我、魔王。魔女の元へ。
数えられないほどのアンデッドなどの魔物が右へ左へ忙しなく行き交う。そう、ここは魔王城。
そんな城の頂上付近の一室に彼は居た。
金や宝石で装飾された玉座に頬杖を付いている彼こそがこの城の主である。
「暇だ」
「魔王様、こちらが本日のご予定です。」
そう言って渡せれた紙に目を通す。
「おい。予定を書いた紙だよな?」
「……はい」
「何も書かれてないではないか!どういう事だ!ふざけているのか!それともバカにしているのか!」
魔王は手下の動く鎧にそう怒鳴りつける。
動く鎧は少し俯く。
「と、言われましてもここ最近は街のゴミ掃除や植林など慈善活動をしてましたが……それすらもほぼ終わってしまいまして」
このままでは暇になってしまう。
父が魔王だった頃は勇者が次々と来ては追い返されるのが日常茶飯事で魔物達を生み出すなど様々な仕事があったものだ。だが、我が魔王になってから魔物達からの要望もあり人間と平和に暮らせる道を歩み続けた。その結果今では魔王城は一つの観光地となってしまった。
「このままではいかん……何か、手を打たねば」
「それでしたら魔王様。久しぶりに娘様達にお会いに行かれては如何でしょうか?人間の学校にもかなり慣れてきたと先日お手紙と写真が届いておりましたよ」
「……ふむ」
人間の街に降りるには我の魔力はあまりにも強すぎる。故に、我は普段からこの魔王城の一室でひっそりと日々を過ごしているのである。
「魔王様の魔力が強いのは承知しております。その件についてなのですがガラルエ様から伝言を預かっております」
ガラルエは昔から仲のいい魔法使いで主に魂と肉体の関係を研究している。
「一体なんなんだ?その伝言の内容とは」
「はい、どうやら魂を別の肉体に宿らせる方法をついに完成させられた。との事です」
「ふむ、ならば暗闇の森にあるやつの家に行くとするか。もし、本当なら人間の街に足を運ぶことになるだろう。しばらく留守にするが……」
「はい、お任せ下さい。魔王様が留守の間もこの魔王城はちゃんと管理しておきますので」
その言葉を聞いて安心した。
旅の支度を済ませ裏口から外へと出た。
久々の外の空気。深く深呼吸をすると冷えた空気が肺へと流れ込む。耐えられず咳をする。
その行動が我ながら可笑しく思えてきて笑ってしまう。
楽しい旅路になるといいな。
この度は私の小説を読んでいただきありがとうございます!
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また、他にも7作品投稿していますのでそちらの方も目を通して頂けると嬉しい限りです。