別れ
「かなりあるよな……」
天井は真っ暗で、夜の海みたく、飲み込まれそうだ。
すると、二アが言った。
「おにい、ここでお別れだな」
「……は?」
二アのヤツ、何言ってやがる。
「どういう意味だよ?」
「おにいはこのまま天井を伝って外に出るんだ。 そんで、そっからゲートを潜って地上に戻ってくれ」
「ざけんなっ」
俺は思わず二アの胸ぐらを掴んだ。
「俺だけ逃がして、お前はどーすんだよ!?」
「俺は、メインコアと一緒に自爆する」
自爆だって……
させねーぞ!
自爆って、死ぬってことだろ。
いくら人類を助けるっつったって、自分の命捨ててまでやることじゃねー。
それに、
「お前がいねーと、ダメなんだよ。 俺は、お前がいなかったらとっくに……」
仕事で人間嫌いになって、社会で生きてく自信を失ってた。
そんな時、コイツが現れて……
もしコイツがいなかったら、首括ってこの世にいなかったかも知れない。
俺は涙目で必死に訴えた。
「いくんじゃねーよ、行かないでくれ……」
「……おにい、行かせてくれよ」
ニアは語り始めた。
「俺、ずっと奴隷として生きていかなきゃならないんだ。 疲れたんだよ。 でも、最後にすげー良くして貰えて、嬉しかった。 だから、ここの人らの為に、命使いたいんだ」
「……」
ニアの話を聞いて、俺は思った。
ちゃらんぽらんなヤツだと思ってたけど、本当は今まで大変だったんだな。
多分、コイツはこのまま一生、いや、永遠に奴隷として生きていかなきゃならないのかも知れない。
だったら、ここで終わりにした方が、コイツの為かもだ。
「……お疲れ、二ア」
「ありがとな、おにい」
そう言って、ニアはエネルギーを供給する枝を伝っていった。
既に下のサーバー室ではガスを放出し終え、ペンギンが集まってきている。
(警備が薄かったのは、この中に誘い出して殺す為か)
俺は、音を立てないよう慎重に天裏を移動した。




