撹乱
「がああっ」
警備を射殺すると、俺たちは扉から通路へと出た。
人を殺しておきながら、思ったより、俺の中で動揺はない。
もしかしたら、見てくれがペンギンだからかもだ。
そのまま、エレベーター脇の階段へと走る。
全面ガラスの扉が自動でスライドし、階段を駆け上がる。
すぐさま、上から追っ手がやって来た。
「クソッ」
マシンガンを乱射しながワンフロア上に上がるも、敵が殺到して先へ進めない。
「ダメだ!」
階段一つ上がりたくても、銃弾の雨あられ。
諦めて一旦通路に出るしかない。
だが、さっきまでスライドしてたドアが開かない。
羽目られたか?
これじゃ、逃げ場が無い。
ドアに向けて銃を撃つも、防弾仕様の為か、玉がめり込むだけでガラスは割れない。
「うわあああーっ」
すると、二アが背丈ほどある大剣を振りかぶって、扉へと命中させた。
ガラスが派手に砕けると、破片が床面に散る。
「ナイス、二ア!」
こいつ、考えてないようで考えてやがる。
剣は防弾ガラスを突破する用だった。
従業員通路を走り、裏口から店内へと入る。
そこは、服のセレクトショップだった。
「なあ、二ア。 ここで着替えてった方が良くねーか?」
「……確かに」
敵は俺たちの下手なコスプレを目印にして追跡している。
……あくまで予想だけど。
とにかく、それならここで変装し直して、表に出ちまえばいい。
よちよち歩きで店員に気付かれないように移動すると、適当な服を見繕ってその場で着替える。
二アは顔を隠す為にキャップをかぶって、店外へと走った。
「こっちだ!」
二アが先頭を走る。
この宇宙船、二ア曰く、ドーナツの様な形状をしていて、ざっくりと東西南北で区分されているらしい。
俺たちが目指すのは北側の10階にあるサーバー室だが、そっち側から上がるのは難易度が高い。
そこで、真逆の南から階段を駆け上がり、ぐるりと回ってサーバー室を目指すことにした。
大きくカーブする通路を走ると、前方に誰かが仁王立ちしている。
「おいっ」
それは、置き去りにしたユーチューバーのベーコンだった。




