【城崎紫苑様よりノヴァーリス、シウン、エマ、テラコッタ】
※こちらは挿絵担当の城崎紫苑様より頂いた、ノヴァーリス、シウン、エマ、テラコッタのイラスト。
その日ノヴァーリス達が中庭に出ると、そこには珍しい光景があった。薔薇園の近くの噴水前にあるベンチでルドゥーテが座って眠っていたのである。
女王として忙しなく働く彼女は相当疲れていたに違いない。無防備に寝顔をさらけ出してしまうほどに疲労が溜まっていたのだろう。
エマとテラコッタがブランケットでも取ってこようかと目で相談を始めた頃、「しーっ……」と人差し指を口許に当てるように立てて、ルドゥーテの横の生け垣からアシュラムが顔を覗かせた。
彼の手には美しい刺繍が施されたブランケット。
そっとルドゥーテに優しい手つきでそれをかけてやると、アシュラムは穏やかな笑顔で四人に微笑んでいた。
「……本当に、私もお父様とお母様のような夫婦関係を築きたいわ」
ポツリと呟いたノヴァーリスの台詞はそっと風に拐われる。
力一杯片腕をあげ、アシュラムに手を振ったテラコッタ。
それを呆れながらも微笑ましく見ているエマ。
そして穏やかに笑みを返すシウン。
――あぁ……っ、またこの記憶だ。
テラコッタは暗闇の中飛び起きて、自身が泣いていることに気づいた。
子供のように鼻水を啜りながら、テラコッタは永遠に続くと思われていた過去に囚われる。
――……いっそ、記憶を削除できるならば。
馬鹿なことを考えている、と、テラコッタは頭を振ると、手探りで台の上に置いてあったコップの水を飲み干した。
まだ夜は明けそうにない。
(おわり)