてくれる。

 そんな平穏な瞬間に、彼は突然の出来事に直面することとなった。近くのコンビニのガラス窓越しに、ナイフを手にした強盗犯の姿が映し出された。彼の目に飛び込んできた光景に、彼の心臓は一瞬で凍りついた。

 強盗犯は西村の存在に気づくと、容赦なく彼を追いかけ始めた。西村は驚きと恐怖に打ちのめされながらも、全力で逃げることしかできなかった。背後から迫る足音が次第に大きくなり、緊張が彼の身体を支配した。

 絶望が忍び寄る中、西村は近くの公園のトイレに逃げ込んだ。しかし、追いつかれる寸前で、背中に激しい痛みが走った。声を上げながら洗面台に手をかけ、必死に支えた。息が詰まり、視界がぼやけていく中、彼は手探りで手洗い場の鏡を見上げた。

 鏡は謎めいた白い光に包まれ、西村の視界も一瞬にしてぼやけた。痛みが徐々に薄れ、彼は「結局、僕はここで運のなさのせいで命を落とすのか…」と絶望に駆られた。しかし、彼が不思議そうに背中を触ると、血に染まった手はなく、痛みも消え去っていることに気づいた。

 驚きと戸惑いが交錯する中、西村は鏡の中の映像に目を奪われた。そこには、彼が刺されて倒れこんでいる姿が映し出されていた。

「どうなっているんだ?本当に死んでしまったのか?」心の中で疑問が渦巡る。しかし、鏡に触れても何をしても映像は変わらない。彼は自らが死んだと信じ込み、囚われた。しかし、実際にはまだ彼は生きていたのだ。

 トイレを出た西村は、周囲を不安げに見回したが、特別な変化は見受けられなかった。しかし、何となく違和感が漂っているように感じられた。彼の直感が彼を導き、自宅に戻ることを決めた。

 道を歩いている最中、再び強盗犯と遭遇してしまった。

「お前は確かにトイレで刺されたはずだ。どうしてここにいる?」驚愕の表情を浮かべながら、強盗犯が再び西村に襲いかかってきた。足はすくみ、身を守るために西村は防御姿勢をとった。しかし、足がもつれて彼はつまずき、偶然にも肘が強盗犯の喉元にぶつかった。「ぐぁ」という悲鳴が漏れ、強盗犯はのけぞり、勢いよく倒れた。頭を打ったのか、気を失ったようだった。

 近くの人々が騒ぎを聞きつけ、迅速に警察に通報したため、現場には警察官が駆けつけた。彼らが強盗犯を逮捕し、現場を封鎖する中、西村は同行し、警察署で事情聴取を受けた。疲れと緊張で心身ともに疲れ果てていた彼は、やっと自宅のアパートに戻ることができた。

 頭はまだぼうっとしており、昨夜の出来事が現実なのかどうか疑問を感じていた。しかし、翌朝、目が覚めると、手に持ったスマートフォンに映像が表示されているのを発見した。息を飲むと同時に、自分が強盗犯に襲われる一部始終が録画されていたことに気づいた。

 驚きのあまり、何度も再生ボタンを押して自分がどんな状況にあったのかを確認し続けた。その時、友人からSNSで連絡が届いた。「お前の動画サイト、すごいことになっているぞ」とのメッセージに、西村は困惑した。

 友人の指示に従って、自身が運営する動画サイトを開いてみると、そこには自分が強盗犯に立ち向かい勝利した瞬間の映像が投稿されていた。多くの人々から称賛され、話題を呼んでいた。リスナーたちからは「何か偶然なのか?」「運がすごくないか?」という反響が相次いでいた。

 深呼吸をしながら、西村は昨日の出来事を思い出そうと試みた。しかし、「自分であの映像を投稿したのか?」という疑問が頭に浮かび、後の記憶が曖昧なままだった。思い出せないことに気づき、そういえば昨晩の晩飯を食べていなかったことを思い出し、とりあえずコンビニへ向かうことにした。

 コンビニに到着した西村は、突然凍りついてしまった。コンビニの窓ガラスに自分の姿が映し出されていないことに気づいたのだ。驚きと戸惑いが心を襲い、昨日の一件を思い出し、公園のトイレへと駆け出した。

 公園のトイレに到着した西村は、深呼吸しながら鏡を覗き込んだ。しかし、刺されて倒れていた自分の姿はそこにはなく、さらに驚くべきことに、自分自身も映し出されていなかった。鏡に映るはずの姿が何もない。この奇妙な現象に、彼の心は戸惑いと不安で満たされた。

「一体、どうして…?」西村は自問自答しながら、理解しようと必死に考えた。しかし、その答えは見つからなかった。

 再びコンビニに戻った西村は、カップラーメンを手に取り、自宅に帰った。ラーメンの熱々のスープをすすりながら、何が起こっているのかを考えたが、混乱が頭を覆い、答えを見つけることができなかった。

 突然、鋭い「ピンポーン」というチャイムの音が響き渡り、西村は驚いた。深呼吸をしながら、彼は慎重に玄関へと向かった。そこには、昨日の強盗事件の調書を手にした警察官が立っていた。その後ろには、スーツ姿の30代ぐらいの男性と20代ぐらいの女性2人が姿を現した。西村は戸惑いながらも、彼らをリビングに案内した。

 男性が口を開いて言った。

「西村さんですね。私たちは、あなたの動画サイトに興味を持っています」と、男性が口火を切った。

 西村は困惑した表情を浮かべた。「えっ、動画サイト?」すると、女性が言葉を続けた。

「はい、あなたが昨日の事件で勇敢に立ち向かった様子が、多くの人々に感動を与えました。その映像が拡散されて話題になっているのはご存知でしょうか?」

 再び自分が投稿した動画を思い出した西村は、混乱の中で答えた。「ああ、あの映像ですか。でも、それはただの偶然で...」

 警察官が口を挟んだ。「それは確かに偶然かもしれませんが、あなたが勇敢に立ち向かったことは事実です。その映像が多くの人々に影響を与え、犯罪に対する意識を高めることにつながるかもしれません。」

 西村は少し驚きながらも、警察官の言葉に納得した。その時、スーツ姿の男性が再び口を開いた。

「それで西村さんにちょっと確認したいことがあります」と男性は名刺を差し出した。

 名前は蒼井健太郎(あおいけんたろう)。彼は国家公安委員会直属の特殊運命捜査部捜査一課の課長だった。

 そして、スーツ姿の女性も名刺を差し出し、自己紹介した。「私は小野寺彩香(おのでらあやか)と申します。」

 蒼井は「ここでは確認できないことがあるので、小野寺さんと一緒についてきてもらえませんか。私には用事がありますので」と言って、4人はアパートを出ることにした。途中で2人は別れることになった。

 西村は小野寺に向かって尋ねた。「どこへ行くのですか?」しかし、小野寺は振り向き笑みを浮かべ、何も言わずに先に進み始めた。

 二人はしばらく歩いて河川敷に到着した。そこには、同じくスーツ姿の20代ぐらいの男性が手を振っていた。近づくと、男性が握りしめていた石を西村に投げつけた。「痛っ!」と西村のひたいに当たり、彼は手でひたいを抑え、痛みを我慢しながら立ち尽くしていた。すると男性は頭を傾げながら苦笑いし、謝罪した。

 小野寺は「ごめんなさいね。確認とは、西村さんの運を確かめたかったのよ。神谷くん、もう一度やってみて。今度は私に石を投げてみて」と声をかけた。神谷は再び石を投げた。すると、突然、小野寺の前を鳥が横切り、石は鳥に当たって地面に落ちた。

「鳥さん、ごめんなさい」と小野寺は優しく撫でて、鳥を逃がしてあげた。

 彼女は続けた。「この特殊な現象が私たち特運課の能力なの。運力と能力の強さに基づいて、私たちは階級分けされているのです。最高位は一課であり、その下には二課、三課という構成があります。私たちは特運課の一員として活動しているわけですよ」と、彼女は自信に満ちた声で説明した。

 スーツ姿の20代の男性が名乗りました。「私は特運二課の神谷将太(かみやしょうた)です。蒼井さんからお願いされて、あなたの運を確かめるために来たのです。どうぞよろしくお願いします」と、男性は名刺を差し出し、丁寧に挨拶しました。

 小野寺は西村に話しかけた。「西村君は、う~ん…三課かなぁ~。じゃあ、来週の木曜日朝8時に三課の者が迎えに来るから、頑張ってね!」と言った。しかし、西村は大声で「俺はやるって答えてないんだけど!」と言った。しかし、二人は聞き入れずに手を振って去っていった。

 その後、西村は仕方なくアパートに帰っていった。彼は頭の中で考えを整理した。自分が鏡の中に映っていないこと、知らない間に動画が撮影されていたこと、最近は運が良くなっていること、でも「あれ?河川敷の時、石が当たっていたよな」とつぶやきながらも、あの特運課の方々なら答えを聞き出せるかもしれないと思った。

 夜になり、小野寺が助手席に座り、神谷が運転する車で移動していると、神谷が「おかしいなぁ」と話し始めた。小野寺は「どうしたの?」と尋ねた。神谷は続けた。「小野寺さんに投げた石は確かに鳥が当たるのを分かっていたので手加減して投げたのだが、あの彼(西村)には蒼井さんの頼みもあったし、思わず力が入って血が出てもおかしくない当たりだったのに…」と言った。小野寺は微笑みを浮かべながら言った。「それは楽しみよね、そのうちに彼も特運課に入るかもしれないわ」と話した。彼女は窓の外を眺めながら、未来の可能性に思いを馳せた。神谷も微笑んで、頷いた。彼らは、特運課の仲間となることの意義を理解していた。

 特運課の存在は、普通の人々には知られていない。しかし、運命に弄ばれる人々を救うため、特運課は常に活動している。その中に入ることは簡単ではないが、特運課の一員となることは、特別な力を持つことを意味している。西村も、そんな力を身につけることができるのかもしれない。彼は、未来への可能性に期待を抱きながら、寝静まる街を眺めた。


この物語を読んでくださり、ありがとうございます。『鏡の向こうの運命のヒーロー』は、人生に絶望していた主人公が不思議な鏡との出会いをきっかけに、運を武器に戦うことで自己を変え、特殊な警察機関「特運課」に入隊し、事件解決に奮闘する姿を描いた物語です。

この物語は、主人公を中心に特運課の仲間たち、そして主人公と鏡、運というキーワードが物語を繋いでいます。特運課の隊員たちは、個々の能力を駆使しながら犯罪と戦い、謎を解き明かしていく姿が描かれます。読者の皆さんには、パズルのような展開にワクワクしながらお楽しみいただければと思います。

この小説は、私にとって初めての挑戦ですが、小さい頃からの夢がついに実現しました。その喜びを胸に、物語を執筆しました。

最後に、この物語を読んでくださる皆さんに、夢と希望を感じていただけることを願っています。どうもありがとうございました。

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