二アの秘密
「ちょ、待てよ!」
俺は、思わず二アの手を掴んだ。
「な、何だよ!」
二アが立ち入ろうとしているのは、駅前でも屈指の高級握り寿司店だ。
俺に付いてこいと言われ、やって来たのはまさかの寿司屋であった。
「意味分かんねーよ、何で寿司屋なんだよ!」
「ウニ食わなきゃ完璧に思い出さないんだよ。 多分、ウニが記憶と関係あんだ」
「……1人でやってろよ」
俺は、クルリと反転して来た道を引き返した。
「あっ、待てよ! ウソウソ、メンゴだよぉ! 牛丼の並盛りでも大丈夫だからさぁ」
調子に乗りやがって。
別に、こいつが何者だろうと知ったこっちゃない。
仮に、この星に宇宙船が不時着して戦争になっても、俺にはどうすることも出来ないしな。
俺にとって今、最も重要なのは、どうやってこれからたこ焼き屋を開くかであって、こいつの秘密なんて気にもならない。
だが、聞き捨てならないセリフが耳に飛び込んだ。
「たこ焼き屋手伝うから、話聞いてくれよっ」
「……」
俺が今一番欲していることを、二アのやつは的確に突いてきた。
たこ焼き屋をやるに当たって、もし人手が必要になったとして、バイトを雇うのは金がかかる。
「そーゆーことなら、いいぜ。 話聞いてやるよ」
二アは、ほっとしたような表情になって、また歩き始めた。
やって来たのは、駅からさほど遠くない空き地。
二アのヤツが、ブツクサ言いながらここまで連れてきた。
「っとヒデーよな。 このまま無視されてたら、記憶無くした宇宙人で終わるとこだったし」
知らねーよ。
別にこいつの宇宙人設定が使われようが使われまいが、俺には関係ない。
「で、ここには何があるんだよ」
「これだよ」
二アが指差したのは、カップ焼きそばの「UFO」
……こいつ、まだボケかます気か。
俺が、いい加減にしろ、と叫びそうになった時だった。
「1秒だけ見せるから、瞬きしないようにな」
二アのヤツが屈んでカップ焼きそばに手をかざす。
次の瞬間、俺の目の前にメタリックの巨大な円盤が姿を現した。




