友の隠し事
「今お前、なんて言ったんだ?」
「いやさ、ただの夢と思ったんだけどよ?響也が自殺してる夢見てなんか胸騒ぎがしちまったんだよ!」と笑い飛ばす茂。
俺にとっては只事ではない。
「茂、詳しく聞かせてくれないか?」
「おいおい、自分が死んだってのに興味津々か?」真面目に取り合う様子が無い。当たり前ではあるが、少しでも情報が欲しい。
____腹が立つ態度だ。
「良いから!」急かすと茂は、
「話したくねぇ。」と静かに言った。
「は!?それってどういうことだ!?」
詰め寄り、胸ぐらを掴む。茂は毅然とした態度で「話したくない。それ以上はねぇんだ。」
と言った。珍しく茂は余裕が無いように見えた。だがそんな事は関係ない。
「そうかよ、」とだけ言って突き飛ばす。
立て掛けてあるバッドに当たり大きな音を立てて倒れた。
「何の音だ!?」
主将の鳴子誠が驚いた様子で部室に入ってきた。「いえ、少し喧嘩しただけです。」
茂は相変わらずの態度で応じる。
「そうか、解決は?」
「とりあえずは。」
「なんだと?まだ話は終わってないぞ?」
喧嘩腰で応じると主将は手で制し、
「頭を冷やせ。」
とだけ言うと準備を済ませて出て行った。
「おい、俺らも行くぞ。」
「……おう。今度詳しく聞くからな。」
「__________。」
俺は知らなかった。何故茂はこうまで言うのを拒むのか。それを知った時、事態は大きく動き出す。
まだ、嵐の前に過ぎなかったのだ。
知らないというのは罪であると同時に楽な事だ。
_____未来を変えるのは楽な事じゃない。
甘ちゃんのままなら、煙から抜けられない。
苦い顔をして、男は低い声で、でもどこか慈愛に満ちた声で呟いた。
「さぁ、響也、今日も練習するぞ。」
「俺はまだお前が黙ってる事を許してないぞ。」
「知ってるよ。でも言いたくねぇな。」
「お前だけは信じてたよ。」
「俺は今でもお前を信じてるよ。」
「……そうか」
一人孤独にマウンドへ向かう。