E
「はふはふ…… んめえええええーーーっ」
口の中に入れられたのは、タコ焼き。
だけど、そんじょそこらのタコ焼きなんかとは比べものにならないくらい、うまい。
まあ、銀〇こ位しか知らんけど。
「だろ? 最初は宣伝みてーなもんだ。 その内、さばききれねー位、客が集まってくっからよ」
大河さん曰く、昼時の11時から午後1時が勝負で、最低でも1200個、出来れば2000個を売り上げたいらしい。
「俺のタコ焼きは具材がタコだけの代わりに、ダシとソースにこだわりがある。 だから、50円の内25円が材料費に消えちまう。 売り上げを出すには、一日で1200個、金額にしてざっと6万、稼がねーとやってらんねー」
1200個ってことは、6ヶ入りを200人が購入した場合、それだけの個数をさばけたことになる。
そっから3万が材料費で引かれ、残りが俺らの取り分。
事前の取り決めで、売り上げの5分の1が俺とニア、残り5分の3が大河さんの取り分だ。
つまり、3万稼いだら6000円ずつ俺とニアに、18000円が大河さんってことになる。
このオフィス街なら、それ以上の客が見込めるだろうが、問題は行列を作らずに売りさばけるか、だ。
俺が難しい顔をしていると、大河さんが言った。
「察しの通り、貴重な昼時の時間に、行列が出来てる店は敬遠されちまう。 だから、こいつを使う」
大河さんは、リヤカーの荷台に手を突っ込んで、ガスコンロを2台、取り出した。
「……マジ?」
ニアが俺の方を見る。
「マジも大真面、俺とお前ら2人の手を借りて、3倍速でタコ焼きを売りさばいていく。 いいか、お前ら、良く聞け。 俺はタコ焼きの技は口で伝えただけじゃ身に付かないと思ってる。 客が大量にやって来るまでのこの数日間で、俺の技を見て盗め」
恐らく、ここのタコ焼きのことは口コミでどんどん伝播して、客足は伸びるだろう。
それまでに、俺とニアも、タコ焼きを焼けるようにしておかなければならない。
チラ、と二アの方を見る。
「よーし、やってやるぅ!」
「……」
やる気満々の二アを見て、俺はこの鉄板借りて良いか? と大河さんに聞いた。
「おう、家で練習してこい。 ちなみに、鉄板じゃなくて、銅板だからな」