ウラガワ
嫌い。嫌い。嫌い。
「あんたなんか大っ嫌いよ!」
「鈴・・・」
今日も一週間も前からの約束を駄目にする連絡がきた。
どうして?
どうして会ってくれないの?
仕事って付けば何をしても許されるの?
「大事な取引が入ったんだよ。でもこれが済んだら休みを取れるから」
「同じこと何回言ってんのよ!いい加減もっとマシな言い訳考えてきなさいよ!」
言い終わる前に言葉を吐き出した。
次ばかり期待させて、結局今を大事にしてくれない。
どうしてわかってくれないの?
今、会いたい。
会いたいのに。
ちょっとでいいの。
抱きしめてもらえれば、ううん、顔さえ見られれば。
知らないだろうけど、毎晩夢に見るんだよ。
笑ってる。
私たちが笑ってじゃれあうのを、私が泣きながら見てる。
「嫌いよ!!!」
「・・・」
呆れてるんだね。
こんなに必死な私をただの困った女ぐらいにしか思ってない。
所詮恋愛に永遠なんてない。
漫画のような出会いはあっても、そこに確かな未来はない。
もがく程自分の弱さが見えてきて、求められない恐怖がさらに私を追い詰めている。
私は・・・何?
「・・・別れる?」
ガンッと頭を殴られるような衝撃と目眩。
恐れていたけど、考えていなかったわけじゃなかった。
ただ考えないようにするために喚いてたのかもしれない。
「別れ・・・たいの?」
「俺が聞いてる、答えて?」
鈴?と促す声の残酷な優しさ。
どうして決断させるの?
どうしてそんなに冷静なの?
どうして。
「好きなのに・・・!」
「鈴?」
「好きなのに!」
「うん、知ってる」
「嫌い!!!」
「うん」
お前の嫌いって言葉、好きって言葉より好きって聞こえる。
甘い、音。
私を捕まえて離さない。
憎くて愛おしい。
「鈴には本当に悲しい思いをさせてる。でも俺から別れることはないよ。だから鈴にしか決められない」
不器用だね、いつも。
優しいね、本当に。
わかってるんだよ。
そうやって私を想って守って選択させてくれる。
でも少しだけみえるあなたの意地がうれしい。
私だけじゃない。
あなたも痛みを抱いている。
それも隠して待っててくれる。
「ごめん・・・なさい」
「どうして謝るの?俺が鈴を悲しませてるんだよ」
「・・・今泣きそうでしょ?」
「・・・どうかな」
「かっこつけ」
「男は誰でもかっこつけだよ」
好きな子の前は特にね。
照れ笑いしてるあなたの顔が蘇る。
馬鹿だね、お互い。
好きすぎて最悪の結果を招くようなことして。
相手を優先してるようで本当は試してる。
大事に思ってるからこそ困らせて安心したがる。
馬鹿だね。
「明後日あのレストラン行こうな」
「明後日って仕事でしょ?」
「別にいいよ。今日の代わりって言って押し切るから」
「いいの?今大変な仕事の最中で疲れてるんじゃ」
「だから鈴に癒してもらうんだよ。言っておくけど俺も鈴にめちゃくちゃ会いたいんです」
「そ、そう」
「うれしい?」
「・・・どうかな?」
それから私は、夢の中の悲しい私を見ることはない。
気付いたから。
幸せそうな私たちを挟むように、悲しい私とあなたを見た。
私から手を取るとそれは現実になると確信した。
それを暖かく引くあなたに涙がでた。
未来が、
あった。
大人だって完全じゃない。たまには子どもみたいに求めたら、案外うまくいくかもしれない。でもまー程々にしないとウザがられr(略