表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
下町とニア  作者: oga
9/25

R

 それから俺とニアのタコ焼き一色の生活がスタートした。

家に帰ったら早速銅板に丸めたティッシュを入れて、串でひっくり返していく。


「こんな感じか?」


 本当は焼いたヤツでひっくり返すのが一番練習になるだろうが、失敗したのも食べなきゃいけないし、勿体ない。


 翌朝10時に金つば駅にやって来ると、ガスコンロをセッティングして路上販売の準備を始める。

そして、11時に営業スタート。

早速1人、客がやって来る。

注文を受け、大河さんが生地を銅板に流し込み、タコ焼きを焼き始める。


「……」


 大河さんに言われた通り、手元をよく見ていると、ポイントがいくつかあることが分かった。

まず、液を流し込んでタコを投入するが、最初にひっくり返すのは真ん中だ。

そこが一番早く焼けるし、順番を間違えると黒こげになる。

つまり、真ん中から渦を巻くように外に向かってひっくり返していく。

ひっくり返す際は、一気に180度反転させる。

それを数回繰り返して、表面にキツネ色の焦げが付けば、完成だ。

最初に言われた通り、食感を損なわないよう、軽くソースを塗り、青のり、鰹節をふりかけ、客に渡す。


「8ヶ入り、300円になります!」








 それから一ヶ月。

順調に売り上げを伸ばし、とうとう目標の一日2000個を売り上げることが出来た。


「おら、お前らの取り分だ」


 大河さんから受け取った額は、1万円。

3時間働いただけでこの額は破格だ。


「しゃ、今日はうまいモン食べ行こーぜ!」


 ニアと俺は浮かれて、その日は近くの居酒屋で一杯引っかけ、帰りがけに銭湯に寄った。


「おっしゃ、一番のりっ」


 客が他にいないのを良いことに、風呂に飛び込むニア。

ここは夜中も営業してるため、客の少ないこの時間を狙って最近よく通うようになった。


「おいっ、はしゃぐなよ!」


 俺は手ぬぐいを頭に乗せて、角の方に移動して湯に浸かった。


(こーゆー昔ながらの銭湯っていいよな)


 壁には富士山が描かれている。

すると、ニアが平泳ぎでこちらに近づいてきた。


「何だよ」


「ここの温泉って、傷とかに効くらしーな。 ほら、見てみ」


 おもむろに髪をかき上げて額を見せてくる二ア。

そこには、うっすらと十字傷。


「だんだんよくなってきてんだ」


「ふうん……」


 そういや、こいつの素性、ぜんっぜん分かんねーな。

一体、何者なんだ?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ