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下町とニア  作者: oga
3/25

A

「何でですか?」


「問題ばっか起こしてるからだよ」


 おっさんの店長は、口にタバコをくわえながら、言った。


「それって、一部の人ですよね? ちゃんと面談してから採用すれば……」


 そこまで言って、俺は黙り込んだ。

何を隠そう、俺が一番身に染みて分かっていた。

昨日まで信頼してた奴に、いきなり裏切られることだってある。


「お前らみてーなのって、使いにくいんだよ。 悪いけどよ。 何かあればコンプラ違反だの何だのって。 だからウチじゃ外国人しか雇ってない。 アイツらの方がきっちり働いてくれるし、この前だって……」 


 俺は、店長の愚痴を聞き終わる前に、その場から離れた。








 アパートに戻る途中、行きに見かけた全裸と出くわした。

二アだ。

ニアは俺を指差して叫んだ。


「おい、お前!」


「……何だよ」


「駅前っていうから、そこまで向かったのに、ヨシノヤねーじゃんか!」


「はあ? お前、どこの駅に向かったんだよ」


 すると、二アは足元の水たまりをアゴでしゃくった。


「エキマエって、これのことだろ!」


 それは、駅は駅でも、液の方だ。


「液前じゃねーし! 駅前だっつの、電車が止まるとこって言わなきゃ分かんねーのかよ」


「分かんねーよ、俺、記憶ねーもん……」


 ……え、記憶がない?

こいつ、記憶喪失なのか?


「自分が何者なのかも分かんねーの?」


 コク、と頷く。

そして、口を開いた。


「ヨシノヤにヒントが隠されてると思う」


 今朝から記憶の無いニアは、頭の中にあるヨシノヤ、というワードが記憶を取り戻す鍵になるかもと、街を彷徨っているらしい。


「……ったく」


 駅までそう時間はかからない。

俺は、ニアの手を引いて駅前のヨシノヤまで向かった。








「ギュウドン、うめぇ!」

 

 何故か、俺はニアに牛丼の並盛りを奢る羽目になった。

店の前まで案内すると、ニアの奴、おもむろに店内へと入り、ギュウドン、ナミモリデ! と片言みたいに注文しやがった。

全裸だし、所持してんのは傍らの猫だけ。

金を払わなきゃ当然捕まるし、俺は仕方なしに同行して金を払った。








「……クソ」


 何で見ず知らずの奴に飯を奢んなきゃならねんだよ。


「お前、本当は記憶あるんじゃねーの?」


「え、無いけど」


 一ミリも悪びれた様子はない。


「……」


 キレそうになった瞬間、ニアが俺の前を駆けた。


「あ、俺の家、こっちだから」


 ニアはそのまま河原の方へと走っていった。

 

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