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下町とニア  作者: oga
5/25

 銀行に金、入ってたか?

嫌な汗が滲む。

もし入って無ければ、有り金がいよいよ底をついたことになる。

甘く見ていた。

俺は、仕事なんかすぐ見つかるだろうと高をくくっていた。


(クッソ、やべえ……)


 だが実際は、メンタルの問題が大きく、外に出られないでいた。


「どした?」


 財布を持って固まる俺を見て、ニアが言った。


「金が、ねぇ」


「何だよ、そんなことか」


 ニアは、小せぇことよ、と笑い始めた。


「飯なんて食わなくても生きてけらぁ!」


「笑い事じゃねぇっ」


 俺は叫んだ。


「家賃だって払わねーといけねーし…… ここにいらんなくなるぞ」


 田舎からこっちに上京して来た俺には、頼れる友達はいない。

今年で60になる両親にだって、余計な心配はかけたくない。

とにかく、今からでも仕事を見つけねーと。

そのまま小走りで玄関へと向かい、扉に手を掛けた、その時だった。


「うっ、おえっ、オエエッ……」


 俺は、その場で胃酸をぶちまけた。


(外に、出れねぇ……)

 

 ニアが近づいて、背中をさすってくれる。


「おにい、大丈夫か?」


「おえっ、はあ、はあ……」 


 ダメだ。

症状、悪化してやがる。


「おにいは休んでろよ。 金は、俺が何とかするから」


「……どーすんだよ」


「コンビニにバイト募集の貼り紙がしてあったんだ。 外国人歓迎って。 それに応募してくる」


 ……!

そういや、あのコンビニの店長、外国人しか雇わねーっつってた。

ニアなら、見てくれは欧州系の外人って感じだし、使ってくれるかもだ。

ただ、コイツに仕事が出来るかっつー問題がある。


「大船に乗ったつもりで、待っとけ!」


 そう豪語して、ニアは外へと向かった。








 

 翌朝、ニアが両手にコンビニ袋を下げて、戻ってきた。


「処分しなきゃいけないやつ、全部もらってきた!」


「は…… お前、採用されたのか!?」


「もち!」


 コンビニ袋を掴んだ手で、胸を叩く。


「金は俺がジャンジャン稼いで来てやるからサ!」


「……」


 まさか、コイツに助けられるとは、だ。

鶴の恩返しみてーだな、と俺は思った。








 

 ところがある日、ニアが顔にアザを作って帰ってきた。


「お前その腫れ、なんだよ……」


「何でも無いって」


 ニアは隠していたが、俺はすぐに察しがついた。

あの店長、外国人が使いやすいだの何だのってほざいていた。

要するに、今まで従業員に暴力を振るってたんだろう。


「……汚ぇ」


 俺は、怒りで体が熱くなるのを感じた。

職を失ったら困る外国人の心理を利用して、暴力を振るう。

店長として、一番やっちゃいけないことだ。


「もうバイトには行くな」


 気付いたら、俺は扉のドアノブを握っていた。


「俺が他のバイト、見つけてきてやる」





 



 

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