完璧男子に類なし school festival 中編
「ほら大悟!早く歩きなさいよ」
「なんで俺がお前に命令されなきゃならねぇんだよ」
「うるさいなぁ、女の子に優しくしなさいよ!」
俺の手を引っ張りながら、小泉は廊下を歩く。
周りの生徒が不思議そうな目で見ていた。
「あ、大悟!たこ焼き食べたい」
「買えばいいだろ」
「買ってよー大悟、ここの生徒でしょ?」
「人の陣地に勝手に乗り込んだの、お前だろうが」
小泉は俺を自由時間いっぱい振り回し、
持ち場に戻ってからも喫茶内で俺を見ていた。
ああいうのをストーカーって言うんじゃないのか?
「あれが橘の彼女だってよ」
「へー可愛いじゃん。っていうか、彼女いたんだ」
クラスのやつらが口々にあることないこと・・・いや、ないことを口にする。
「橘くんのどこがいいんだろうね?」
「ねー、頭も顔もそこそこだけど、性格暗いじゃんね」
「それを許せる心の広さを持ってるんじゃない?」
「うわー素敵」
「あ、写真そろそろ私たちの番だよ」
「そうだった。今は瀬戸くんのことを考えなきゃ」
・・・うるせぇよ、女ども。
だれがそこそこだ。誰が陰気だ。
そんなこと、自覚してるっつーの。
そんなことをしているうちに、学校祭も終わりに近づいてきた。
後片付けをしていると、小泉が近づいてくる。
「大悟、お疲れー」
「・・・疲れたよ、お前のせいでな」
「そんなつれないこと、言わないの!」
「事実だ」
とことん言い合ってやろうかとも思ったが、
周りの目が痛いから、話題を変える。
「で?なんだよ」
「あたし、もう帰るから」
「そうかそうか、じゃあな。もう会うことはないと思うけど」
「寂しくなったら、いつでも連絡してね!」
「バカ、どうやってだよ」
「ふふん」
小泉はしたり顔で携帯を取り出す。
ん?あれは・・・
「それ、俺の携帯じゃねーか!」
「そう、あたしの番号登録しておいたから」
「どうやって、ってかいつ盗んだ!」
「盗んでないよ。ちょっと拝借しただけ」
「それを盗んだっていうんだよ!返せ!」
慌てて小泉の手から携帯を取り返す。
そのときだった。
ぐいっと手を引かれたかと思うと・・・
「ん――――っ」
そのまま、キス・・・された。
周りの奴らの驚いた顔が視界に入る。
その中には、
瀬戸の、顔も。
「ごちそうさま。じゃあ、またねー、だ・い・ご」
唖然とする俺をよそに、小泉は手を振りながら陽気に去っていく。
な、なな・・・
なんなんだ!あの、肉食系は!
「うわー、やるなぁ、橘」
「彼女と堂々とキスしてたよ。すごいねー」
周りがざわついていたけど、そんなん耳に入っていなかった。
いや、キスなんて初めてじゃねぇし、
欧米の挨拶のように触れてすぐ離れただけだ。だけど・・・
瀬戸とだってまだ・・・したことねぇのに。
そうだ、瀬戸!
慌てて瀬戸がいた方を見ると、すでに瀬戸の姿はなかった。