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下町とニア  作者: oga
6/25

 俺は、アパートを飛び出して、バイトを募集している店を片っ端から回ることにした。

床屋の前にやって来ると、ガラスの壁に貼り付けている紙をまじまじと見やる。


「時給800円、経験者優遇か」


 俺でもできっかな?

経験、無いけど。

手に職っていうし、一度身につけたら結構役に立つかも知れない。

よし、話聞くだけ聞いてみるか。

そう思って、扉を開けようとした時、背後に見知らぬ男が突っ立っていた。

これでもか! という位、グチャグチャにした髪型で、口に楊枝をくわえている。

浴衣みたいなのを着ていて、出で立ちは江戸時代の下級武士を思わせる。


「あ、並んで無いんで、どうぞ」


 手で道を譲る仕草を取るも、その男は動かない。


「おめぇ、仕事探し中か?」


「え? あ、はい」


 下級武士は、にゅる、と服の中から手を出してアゴを撫でた。

そして、品定めするように俺の周りを一周する。


(なんだよなんだよ……)


「おめぇ、タコ焼き、興味ねーか?」


 タコ焼き?

いや、興味とかは分かんないけど、好きだ。


「好きっすよ、タコ焼き」


「作る方はどうだ? 手に職云々と呟いていただろ。 こんな今にも潰れそうなとこで働くより、ウチに来ねーか?」


 この武士、武士は武士でも、鰹節の方の節だった。


「マジすか!? いや、それなら全然働きますよ!」


「っし、決まりだな」


「あ、もう1人、連れてきていいすか?」








 俺は一旦アパートに戻り、自室の扉をノックした。

ニアが出てくると、バイト先見つけたぞ、と1階へと引っ張る。

ニアが下で待っていた野武士を見つけると、指を差した。


「あーっ、サムライ!」


「……む、ニアか?」


 あれ、こいつら知り合いなのか?

お互い名前で呼び合ってるし……


「このオッチャン、一ヶ月前位前に橋の下にやって来たんだ。 だから、俺ら顔見知りってか、お隣さん?」


「まあ、話せば長くなるが……」


 このオッサン、本名は風天大河(45)

リヤカーを引きながら日本を旅するタコ焼き職人(自称)だった。

 

 


 

 

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