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プレイした覚えもないゲーム的な世界に迷い込んだら  作者: なるのるな
side B 鷹尾芽郁

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50/124

3. 対決

:-:-:-:-:-:-:-:



 年度が替わって、所属未定の空白から一転、私とイノ君は『特殊実験室』の所属となった。


 学園側……波賀村理事や野里教官の思惑は色々とあるみたいだけど、それよりも、イノ君がダンジョンの外でマナを扱えるという事実の方にこそ驚いたし、興味を惹かれた。


 やはり彼には〝普通じゃない〟部分も多いみたい。


 だけど、そういうのを知っても、今は()()()()モヤモヤするだけで済んでいる。イノ君と共有できる〝普通〟があることをちゃんと理解したから。


 私とイノ君での、ダンジョンでの位置取りや連携についても少し慣れてきた。不思議なもので、目標を同じとする同志だと認識したら、彼の動きもよく見えるようになった。今までは、心の中のモヤモヤのせいで視界まで遮られていたみたい。


 ただ、それ以外のことで……少し面倒くさい。


「芽郁ッ! 一体どういうことなんだッ⁉」


 本当はイノ君の時みたいに、私が一歩を踏み出して歩み寄るべきなんだとは思うけど……今はまだ無理。ダンジョンのことやイノ君のこと、自分のことで手一杯。武のことまで手が回らない。まだ受け入れられない。


「……学園との約束で話せないことも多いから。ただ、私がB組を抜けたのは私の意志に間違いはない」


「そんなことを聞いてるんじゃないッ‼ どうして言わなかったんだ⁉ 俺はお前に勝つためにここまで来たんだぞッ⁉」


 話が通じない。普段のもどかしさとは、また別のもどかしさを感じてしまう。武が私を目標としていたのは知っているけど、あくまでそれは武の勝手だし、武の中で消化して欲しい。


「俺もその『特殊実験室』とやらに入れろッ‼ そこで直接お前と決着を付けてやるッ‼ 学園のどの理事が主導してるんだッ⁉」


 武の言い分もわからなくはない。これまでだって、獅子堂家の口利きによって無茶な願いを叶えられてきたんだから、今回だって……となるのは、彼からすれば当然のことなんだと思う。でも、今回については無理だよ。そもそも、武みたいに優秀な生徒は対象外なんだから。


「……武が『特殊実験室』に所属したいと願うのは勝手だけど、それを私に言っても無駄。それに、『特殊実験室』は武が思うようなものじゃない。失っても惜しくない人材をかき集めてるみたいだし……」


「うるさいッ‼ とにかく教えろッ‼」


「……」


 ふぅ。駄々っ子になった武に何を言っても無駄か。


「……『特殊実験室』を立ち上げたのは波賀村理事。どうしてもというなら、獅子堂家の力でごり押しすればいい。悪いけど、今の武とはこれ以上話をするつもりはないから」


「ま、待て芽郁‼ 話は終わってないぞ⁉」


 いきなり家にまで押しかけてきて、ワーワーと好き勝手に喚く武を無視して、私は門を閉める。流石の武も力尽くで……とまでは思わなかったみたいで、門を閉めたら諦めて立ち去った。というより、早速に実家の力で本当にごり押しをしようと急いだのかもしれない。


 でも無駄だよ、武。今回の件については、すでに学園側から獅子堂家にも話が通っていると聞いてたから。


 イノ君にも幼馴染みの襲来があったみたいで、そんな話になった際、念のために武が実家の権力を使う心配があることを市川先生に伝えたけど、やはり武は獅子堂家に窘められるだろうと言っていた。


 ただ、先生はあっさりと『彼にできるのは取り巻きを連れてダンジョンに現れるだけ』という余計な情報までくれた。……私としてそういうのが嫌なんだけど……何だか、学園側には、ダンジョンで武たちとひと悶着起こすのを望まれているような気さえする。


『特殊実験室』が正式に発足して、さっそくに私のクラスチェンジ。これまでの戦い方を継続できるだろう【武者】を選択した。そこまでは別に問題はなかった。問題は……習熟訓練のための初っ端。


 念のために一階層のゴブリンと相対したんだけれど……明らかに違った。ギャーギャー喚きながら、一目散に突撃してくるだけのゴブリンじゃない。じっと、私を見てる。その佇まいは戦う者のそれ。敵を倒すための技術を持つ者。


「ふん。運が良いのか悪いのか……まさか一階層で〝強化ゴブリン〟とはな。……おい、アレは六階層以降で出てくるゴブリンだ。偶にこうやって低階層にも紛れているイヤらしい奴だ。鷹尾なら一対一で負けるような相手じゃないが、見た目で油断するなよ」


 野里教官からそんな注意を受けた。でも、油断なんてするはずがない。まるで道場での模擬戦のような緊張感がある。相手は普通のゴブリンのはずもない。


 マナを練る。念のために全力で。クラスチェンジ後の習熟としては不安を覚える相手だけど……万が一にも負けるわけにはいかない。だって、これは実戦なんだから。


「ギ、ガンギャ」


 ゴブリンがジリジリとすり足で近付いてくる。間合いをはかりながら機を探ってる。


 抜刀。正眼で構え、こちらもすり足で間合いを潰す。


「…………」


「…………」


 抜刀しているとはいえ、ゴブリンは私の間合いを正確に把握していたみたい。ギリギリで足を止めた……かと思えば、一気に踏み込んでくる。


「ギガッ‼」


「しッ‼」


 決着は一瞬で付いた。袈裟斬り。


 ゴブリンは私の間合いを把握していたようだけど、斬撃の速度を見誤っていたみたい。でも……見事だった。


「コイツ、私の斬撃を見てから戦法を変えた。敵わないことを知り、死を覚悟の上で一矢報いた。敵ながら見事な奴」


 このゴブリンは、私の斬撃を見た瞬間に死を悟った。その上で、捨て身の突きを繰り出してきた。肩に掠った。今さらに少し痛みが出てくる。


 イノ君がそっと近付いてきて、系統外の《白魔法》で癒してくれた。また一つ、イノ君の中にある〝普通じゃない〟を目の当たりにして驚いたんだけど……それよりも、今回はこの強化ゴブリンの衝撃の方が大きかった。


 イノ君にも思うところがあったみたい。何やら吹っ切れたというか、スッキリしたらしい。


「……えぇ。スッキリしました。さっき話をしていた友人たち……そんなのに時間を取られたり悩んだりするのがバカバカしくなったんです」


 何となくイノ君の言いたいことは分かった。こういうところは同じ。共有できる感覚がある。


「……教官。もし教官が学園の中等部に戻れたら……どうしますか?」


「ふん。そんなのは決まっている。生温いお遊び訓練をしっている暇はない! ぬるま湯に浸かりながらのサル山の大将ゴッコも要らん! ただただ深層を目指すのみだ!」


 野里教官が吠える。美人が台なしなほどの獰猛な笑顔を張り付けて。うん。でも、今は教官の気持ちが少し分かる気もする。私も武なんかの相手をしている暇はないんだ。


「ダンジョンの先を目指す……メイ先輩はどう思います?」


 私の答えは決まっている。


「……当然のこと。同志イノ君が征く道は私の道でもある。どんぐりの背比べは終わり。ただ前と上を見るのみ」


 ん? ダンジョンはダイブするっていうし、最深部を目指す以上は下を見るってことになるかな?



:-:-:-:-:-:-:-:



 そんなこんなで、イノ君とは目標を共有しながらダイブを続けていたんだけど、さあ五階層のボスへ挑戦……というところで、急にもどかしい現実に直面する

ことになった。


「……イノ、本当にダイブしてるんだね」


「……ヨウちゃんにサワくんも……ホントに来たんだね」


 あの子がヨウちゃん。イノ君の幼馴染みで、B組の川神さんか。何だかよく分からないけれど、どことなく武に似ているような……?


「ふん。お前たち、ダンジョン内の不干渉はどうした? 姑息な妨害工作の授業でもあったのか?」


「教官! 何故イノ……井ノ崎が特殊実験室に選ばれたのか教えて下さい! 俺たちは納得できません!」


 たぶん、あの子がサワ君。同じくイノ君の幼馴染み。……どうしてか分からないけど……彼にはイノ君と同じようなモヤモヤを感じる……? 気のせい?


「はぁ? 何故お前たちに納得してもらわないとダメなんだ? コイツ等は今から訓練なんだ。お前たちも自分たちの訓練に移れ。確か三階層までの申請だっただろ? お前らがこの五階層にいるのは規則違反だ。サッサと行け」


 あ、野里教官はこの一件を見なかったことにするつもりみたい。


「……教官、行きましょう」


 このまま立ち去れるならそれに越したことはないから、私も教官に乗り掛かる。


「まあそう言うことだから、サワくんたちも頑張ってね」


 イノ君も合わせた。……でも、彼の言い方とか態度は、割と軽妙だから、むしろ煽っているようにしか見えないんだけど……。少し気にはなるけど、私も野里教官を習ってて見なかったことにしておく。


「……待てッ! 芽郁! ここでお前との決着をつけてやるッ!」


「…………」


 歩みを止めない。振り返らない。知らない。聞こえないふり、聞こえないふり。


「……チッ! アイツを止めろ!」


「「はいッ‼」」


 武はとうとうやってしまった。私は飛来する矢を振り向きざまに掴む。明らかに意思を持って攻撃を仕掛けてきた。


「……ここまで阿呆揃いとは……」


「……教官、帰還石を使いますか?」


 時間差で飛来した《ファイアーボール》を避けながら、私は教官に意見する。


 もし、ここを立ち去るだけで問題が解決できるなら、それでもいいと思ったから。


 武がここに来てるということは、獅子堂家の根回しとかではどうにもならなかった証拠。もう一度、獅子堂家に話を付ければ武をおとなしくさせられるかも……という淡い期待もあった。


「獅子堂。お前、本気なのか? いまの行動がどういう意味か分かっているのか?」


 だけど、教官は武たちを学園の処罰だけ許す気はないみたい。割と乱暴だし大雑把だけど、野里教官はダンジョン内では慎重派。ダンジョンにおいてのルール破りには厳しい。……自分は平気でルール破りをするタイプなのに。


「……関係ない。俺はその女と決着をつけるだけだ。芽郁、逃げるな!」


 別に逃げてるわけじゃないんだけど……今の武には何を言っても通じないんだろうな。


「……馬鹿が……」


「さて、野里教官。先に手を出したのは向こうですよ? やり返してもいいですかね?」


 何だかイノ君も好戦的だ。何となくイライラしている感じがする。いつもの飄々とした感じが薄い?


「……はぁ。もう勝手にしろ。ただし井ノ崎、一つ約束しろ」


「どんな約束……というか条件です?」


 教官はイノ君にやらせる気なんだ。でも、今のイノ君に任せると危ない気が……


「……多少は構わないが当たり前に死人は出すな。今のお前からは嫌な気配がする……」


 やっぱり教官も気付いていたみたい。ちゃんとイノ君に釘を刺した。


「はは。まさか。そんな物騒なこと考えてもいませんでしたよ。無力化するだけですって」


「……ならいんだが?」


 うん。今のイノ君はあきらかに〝常識外〟のイノ君だ。彼だけに任せるのは不味いと思う。


「……教官。私は?」


「鷹尾は手加減が下手そうだからダメだ。防ぐだけにしろ」


「………………チッ」


 思わず舌打ちしてしまった。手加減が下手ならまだ分かる。でも、手加減が下手()()って何? 私だって峰打ちしたり、体術で制圧したりくらいはできる。……まぁ確かに苦手なんだけど。


 そんな風にちょっといじけていたら、ヨウちゃん……川神さんがいきなり仕掛けてきた。迷いのない動き。早い。


「《オーラフィスト》ォォォッ!」


 でも、私の方が早かった。間に合う。イノ君の前に……突っ込んでくる川神さんとの間に滑り込む。《甲冑》を展開した上で。


 激しい激突音こそしたものの、彼女の拳を受け止めてなお、その衝撃すらも散らすことができた。もちろん、防げる自信があったからこそなんだけど……この《甲冑》というスキルは、かなり使い勝手がいい。足を止めて打ち合う戦いでの、防御の要、生命線のスキルになりそう。


「……強撃は一撃離脱が基本。なぜ止まっているの?」


「……ッ!」


《甲冑》に阻まれ、動きの止まっていた川神さんに指摘したら、すぐさま飛び退いた。同時にイノ君も動く。


 反撃の許可があれば今ので終わっていたのに……。たぶん、川神さんは速度と手数で勝負する、イノ君と似たタイプ。私では相性が悪い。乱戦となれば、もう私じゃ川神さんを止められない。チャンスだったのに……野里教官め。


 とりあえず、川神さんや他の子たちはイノ君に任せるしかない。


「芽郁! 今日こそお前を超えてやるッ!」


「…………」


 武が踏み込んでくる。剣と盾のオーソドックスなスタイル。


 上から目線で粗暴な印象の武だけど、その戦い方は正統派。剣と盾を操り、連撃を放ってくる。一撃一撃が鋭い上に、こちらの動きを誘導するための仕込みやフェイントも織り交ぜてくる。


 ……ダンジョンの中で武と手合わせするのは初めてだけど……強い。巧い。やっぱり、武は〝天性の才〟を持っている。単純な技だけなら私の方が上だけど、《甲冑》のスキルがなければ、防ぐだけというのは厳しい条件だったかもしれない。


 武相手の実戦であれば、私は後の先を取っての一撃で倒す。時間を掛ければ、攻撃の手を武に許せば、その分だけ不利になる。そんな怖さが彼にはある。


「くッ⁉ 芽郁! 何だそのスキルは⁉」


「……」


 武の剣撃を《甲冑》……籠手や袖(肩部分)に当て、滑らせるように逸らす。構えの甘くなった隙を突いて、盾に体当たりを仕掛ける。あくまで野里教官からの〝防ぐだけ〟という条件で凌ぐ。ちょっと意地にもなってる。


 流石の武も、自分の攻撃が続けざまに逸らされるのには慣れていないはず。


「くそッ! ならばッ!」


 このままでは埒が明かないと思ったのか、武は後退して距離を取る。……分かりやすい。彼の性格や癖をある程度知っているからこそ、次の手が読める。読みやすい。


「《オーラブレイド》ッ‼」


 飛び込むような踏み込みからの強激。


「……ふッ‼」


 マナを左腕に凝集しながら、武の渾身の一撃を籠手で受け流す……つもりだったけど、流石に重い。思わず左腕を振るうようにしながらの無理矢理。少々不格好な形になってしまう。


 でも、武の体勢を崩すのには成功した。……反撃の許可があれば、ここで終わり。たたらを踏むような形となった武も、今のやり取りが致命的な場面だったことは自覚しているみたい。


「く……ッ⁉ ど、どうして届かない⁉」


 ……武。それは単純に今現在の練度の差。積み重ねた技の差でしかない。


 天性の才を持つ武なら、数年後には私なんかよりも先を行っているはず。……ううん。武がもう少し実戦経験を積めば、今の段階であっても、私に土を付けることも可能だと思う。身体能力や技が劣っていても、イノ君が私の上を行っているように。


 一時停止したままの武に声を掛けようとしたその時……


「ぎゃあぁぁぁぁッッッ‼⁉」


 絶叫が響く。


 叫びの主は川神さん。つまり、イノ君が()()()みたい。思わず武も反応する。


「くっ! 川神⁉」


 隙を晒したままで、イノ君と川神さんの方へ視線を向ける武。うん。こういうところが彼の実戦経験のなさのあらわれ。


「貴様! 川神に何をした⁉」


「いや、普通に骨を折っただけ」


 あっさりと答えるイノ君。詳しい内容は分からないけど、川神さんを完封した上で、戦闘の継続が困難なほどの重傷を負わせたみたい。


 ただ、当の川神さんは痛みに呻きながらも回復スキルを使ってる。……武よりも川神さんの方が実戦派かもしれない。


 周囲に目を向ければ、もう他の子たちは戦意を失ってる。事実上、あとは武だけの状態だ。


「……獅子堂……いや、武。もう止めよう。こんなの意味ない……」


「芽郁……! くそッ! なぜ俺はお前に勝てないんだッ⁉」


 だから、それは総合的な差だよ。そして、私と武の差は、武が思うほどに大きくはない。曇った目ではよく見えないのかもしれないけど……。。


「……さて。バカ騒ぎは終わりだ。これでもまだ懲りないなら、お前らが先に仕掛けたことを学園に報告して終わり……退学だ。ただ、今おとなしく帰れば報告はしないでおいてやる。その怪我を適当に治療したあと、魔物にやられたとでも言ってろ」


 野里教官がこの場の締めに入る。……ただ、内容を聞くと、自分で後始末をするのが面倒くさいのか、大雑把に放り投げようとしている気もする。こんな騒動を起こして、学園に報告しないというだけで事の隠蔽なんて無理でしょう……?


「…………嫌だ。俺は引き下がらない」


「……し、獅子堂さん……もう無理ですよ……」


 取り巻きの子にまで諭されている。……実家の権力を笠に着ての分かりやすい上下関係だけじゃない。ちゃんと諭してくれる相手がいる。同じ班員として武のことを見てくれている。それは私にはできなかったことだ。


 武、今こそ引くべき時だよ。引かないというなら……


「……教官。私にも武をブチのめす許可をください」


「…………はぁ。頼むからちゃんと加減はしろよ、鷹尾」


 納得いかない。イノ君は川神さんに重傷を負わせているのに、どうして私にだけ手加減の注意喚起を? しかも、今の今まで、教官のオーダー通りに〝防ぐだけ〟を実践していたのを見ていたはずなのに……むぅ……まぁ今はいいとする。とりあえず、この騒ぎを終わらせるのが先決。


「……武。掛かってこい。終わらせる」


「め、芽郁……! どうしてお前は! 俺をそんな目でしか見ないんだッ⁉ くそッ!」


 武。それは自分の胸に聞いてみて。


「……昔から一方的に絡んでくる。私の都合もお構いなしに。そんな奴に良い感情があるとでも? 私を目標とするのは別に構わない。でも、勝手な理想像を私に押し付けるのは止めて」


 もどかしい。いつものもどかしさじゃない。私の思いを言葉にしても、武には通じないのが分かっているから。


「……俺はお前を超えるッ!」


「…………チッ」


 思わず舌打ちが出た。予想はしていたけど、本当に言葉が通じない。


 武がマナを集中し、一気に飛び込んでくる。いくぶん鋭さは増しているけど、さっきの焼き増し。


「《オーラブレイド》ッ‼」


「…………」


 私は違うよ、武。


 鋭さと重さを増した一撃を左腕の籠手で受ける。今回は受け流さない。


 ある程度のダメージを覚悟の上で、武の剣を逸らさずに止める。流石に鈍い痛みが走る。


 でもほら、これで両者の足が止まった。足を止めてのやり取りは、まだ私の方が上。抜刀していた打刀を右手だけで振るう。


 私からの初めての攻撃に注意していたみたいで、すぐさま盾で防ぐ動きを見せた。……甘いよ、武。この一撃は防がれることを前提としているんだから……いわば誘い。


 私の刀と武の盾ががつりとぶつかり合ったその瞬間。さぁ、受け止めて見せろ。


「……《発頸衝(はっけいしょう)》……」


「ガハッ⁉」


 マナが爆ぜる。踏み込んだ私の足が地にめり込み、私の刀から武の盾へと発頸が通った。ただの刀による一撃と目していた武からすれば、想定外の衝撃のはず。精神的にも物理的にも。かなりの距離を吹き飛ばす結果となった。


「……終わり。もうこれ以上は相手しない。……私はイノ君と同じ道を征く。武は武の道を征けば良い」


 これだけやれば、流石に武も戦いを継続はできないはず。……本人にやる気があっても。


「……がッ……く、くそ、何だいまのは……認めない。こんな結果、お、俺は認めないぞ! め、芽郁! 決着はついていないぞ……ッ!」


 喚いてはいるけど、まともに起き上がれない。今の武はまさに口だけだから、後は野里教官に収拾を付けてもらえばこの場はお開きになるはず。



:-:-:-:-:-:-:-:

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