伝説との会遇
どうも
「ディーン君すまない、話はまた後だ。伝令兵よ、アーレはまだ帰ってきていないのか?」
「はい!アーレ様からの手紙によりますと帰還まであと二日かかるとのことです」
「そうか、では私が出よう。久しぶりの運動だ、なまっていないといいが・・・。直ちに装備一式用意してもらえるか?」
伝令兵はもちろんです!と言葉を残し、颯爽と廊下を駆けていった。
「ネレさん危険です!すぐそこまで盗賊たちがきているんでしょう?逃げましょう!!」
「心配してくれるな少年。君は知らないようだが・・・」
と、先ほどの伝令兵が目を輝かせ、彼女の装備を抱えながら走りこんできた。
「ネレ様!!お持ちしました!」
彼女は助かると。と伝令兵に感謝の言葉を述べ、俺たちに覗くでないぞ。と言葉を残し隣の部屋に入っていった。
「君、運がいいね。あのネレ様が剣を振るう姿を拝める機会はそうそうないぞ!」
と俺の肩をポン、と叩き、伝令兵は出て行った。
「待たせたな少年。さあ、いこうか」
俺は彼女の姿を見て思わず目を疑ったのと同時に、彼女が何者なのか、すぐに思い出した。
空色のピアスに漆黒の鎧。所々に赤、黄、緑といった宝石で装飾され、肩から腰に掛けてゴールドの線が二本。そう、この姿はあの7年前の厄災を鎮めたとされる8人の英雄、八黒天が身にまとっていた装備そのものだったからだ。
「八黒天の一人、ネレ・クロノアーテル・・・」
思わず口からこぼれたその言葉で気付く。ネレ・クロノアーテル・・・八黒天・・・ほんとに存在したのか。おとぎ話の人物がいきなり目の前に現れたのなら、きっと、こんな気持ちになるのだろう。
俺は今までなんて失礼なことをいったんだ!危険?逃げろ?本来ならば今ここで頭を地面に擦りつけ、膝まづき、許しをこうのが本来なのではないか?
そんな俺の心情を読みっとったのか、彼女は、ははは。と笑い、言う。
「ネレさんでいいよ」
「ネレ様!全ての部隊をルクス広場に配置、完了いたしました。それと、ヴィルキスに滞在していたデンタス、ラティオの冒険者に声をかけたところ、約150名集まり、城の護衛にあたっていた兵隊50名と我々の部隊を含め、総勢、約250人。町の住人も避難完了。クリスタルは死守できるかと思われます。監視からの報告によれば全盗賊団、総勢約500とのことです」
500!?こっちは250人って言わなかったか?ていうか、デンタスとラティオが協力するのか!?確か、うわさによれば所有ダンジョンの所有権問題でいざこざがあって、相当バチバチしているらしいが、共に戦うのか。それほどまでにあのクリスタルが大事だってことか。
「ネレさん、どうしてここまでしてクリスタルを守る必要があるんです?あのクリスタってそんなに大切なんですか?」
ネレさんは、はぁ。と、ため息をつき、口を開く。
「クリスタルのことを知らなくてアヴァロンに行くと言っているのか?その調子じゃ先は長そうだな。頃間だ、行ってくる」
「え、ちょっと!まさか一人で!?」
「十分だ」
そう言い残し、彼女は空高く舞い上がった。
「飛んだ・・・あれが浮遊魔法・・・」
あたりからは彼女への期待に溢れかえり、歓声の声に包まれる。すごい熱量だ。
広場からでも見える。感じる。砂漠の急斜面を大きな砂埃を上げながら下ってくる蛮勇たちの姿が。
どう対処するんだ!そうか、ネレさんが奴らの勢いを殺して、こっちで対処するんだ!こい!!
気の憂いだった。八黒天を舐めていた。今でも思い出せる。
あの大軍を鞘から剣すら抜くことはなく、たった一振りでだ。大軍を沈めるなんて。誰が想像できるだろうか。
彼女が一振りした先は砂漠もろとも何もかも、空に浮かぶ雲でさえ、吹き飛んでいた。
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