ベーコン
ベーコンを前にして、俺たちは立ち止まった。
素通りしたかったが、手を両手に広げ、行かせまいとしている。
「邪魔だっ」
「何で仲間に入れてくれない!? 確かに俺は何の個性もねぇさ。 作者からも、出したはいいけど、こいつやっぱいらねーか、みてーに思われてる。 けどな、そんな俺にだって、意志はあるんだ!」
作者がどーのとか、ギャーギャー訳の分からないことをわめくベーコン。
今は一刻を争う。
痺れを切らした俺は、銃を向けた。
「どかねーなら、撃つ」
心臓がドクドク脈打つ。
脅しのつもりだが、最悪、撃たなきゃならないかも知れない。
トリガーを指にかけたまま、俺は祈った。
(頼むから、どけっ……)
すると、ベーコンは諦めたように、笑った。
「ふっ…… やはり、ダメか。 それなら、こうする他ないな」
ベーコンは、上着のポケットから小瓶を取り出すと、蓋を開けて中の錠剤を一気した。
「……げっ、あいつ」
「な、何だよ……」
二アの引きつった表情を見て、嫌な予感がした。
「ベーコンが飲んだの、体を強化する薬だ」
チラシにかかれてたヤツか?
突然、ベーコンの体に異変が起こる。
メキメキと筋肉が盛り上がり、服がはち切れる。
「ヒーローになれなイのなら、記憶に残ル敵に俺はな、ル……」
マジかよ!
闘牛みたいに鼻息を荒くさせて、ベーコンが突進して来た。
思わずトリガーを引くも、命中した弾丸は金属音と共に弾かれる。
鋼鉄並みの皮膚だ。
「うっ」
逃げようとするも、慌てすぎて足がもつれた。
(やられ、る……)
諦めた矢先、二アが高速移動で俺とベーコンの間に割って入る。
そのスピードで振りかぶった剣が、ベーコンを捉えるも、肉は裂けない。
どうにか相手を押さえ込みつつ、二アが声を絞り出す。
「だいじょ、ぶか? 早く、建物、へ」
「は…… お前はどーすんだよ!」
「俺は、援軍を、待つ。 急げっ!」
援軍?
味方なんていねーだろ。
そんな思いのまま、這いつくばるようにその場から離脱。
建物の影に隠れて様子を窺う。
二アとベーコンはお互いの剣と腕を押し合って、動かない。
若干、二アが押されているようにも見える。
その時、背後から武装したペンギンが現れた。
(やべぇ、挟み撃ちだ)
俺が表に出ようとした、その瞬間、
「みんな、こいつが侵入者だ!」
二アが後ろのペンギンらに向けて、叫んだ。




