〜に〜常日
寒いからもっと着込んで来るべきだったなと思いながら、林道を歩く。
白木町は自分の住んでる赤羽町より栄えている。
そもそも町自体が大きい。カラオケや映画館が白木町にあるので、赤羽町に住んでいる若者たちは土日になると白木町まで出掛けて行って遊ぶ。もちろんだが、赤羽町にはカラオケも映画館もない。
その割には、ママと呼ばれる人がいるようなスナックやタイ料理などの外国料理専門店が沢山ある。
そんなことを思いながら、ボーッと歩いてると木の根っこにつまづいた。危ない。転んで痛い思いはしたくない。バックから懐中電灯を取り出す。
前を照らすと、熊に注意の看板がたっていた。木の根っこでつまづかなかったら通り過ぎるところだった。
熊に注意の看板の方へ歩いて行き、林道を外れる。獣道よりもひどい道を進んでいく。
途中、わけのわからない動物の鳴き声が聞こえた。前日ぐらいに降った雪が少しつもった歩きにくい道が、急に変わり、綺麗に整備された道に出た。
ひらけた土地に大きな家が1つあった。
大きな家に近づきドアについた南京錠をはずす。
階段を上り、右に曲がる、ヒトーツ、フターツ、とドアを数えて3つ目のドアを開ける。
懐中電灯を使って中を照らすと、
ぐたぁと横になった女がいた。
光に気づいた女はこっちを向いた。
口にタオルを巻かれている女は、こっちを見て一生懸命声を上げて、睨んできた。可愛いお顔が台無しである。
しかし、生命力の強い奴だ。
この前の女は2回目にきた時には、凍死していた。よほど寒かったのだろう。
毛布でも与えてあげればよかったと思った。
くらいと何もできないので、部屋の明かりをつける。
与えたご飯と水が散らかり、女が使った毛布は自分の汚物によってまみれていた。
あぁきたない。
そういえば、ご飯を前の女も散らかしていたと思って気づいた。口にタオルを巻かれ手を縛られ足は壁から伸びた鎖に繋がれているのだ。ご飯もなにも食べれないじゃないか。
アホだなぁ。と自分に落胆した。5年くらい前と同じ反省を繰り返してしまったようだ。
人間の基本。挨拶をしよう!爽やかに明るく!
「おはよう!香織ちゃん!あっ、こんばんはだね!元気?」
うまく挨拶できた。よし。