9話 目覚めたら……ぼくは……
……。
どうやら、ぼくは気絶していたみたいだ……どちらかというと、勉強し過ぎでそのまま机に突っ伏すような寝落ちだったと思うけど。
んっ……ここはどこだ? ……空は青く澄み渡って広がっているから、屋外のようである。
んっ!? ……ほおに伝わる温かみとやわらかさ……これは一体??
「目覚めたようですね。大丈夫ですか? 」
……。
ぼくの視界に入ってくる女剣士さまの顔……彼女自体、空を背景にして、なぜか世界が90度傾いている。まさに寝ている顔を覗き込むような……そのまんまですけどー。
……。
ちょ、ちょっと、待て……今、全国の男子諸君が渇望している、この素晴らしい世界の瞬間に立ち会っていることになっていないか、ぼくは……そう、ぼくはまさに女剣士さまの膝枕にあやかっている状態なのであった。
急ぎ勢いよく、無我夢中で飛び起きる。
こんな幸運はありえない、どう考えても夢である。だって、3人の女の子には無視されていたのだよ。なのに、この女剣士さまにいたっては気絶したぼくを膝枕で介抱してくれていた……みたいだ。
「以外と元気みたいですね。まずは安心しました。」
「は、はぁ……あの……いろいろと、ありがとうございます」
立ち上がったまま、彼女に頭を下げて、お礼を言う。
彼女もしゃがんだ状態から、スっと立ち上がった。無駄のない優雅な動作である。その様子から相当な武芸の持ち主と察する。さすが、女剣士さま……。
「まずは食事が必要みたいですね。そんな状態では人探しなど到底無理でしょう」
と、言って、彼女はぼくの手を引き、歩きだした。どんだけ嬉しい出来事が続くんだよ……幸運過ぎて、もう死んじゃうのかな、ぼく……。
しばらくすると、屋台の前についた。あの博多の街になんとか生き残っている、あの屋台である。まぁ、発電機やガスボンベのようなものは、さすがにないけど。
「あんパン、2つください」
「ありがとうございます。20ゼニンになります」
ゼニンって……通貨だな……にしてもあやしい単位である。
「これを食べれば元気をになりますよ」
「はぁ……ありがとうございます」
空腹状態で甘いパンってキッついな……と思いつつ、背に腹はかえられないので、とりあえず食べてみる。あれっ!? これってあんパンじゃなくて、カレーパンだ。こりゃ、いい! それより喉が渇いたゾ……何か飲み物がほしいな……。
女剣士さまは、ぼくの気持ちを察したらしく、屋台の店主に声をかける。
「ビールをください」
「ありがとうございます。5ゼニンになります」
またもや、あやしい通貨……って、ビ、ビールだと? ……彼女、成人しているのか??
「少年も飲みますか? 」
ここはオルタナティブ・ワールド。未成年が飲酒しても……いいんじゃね。それと先ほどあんパンならぬカレーパンを食べて、喉が渇いていたし……。
ぼくが頷くと、彼女は自分が先ほど口につけたボトルを渡す。
えっ!? このまま口つけちゃっていいの? まぁ、仮想世界であるオルタナティブ・ワールドだから別にいいか……ラッキーは続くよ、どこまでも……ホント、大丈夫なのだろうか。
で、ゴクっと飲んでみる。
さ、酒じゃねー……コーラだ、コーラ。どうなってんだよ、まったく……。それにしても、なんで、彼女はぼくにこんなによくしてくれるんだ?? うーん、謎だ……。
<登場人物>
・岡本結太:主人公、男性、15歳、中学3年生、身長170cm、普通の体型、坊主頭の野球少年
・身分の高そうな女剣士さま:ユウタと一緒にトヲルを探してくれることになった美しい女性。やっぱり謎。
<参考文献>
・良き人生について ウィリアム・B・アーヴァイン