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「……まあいいや、サンキューな!」
そう言って、二アは駅とは真逆の方向へと走り出した。
「お、おいっ……」
しかし、既に姿は無い。
(ちょっとヤバそうな奴だったし、あんま関わらない方がいいか)
つか、今は極力人と関わりたくない。
二アのことは放っておいて、俺は駅前へとやって来た。
この街には路面電車が走っていて、最寄りのみたらし駅、抹茶駅と続き、ハロワのある金つば駅へと繋がっている。
金つば駅に到着すると、吐き気がした。
(すっげー人混み)
仕事でメンタルをやられてから、反射的に人のことを避けてきた。
都心の殺人的な人混みに比べたら屁でもねーけど、それでも若干苦しい。
スマホで位置を確認して、早足でハロワへと向かう。
建物の前に来て、俺は愕然とした。
まるで、夕方のデパ地下ばりの混雑具合で、しかも若いヤツらばっかりだ。
俺は、嘔吐きそうになるのを堪えて、来た道を引き返した。
結局、金だけ払って俺はみたらし駅に戻ってきた。
帰りがけ、コンビニのバイト募集のチラシが目に止まる。
(バイト、か)
もし、仕事が見つかっても、またすぐ辞めるかも知れない。
それなら、バイトから慣らした方がいいかもだ。
(……生活、かかってるしな)
貯金なんていくらも無い。
収入が0のままじゃ、今のボロアパートからも立ち退かなきゃならなくなる。
チラシの前に棒立ちしていると、シマシマの制服を着た店長と思しき男が店から出てきた。
咄嗟に、声をかける。
「すいません」
「ん?」
懐からタバコを取り出した所で、こちらに気付く。
「あの、バイトって、募集してます?」
「バイト? あー、ダメダメ、若い奴は採用してないんだ」
……何で?