波動砲
ペンギンの腕が伸びると、フードが引っぺがされ、二アの顔がさらされる。
「やっぱりお前か。 一体何のつもりだ? 広報の仕事はどうなってる?」
まさか、一瞬で作戦がポシャるとは。
俺は、しばしその場に棒立ちになったが、一匹のペンギンがスマホらしきものを取り出し、連絡を入れ始めた。
(やべっ)
仲間を呼ばれて連行される、そう思った俺は二アの腕を引いて逃げようとした。
しかし、乱暴に跳ね返される。
「危ないから離れてろっ」
アイツ、どうするつもりだ?
二アはその場でクラウチングスタートの構えを取る。
(戦る気か?)
それでも、細身の二アがあのペンギン2人を相手取って、立ち回れるようには思えない。
……あの構え、逃げる気か!
俺がそう思った瞬間、二アの体が消えた。
「どこだ!?」
ペンギン2匹も二アを見失う。
その時、俺の目は捉えた。
目にも止まらぬ早さでペンギンの背後に回り込んだ二アの姿。
そして、手のひらを相手の背に向けると、何かが発射された。
物凄い轟音。
土煙が立ちこめ、ペンギンは粉々になった。
二アの腕の皮膚が、折りたたみ傘みたく開き、そこから熱が排出される。
「波動砲!?」
二アの放ったそれは、宇宙戦艦〇マトの波動砲を彷彿とさせる。
てか、アイツ、ロボットだったのか?
「ふぅ…… 一日一発しか撃てないから、次バレたらお終いだ」
「いやいや、お前、何モンだよ!」
「……強いて言うなら、改造人間、かな」
改造人間?
宇宙戦艦〇マトの次は仮面〇イダーかよ。
段々頭が混乱してきた。
でも、今までコイツと生活してきて、ロボットみたいに感情の無いヤツには思えないし、むしろこの状況なら頼もしいかも知れない。
二アが店内に走り出す。
「早く行くぞ!」
(……)
今の轟音と土煙で人が集まってきた。
俺は二アを追った。




