日常〜1〜
ふふふふ。日常ってなんですかね?
私は何者かになりたくて、努力した気になって、あとから見れば何の努力もしていなかったのだろう。
ただ単に生存し、そこにいただけだったのだ。
酸素を吸って二酸化炭素をはいていた。吐いていた。はいていた。何もできなかったのではない。なにもしなかったのだ。私は何者になりたかったのだろう。努力もなにもクソくらえだ。チョッキンチョッキン。ゴリゴリゴリ。欲しいのなぁに?切り取って。豚肉牛肉鶏肉魚?欲しいのなぁに?あはははは。
「今日未明、白木町で川崎明美さん17歳が遺体となって発見されました。遺体は両足が切断されており、警察は捜索を続けています。」朝から、重いニュースが流れてくる。私は、いつものようにニュースを聞き流しトーストをホットミルクで一気に流し込む。ホットミルクが予想以上に熱く舌がヒリヒリと痛んだ。その後のご飯は食べる気がせず、弟の皿におかずをこっそり移した。リュックを背負い玄関に行く。リビングにいる家族に聞こえるような大きな声で挨拶をして学校に向かう。寒くて鼻がツンとした。いつもと変わらない朝だった。きっと、これからも変わらないだろうし変わるとしたら、とても低い確率の先の未来なのだろう。変わらないのか、変えられないのか。朝のニュースも、もうなんだか忘れてしまった。所詮は人ごとだ。どうでもよかった。私は、どこの誰がいつどうやって死んでもどうでもよかった。世界の裏側で沢山の人が虐殺されようとも、たった今近くを歩くおばさんが死んでも何も思わない。自分を取り巻く世界を邪魔さえされなければ……。
そんなことを思いながら歩いてると、もう学校が目の前だった。家が学校に近いのはとってもいいことだ。なんて最高。自分の席にリュックを放り投げて、すぐに手をストーブにあてに行った。やはり今日は寒い。雪が降るかもしれない。ストーブの周りは暖かくて勝手に人の椅子に座るとそのままうとうとしてしまった。そんな私に、近づいてくる影があった。ただ1人の親友と言ってもいいだろう。優香だった。優香は私にゆっくりと近づいてワッと大きな声を立てながら私の両肩をたたいた。脅かしてくるのはもちろん想定内だったが、私は素直に驚かされたふりをした。頬を膨らませ軽く怒ったそぶりをする。その後あっためた手で優香の冷たい頬を挟みこんだ。
優香は誰から見てもかわいい方だと思う。それに、成績も優秀、運動もできて学級委員も務めている。私とは正反対だ。私は何においても平均で全てにおいてそこそこだった。特別何か秀でてる訳でも極端に何かできないわけでもなかった。なぜ、こんなにいい子が親友なのかいまだに謎である。
優香が来てすぐにチャイムがなった。急いで自分の席に戻った。担任が入ってきて何か話していたが私の耳には何も入ってこない。やはり降りはじめた窓の外の雪を見ていた。しかし、私が勝手に座った席の人は誰だったか。今日は休みらしい。このクラスになって1年くらい経つのだが、未だに全員のことを把握していない。なんとも薄情なやつなのだろうと、自分に驚き思い出そうと頑張ったものの、しまいには諦めてしまった。いつのまにか朝のHRも終わっていた。1時間目は移動教室だ。優香が教室のドアの所で手招きしていた。
1時間目、気持ち悪いハゲ頭の授業。授業中にも髪が抜けて落ちていた。リアップをおすすめしたい。
2時間目、デブ野郎の授業、雪も降ってる寒い日だと言うのに、額から汗がこれでもかという程に吹き出していた。
3時間目、体育。熱血教師とはそりが合わない。優香が活躍。
4時間目、ウザ絡み教師の授業。めんどくさかった。
5時間目、本日2回目のデブ野郎。机に汗を垂らしていきやがった。気持ち悪い。
6時間目、音楽。みんなと気持ちを合わせろと言われた。名前も知らないクラスの人とどうやって気持ちを合わせろと?
7時間目、自習。今日イチの幸せな時間。
気持ち悪い教師との攻防戦が今日も終わった。
塾に行くという優香にまたね。と言って家に帰った。まだ誰も帰ってきていなかった。