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しばらくして、大河さんはこの町を出て行った。
まだ全然稼げるけど、日本の端から端まで行くのが目標らしい。
「目指すは日本一のタコ焼き屋よ。 っつーことで、もう会うことはねぇと思うが……」
リヤカーを背負って、歩き始める大河さん。
俺はダメ元で聞いてみた。
「あのっ、大河さんのタコ焼きの2号店、ここで出してもいいですか?」
「……許す!」
「やっぱダメ…… え! いいんすか!?」
「男に二言はねぇよ。 じゃあな」
こうして、俺たちのたこ焼き屋としての生活は一旦幕を閉じた。
俺はそれから、どうにか自分らでタコ焼きの店を開けないものかと悩んでいた。
バイトで稼いだ額はトータルで40万。
そこから家賃代とかの必要経費を引いて、残ったのは30万だ。
タコ焼き屋を開くのに必要なのはガスコンロ、暖簾、リヤカー、その他もろもろ。
「開業資金としては十分だろ」
それに、足りなければ二アから借りればいい。
アイツ、しょっちゅう1人で飲みに出歩くから、いくら残ってんのか怪しいけど。
そんな二アは、近頃窓際に座って空を良く見上げている。
「なあ、お前、今いくら持ってる?」
俺が二アに問いかけると、ああ、と呟いてポケットに手を突っ込む。
そして、有り金を取り出した。
「……それだけ?」
「うん」
銀の玉が三つ、手の平に乗っかっている。
たったのさんびゃくえん……
「てかさ、思い出したんだ」
二アが突然、そう切り出してきた。
「ん? 何を思い出したんだよ」
「……信じてくれっか分かんないんだけどサ」
いきなりジャンプして俺の目の前にやって来る。
「俺、宇宙から来たんだ。 んで、2019年の4月1日に、この星に巨大ショッピングモールが着陸する」
「……はあ?」
何言ってんだ?
俺をからかうにしても、下手くそ過ぎるだろ。
「そーいや、エイプリルフールだっけな。 まだ31日だぜ」
「マジだよ。 俺は先行してショッピングモールの宣伝をするように言われたんだ。 でも、着陸の時のショックですっかり忘れてたんだ。 証拠、見せてやるよ」
ニアは立ち上がると、アパートの扉を開けた。
「俺についてきなよ」




