10話 彼女は聖剛騎士だった……
今のぼくは成り行きにまかせてしまっている。そう、気がついたら一緒にいる女剣士さまに言われるがまま、行動してしまっている……いいか、悪いかは別として……。
トヲル君の言われるがまま、ここオルタナティブ・ワールドへ来た。そして、街に向かおうとしと時、見ず知らずの女の子3人組にトヲル君を取られてしまう。途方に暮れていたところ、これまた見知らぬ女剣士さまに拾われ、膝枕・食事・間接キス付きドリンクをいただくなど、至れり尽くせり状態なのであった……。
……。
いいことばっかりじゃね!
……。
そもそも、ぼくはここへ来た目的はなんだったのだろうか……。
思い出せ、こんな感じで行き当たりばったりのクエスト、というか自分の意思もない、言われるがままの行動をするために来たのか??
いや、違う……大いなる目的があった。
そう、それは、ズバリ「心の平静」を得ること!
確かに「心の平静」を得るのは大事である。
だが、今この瞬間の幸運、女剣士さまとの逢瀬、これは楽しむべきではないのだろうか……。
ただし、確かこれに執着してはいけないはずだ。
なぜなら、それが「心の平静」を乱す……はずだったから。
今この瞬間、善き出来事は楽しむ。
この女剣士さまとのコミュニケーションについては。
さっきのトヲル君との別れや、彼と女の子3人組とのイチャイチャに嫉妬したりして、執着しない。
こ、これだ……我「心の平静」を得たり!
「少年……さっきから何独り言を言っているのです?」
やば……女剣士さまにあやしいと思われたみたいだ。まっ、ぼくはここオルタナティブ・ワールドの住人ではないのだから、あやしいと言えばあやしいだろう。この年の男の子はいろいろ考えるのだよ。あなたみたいな美しい女性と一緒にいるだけで、いろいろと考えてしまうのだ。
さて、これからどうしよう。正直、何もプランがない。やみくもに歩いてもすれ違うだけだろう。こういった場合、探偵ってどうしていただろう。写真を見せて、こんな人、見かけていないって聞いていたな。そうだ、聞き込みだ。これだ、これ。
「ちょっと触りますよ」
女剣士さま、おもむろにぼくの額を、手のひらで触って眼を閉じた。
あれ……ぼく、熱あったけかな。
……。
しばらくすると、彼女はぼくの額から手を離し、眼を開けた。
「彼が友だちですね。彼もあなたを探しているようです」
「えっ!?……なんで、分かるんですか」
「我々聖剛騎士は、人の気配を察することができるのです」
……。
ス、スゴ過ぎでしょ、聖剛騎士……こんな人がいるんだったら、探偵とか警察とかいらないじゃん。
「こちらです。彼と合流しましょう」
聖剛騎士は歩き出す。
ぼくも彼女の後を追って歩き出した。
彼女が聖剛騎士だという、なんだかスゴそうな身分にあることは分かった。だけど、そういえばお互いあいさつがまだだったな。名前、なんて言うんだろう……??
<登場人物>
・岡本結太:主人公、男性、15歳、中学3年生
・聖剛騎士の女の人:ユウタと一緒にトヲルを探してくれることになった美しい女性。いまだ謎だらけ。
<参考文献>
・良き人生について ウィリアム・B・アーヴァイン