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大河さんは、道端で営業する許可が下りず、ここで足止めを食らっていたらしい。
「どのクニにもナワバリはあるからな。 しかし、上納金を納めれば営業しても良い、っつー話よ」
要するに、場所代を払えば営業オッケーらしい。
「明日、金つば駅にあるおふぃす街の一角で営業を始めるから、そこで合流だ」
「了解す!」
こうして、明日以降、タコ焼き屋のバイトをすることになった。
早朝、金つば駅にやって来る。
パスモにチャージしてある金額は600円。
路面電車は一律200円の為、ギリギリ足りる。
ニアの方は、パスモを持っていない為、俺の真後ろにへばりついて、改札を通過した。
金つば駅の南口に到着すると、既に大河さんが待っていた。
「よーし、早速準備だ」
オフィス街の通り道で、俺たちはリヤカーに積んであった資材類を下ろし始めた。
リヤカーには、ガスコンロ、タコ焼きを焼くための板、具材、タコ焼き粉などが積み込まれている。
最後に大河さんが店名の書かれた旗を立て掛ける。
「っし、営業開始だ」
店の名前は「かりふわ」
何か、思ってたよりベタな名前だった。
タコ焼きを焼くのは大河さんで、ニアは出来上がったタコ焼きにソースを塗りつけて、青のり、鰹節をまぶして客に渡す。
ちなみに俺は会計係。
金額は4ヶで200円、6ヶで300円、8ヶで400円。
1個50円の計算で、何個売れたかを正の字でメモしておく。
「二ア、ソースはべちゃべちゃに塗ったら食感が損なわれちまうから、表面に軽く塗るだけで良いぜ」
「りょーかい!」
客足はチラホラで、盛況とは言えない。
そもそも、昼時にはちゃんとした食事を取りたいし、おやつ感覚のタコ焼きはそこまで需要はあるのか?
結局、今日一日で売れた数はトータルで60個。
たった3000円の売り上げ。
人件費、場所代、材料費をさっ引いたら、完全に赤字だろう。
「大河さん、このままじゃヤバくないすか?」
俺はすっかり店長モードで、頭の中でどう打開するか、思惑を巡らせていた。
「大河さん、聞いて……」
スポ、と口の中に何かを入れられた。