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異世界転生で死者の僕  作者: 杉本誠
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屍と選択

屍と選択


周りを見渡す。そこに沢山の霊がこちらの様子を伺っている。


(………)

息を呑む。


次の瞬間連絡が同時に襲いかかる。


(避けるッ……)

開知は身体を軽やかに動かし霊の攻撃を避ける。


「いける……うわっ!」

後霊が数匹のところでバランスを崩し、その場に倒れ込む。


「いてて……」


「惜しかったな。開知」


「う、うん…今回は全部避け切れると思ったんだけどなぁ」

ゆっくりと開知は立ち上がる。


「だが、前より正確に避けられている。霊をしっかり見ている証拠だ」


開知がこの世界に転生して二週間が経とうとしていた。その間開知はジャック達とクエストをこなし、夜はエミリに戦闘の指導を受けていた。


「これもエミリお陰だよ。ありがとう」


「気にするな。さて、今日の訓練はお開きにだ。戻るぞ」


「エミリ、話があるんだけどちょっといいかな」


開知は真剣な顔で後ろ姿のエミリに向かって呼びかけた。


「……改まってどうした?」


声色で察したのか。エミリの声のトーンもいつもと違く開知には聞こえた。


「入学に必要なマニーがそろそろ集まりそうなんだ。恐らく…来週には」


「…そうか」


「それで……ジャックの話によると学園は寮生活になってるみたいで、もし入学したらここには泊まれなくなると思う…」


「その話をするということは学園に入学するのを決めたのか?」


「いや…まだ覚悟は決まってない……君の言った通りアンデットである僕が入学してもバレずにいられるのか…」


あれから開知は考えたが、エミリの言ったそのリスクに関してはどうやっても拭きれないでいたのだ。


「……その問題を解決させることが今のお前の課題かもな」


それだけ言い残すとエミリは足を仮拠点の方へ進ませた。


「あ…エミリ」


エミリは相談されることを察してあえてああ言ったのだろうと開知は思った。

決めるのは自分自身だとエミリは言っていた。その言葉の通り自分の言葉で左右されて欲しくないのかもしれない。


「どうしたらいいんだろう」






「おっし、今日のクエストも完了だな!」


「流石に今回のクエストは骨が折れたね…」


クエストを終えた3人は街への足を運ぶ。


「でも開知クンの指示だし良かったよ。じゃなきゃジャックがまた一人で暴走してただろうしね」


開知達三人の大体の役割はこうだ。

魔法で遠距離から足止め、支援担当がユリ。接近戦担当がジャック。指示だしと敵の攻撃を受ける担当の開知。


「はぁ!?いつ俺が暴走したつーんだよ!」


「君の場合はいつもだよ!」


またいつもの様にジャックとユリが口喧嘩を始まる。今じゃこれもいつも見る当たり前の風景だった。


「大体今回も君が無茶しようとしたからボクと開知クンが大変だったんじゃないか!」


「あそこは意地でも追いかけるべきだろーよ!ったく、ちびリボンは分かってねーな。んじゃ開知また明日な」


「あ、うん…。この後何か予定でもあるの?」


開知は目を丸くしながら尋ねる。

いつもなら後20分は揉めているところなのだがジャックが切り上げようとしていたからだ。


「ああ。学園の方でちょっとな。じゃまたな!」


「ボクはちびリボンじゃない!!」

その声は虚しく、ジャックは足早に学園の方へ向かっていった。


「行っちゃったね…」

その場には開知とユリが残った。


「ねぇ、開知クン。君は学科はどこにするつもりなんだい?前は第2校舎、つまり魔法科に所属するつもりだったよね」


ユーリは真剣な眼差しでこちらを見ながら尋ねる。


「え、そうだなぁ」


(そういえば考えてなかったなぁ。あの時はああ言うしか無かったからそう答えけど…)


実際どの校舎に所属するかはまだ決めてなかった。クエストをこなして戦闘に慣れることに頭が一杯だったからだ。


(でもこの身体は接近戦は無理だろうし…なら選択肢は最初からないか)


「今でも僕の意見は変わらず第二校舎で魔法科に所属する予定だよ」


「なら、確かめておいた方がいいかもね」


そう言いながらユーリは右手の薬指を掲げる。よく見るとユーリの薬指には銀色のリングが身につけてられていた。リングの中心には宝石の様な物が付いており、青く、綺麗に輝いてる。


「ユーリ…それは?」


「これはイノセントリングだよ。僕達アルベーノ学園の魔法学部の生徒はみんなこれを付けてるんだ」

イノセントリング、開知は初めて耳にした言葉だった。


「僕達はまだ魔法を自分の力だけでは上手く使えないからね、このリングがあればある程度魔力をコントロールしてくれるんだ。逆にこのリングがなければ魔力が暴走してしまう恐れがあるんだ」


「そうなんだ。それで、確かめるってどういう意味?」


「そのままの意味だよ。君が魔法を使うことが出来るのか、それを確かめようと思ってね」

そう言ってユリは自分のイノセントリングを外す、すると青色の光が消える。


「さ、開知クン。これはめてごらん」

そう言ってユリはリングを差し出す。


「え、う、うん…」

開知は言われた通り、恐る恐るリングを自分の薬指にはめる。


「………」

しかし、何も起こらない。身体にも変化は特にない。


「うーん…これは」

ユリはがっかりした表情を浮かべた。


「えっと、ユーリ。どういうこと?」


「魔力を持っていればそのリングが光る仕組みになってるんだけど…」

しかし、リングは光を放っていない。となると答えは一つだった。


「僕は魔力を持ってない…ってことかな」


「う、うん。恐らくだけど。魔力が少しもないとなると魔法科は厳しいかもしれない」


「そんなぁ……」

せっかく決意して、入学を決めた開知だったが、その決意もいとも簡単に崩されてしまった。


「開知クン…一つだけあるよ。アルベーノ学園に入学する方法」


「えっ、本当?」


「う、うん…でも」

ユリは歯切りを悪そうにしている。


「ユーリ、教えてくれないかな?僕はどうしても入学したい」


「う、うん…でも開知が入学したいと思った理由って、自分でも戦えるようになる為だのね?」


「うん、その通りだよ」

今の自分では到底この世界で上手くやっていけない。なら自分がこの世界に適応するしかない。そう開知は考えていた。


「なら、これはあまり向かないとは思うけど、一応提案はするね。僕達の校舎は接近戦、魔法の他に習える第三校舎が存在するんだ」


「第三校舎?」

まだ数回しか行ってない開知にはどこにあるかは分からなかった。


「そこでは何を教えて貰えるの?」


「…戦略の建て方…って言えばいいのかな。第三校舎は司令官のなり方を教えてるんだ」


「司令官?」


「うん、軍を指揮する役目を持った人だよ。その人の指示で、僕達は動く。まぁ、あまり小規模な戦いでは必要ないけど、逆に言えば大規模な戦いでは絶対必要なんだよ」


「確かにそれだったら僕でも入学出来るね」


「まぁ、直ぐに決める事はないと思うよ。結局マニは必要なんだからジャックの手伝いをしている間ゆっくり考えたらいいよ。でも…ボクは向いてると思う…かな」


「……うん」

そう言ってユリも学園に戻って行った。


(課題が一杯だ…けど決めるしかない)



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