8話 拾う神、現る……
せっかく街に着いたというのに、いきなりボッチになったみたいだ。
これって、みんなでかくれんぼしていて、いつの間にか、みんな帰ってしまって、鬼のぼくだけが取り残された……みたいなものかも。
……。
寂しい、寂しすぎる……寂しいに違いねーゾ、こりゃ……。
と、思いながら道の真ん中に突っ立っていても仕方ない。とりあえず警察に行って、この街について、いろいろ聞いてみることにする。
ぼくは街の中央に向かって歩いた……だが、警察らしき建物が見あたらない。
建物はどれも食事何処、飲み屋、宿屋、武器屋、道具屋などである……そりゃ、そうだ、ここはオルタナティブ・ワールドだもんな。
警察は見つからない。あぁ、どうしよう……ぼくはいったいどうすればいいんだ?
トヲル君はどこに行ったのだろう……ぼくを置いて、あの3人の女の子と宿屋に入ったとか??……それは少しうらやましい……いや、かなりうらやましいゾ。
……。
ぼくは道端に座りこんでしまった。
絶望もあったが、空腹と疲労も重なっていた。
そして、トヲル君のことを思い出す。彼と一緒に旅をする予定がはぐれてしまって、ボッチになってしまっている現状……さて、どうする?
考えろ、考えるんだ……このままではまずい……だって、ここは普段住み慣れているリアル・ワールドではない。そう、オルタナティブ・ワールドなのだ。
……。
ん!?……とりあえず一旦リアル・ワールドに帰ればいいんじゃね。そうすれば、このボッチ状態も回避されるし、戻れば勉強もできる! よし、戻ろう、リアル・ワールドへっ!!
さっきまで絶望していたぼくに希望の光が灯る。
……。
ちょっと、待て……リアル・ワールドへの戻り方がまったくわからんではないか。ここで完全に振り出しに戻る……ここはやっぱり、まずは警察だ……。
「少年……ボソボソ独り言を言っているようですが、何か困り事ですか?」
誰かがぼくに声をかけたようだ……ふと、見上げてみる。
そこに立っていたのは女性だ。といっても、どう見ても20歳前後である。
腰まであるサラサラの金髪ヘア、黄金の鎧に青いマント、腰には長剣、そして青く澄んだ双眸……えっ、どこかで見たことあるぞ、この女剣士さま……う、うーん??
「なぜ、話さぬのです? 私の言葉がわからないのですか?」
分かります、分かりますけど……ちょっと、緊張してしまって、どう返事したらいいものか、わからぬのですよ……しかも、この声は心の声であって、あなたさまには伝わっておりませぬし……。
ぼくは勇気を出して返事をする。
「友人と、はぐれてしまったのです。どうしていいかわからず、考えていたところです」
「そうですか……よろしい、私も一緒にあなたの友人を探しましょう。2人で探した方が早いですから」
えっ!?……いかにも身分の高そうな女剣士さま……ぼくの迷子対応なんかしてていいの?……ってゆーか、内心ドキドキしてしまって、まともに彼女の顔が見れないんですけど。
「よっこらしょっ!」
えっ!?……その高貴な身なりで、その言葉はないでしょ、と内心思うも、彼女はぼくの左隣りに座った。彼女の鎧の肩部分が、ぼくの肩に触れる……。
彼女は何も話さないで、正面を見据えていた。
ぼくも同様に……いや、ぼーっと道行く人々を眺めてみただけかな。
これからトヲル君を、隣りの彼女と一緒に探しに行くのだ。もう、ぼくはボッチじゃない……なんて心強いんだろう。
……。
あれっ!?……急に眠気が襲ってきたゾ……さっきまで休みなしで歩いてきたからだろうか?……ここオルタナティブ・ワールドでも疲労があるのだと改めて思う……まるで、リアル・ワールドだ。
……いろいろ考えているうちに、ぼくは倒れてしまったようだ。
<登場人物>
・岡本結太:主人公、男性、15歳、中学3年生、身長170cm、普通の体型、坊主頭の野球少年
・桐生徹:男性、ユウタの旅のパートナー
・女の子3人組:オルタナティブ・ワールドの住人。謎。
・身分の高そうな女剣士さま:ユウタと一緒にトヲルを探してくれることになった美しい女性。やっぱり謎。
<参考文献>
・良き人生について ウィリアム・B・アーヴァイン