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「鶴の恩返し」

作者: 仮面ライター2号

人は日常の生活の中で感じたこと思ったことをすべて記憶に残しておくことはなかなかできないもです。自分にとって気になることや面白いことを忘れないように残しておきたい、同時にほかの人達にも楽しんでもらえたらなおいいと思い、私「国府衛」の目線で描いたシリーズで第1章が「鶴の恩返し」であります。

第1節 元話

昔々、あるところに老夫婦が住んでいました。ある冬の日、老爺が町に薪を売りに出かけると罠にかかった一羽の鶴を見つけて、可哀そうに思った彼は鶴を罠から逃がしてあげたのであった。

激しい雪が降り積もる夜のこと、美しい娘が老夫婦の家にやってきた。親に死に別れて会ったこともない親戚を頼っていく途中、道に迷ったので一晩泊めて欲しいという娘を夫婦は快く家に入れてやる。次の日もまた次の日も雪はなかなか止まず娘は老夫婦の家に留まっていた。

その間娘は甲斐甲斐しく夫婦の世話をし彼らをたいそう喜ばせた。ある日娘が顔も知らない親戚の処へ行くよりもいっそあなた方の娘にしてくださいというので老夫婦は喜んで承諾した。

その後も孝行して老夫婦を助けていた娘がある日のこと「布を織りたいので糸を買ってきて欲しい」と頼むので老爺が糸を買ってくると娘は、「絶対に覗かないで」と夫婦に言い渡して部屋にこもり、三日三晩不眠不休で布を一反織り終った。

「これを売ってまた糸を買ってきてください」と彼女が託した布は大変美しくてたちまち町で評判になり高く売れた。老夫婦が買ってきた糸で娘は二枚目の布を織り、それはたいそう見事な出来栄えで更に高い値段で売れたので老夫婦は裕福になった。

しかし娘が三枚目の布を織るためにまた部屋にこもると、初めのうちは辛抱して約束を守っていた老夫婦だが、娘はどうやってあんな美しい布を織っているのだろうと老妻の方がついに好奇心に勝てずに覗いてしまった。娘の姿があるはずのその場には一羽の鶴がいた。

鶴は自分の羽毛を抜いて糸の間に織り込みきらびやかな布を織っていたのである。もう羽毛の大部分が抜かれて鶴は哀れな姿になっていた。

驚いている老夫婦の前に機織りを終えた娘がやって来て、自分は老爺に助けられた鶴だと告白し、このまま老夫婦の娘でいるつもりだったが正体を見られたので立ち去らねばならないと言うと鶴の姿になり、別れを惜しむ老夫婦に見送られながら空へと帰って行った。


第2節

昔々、あるところに老夫婦が住んでいました。ある冬の日、老爺が町に薪を売りに出かけると罠にかかった一羽の鶴を見つけて、可哀そうに思った彼は鶴を罠から逃がしてあげたのであった。

激しい雪が降り積もる夜のこと、美しい娘が老夫婦の家にやってきた。親に死に別れて会ったこともない親戚を頼っていく途中、道に迷ったので一晩泊めて欲しいという娘を夫婦は快く家に入れてやる。次の日もまた次の日も雪はなかなか止まず娘は老夫婦の家に留まっていた。

その間娘は甲斐甲斐しく夫婦の世話をし彼らをたいそう喜ばせた。ある日娘が顔も知らない親戚の処へ行くよりもいっそあなた方の娘にしてくださいというので老夫婦は喜んで承諾した。

その後も孝行して老夫婦を助けていた娘がある日のこと「布を織りたいので糸を買ってきて欲しい」と言ってきた。老夫婦はもしやこれは「鶴の恩返し」ではと感じて全財産をはたいて高級な糸を買ってきて娘に渡したのである。

娘は「絶対に覗かないで」と夫婦に言い渡して三日三晩部屋にこもっていた。だがどんな美しい布ができるか楽しみで仕方のない老夫婦は翌朝我慢しきれずに部屋を覗いてしまった。

するとそこには娘の姿はなく、空っぽの部屋には鶴よりも一回り小さい鳥がいた。そしてその鳥は振り返りざまにニヤリと薄笑いを浮かべて、空へと帰って行った。老夫婦がよく見るとその鳥は「サギ」だった。


第3節

昔々、あるところに老夫婦が住んでいました。ある冬の日、老爺が町に薪を売りに出かけると罠にかかった一羽の鶴を見つけて、可哀そうに思った彼は鶴を罠から逃がしてあげたのであった。

激しい雪が降り積もる夜のこと、美しい娘が老夫婦の家にやってきた。親に死に別れて会ったこともない親戚を頼っていく途中、道に迷ったので一晩泊めて欲しいという娘を夫婦は快く家に入れてやる。次の日もまた次の日も雪はなかなか止まず娘は老夫婦の家に留まっていた。

余りにも長く続く雪で老夫婦も娘もストレスが頂点に達していた。これではいけないと娘の提案で近所の友人に声をかけてマージャン大会をやることにした。これが結構楽しくて皆が夢中になって賭けマージャンに熱中していた。それもそのはずで老夫婦も友人たちも負け知らずで大勝ちしていたのである。その中で娘が一人で負け続けていた。

余りの負け方にとうとう娘は牌を投げ捨てて泣きながら部屋にこもってしまった。

娘を心配して老夫婦がそっと部屋を覗くとそこには娘の姿はなく一羽の鳥が首をうなだれていた。老夫婦がよく見てみるとその鳥は「カモ」だった。


第4節

昔々、あるところに老夫婦が住んでいました。ある冬の日、老爺が町に薪を売りに出かけると罠にかかった一羽の鶴を見つけて、可哀そうに思った彼は鶴を罠から逃がしてあげたのであった。

激しい雪が降り積もる夜のこと、美しい娘が老夫婦の家にやってきた。親に死に別れて会ったこともない親戚を頼っていく途中、道に迷ったので一晩泊めて欲しいという娘を夫婦は快く家に入れてやる。次の日もまた次の日も雪はなかなか止まず娘は老夫婦の家に留まっていた。

長く続く雪の中では家の中も寒くて、暖を取る薪の火もその寒さを一蹴するまでには至らなかった。

ある日のこと昼近くなっても娘が部屋から出てこないので、心配した老夫婦が部屋を覗いてみると、やせ衰えた娘が布団の中で苦しそうにうずくまっていた。

老夫婦は娘を哀れに思い、できるだけの手当てをして早く回復するようにと願っていた。だが娘の体調はなかなか回復せずに日々過ぎていった。

天候も回復して暖かい日差しの中で老夫婦は娘も良い方向に向かうと言いながら娘の部屋を覗いてみた。すると布団の中には娘の姿はなく、一羽の鳥が息絶えていた。老夫婦がよく見てみるとその鳥は「ガン」だった。


第5節

昔々、あるところに老夫婦が住んでいました。ある冬の日、老爺が町に薪を売りに出かけると罠にかかった一羽の鶴を見つけて、可哀そうに思った彼は鶴を罠から逃がしてあげたのであった。

激しい雪が降り積もる夜のこと、美しい娘が老夫婦の家にやってきた。親に死に別れて会ったこともない親戚を頼っていく途中、道に迷ったので一晩泊めて欲しいという娘を夫婦は快く家に入れてやる。次の日もまた次の日も雪はなかなか止まず娘は老夫婦の家に留まっていた。

ある日のこと老妻は夕飯の支度を始めたのだが山菜が必要になり、雪の中を裏山に入って行った。

家に残された老爺はなかなか戻らない老妻のことを気にかけながらも暇を持て余していた。

そんな時ふと見ると僅かな戸の隙間から娘の後ろ姿が覗えたのだった。

何気なく覗いてみると娘は少し着物を脱ぎ、暖を取りながら体を拭いていた。その後ろ姿に老爺の目は爛々として自らが若返って行くのを感じていた。

それを知ってか知らずか娘はさらに衣類をはだけたので白い肌は老爺をまるで誘っているかの如くであった。老爺はたまらず部屋に押し入り、そのまま想いを遂げてしまったのである。

その日以来逢瀬を続ける二人を老妻が怪しみその現場を押さえて問い詰めようと、二人のいる部屋に押し入って行った。

だがそこで老妻が見たものは、布団の上で一羽の鳥に爪を立てられて傷だらけになりながら悶えてのたうち回る老爺の姿であった。

大声で喚いた老妻の声に我に返った老爺が、老妻と二人で娘を探すとその姿はなく、一羽の鳥が空へ飛び立っていった。飛び立つ鳥を老夫婦がよく見てみると、その鳥は「ヨタカ」だった。


第6節

昔々、あるところに老夫婦が住んでいました。ある冬の日、老爺が町に薪を売りに出かけると罠にかかった一羽の鶴を見つけて、可哀そうに思った彼は鶴を罠から逃がしてあげようとしたのだが、広げた罠のバネが強くて手元から滑りさらに強く鶴の足を挟んでしまった。パキっと折れる音がしてだらりとした足を慌てて罠から外したが面倒くさくなった老爺は、鶴を放置して町に行ってしまった。

激しい雪が降り積もる夜のこと、美しい娘が老夫婦の家にやってきた。親に死に別れて会ったこともない親戚を頼っていく途中、道に迷ったので一晩泊めて欲しいという娘を夫婦は快く家に入れてやる。次の日もまた次の日も雪はなかなか止まず娘は老夫婦の家に留まっていた。

その間娘は甲斐甲斐しく夫婦の世話をし彼らをたいそう喜ばせた。ある日娘が顔も知らない親戚の処へ行くよりもいっそあなた方の娘にしてくださいというので老夫婦は喜んで承諾した。

その後も孝行して老夫婦を助けていた娘がある日のこと「布を織りたいので糸を買ってきて欲しい」と頼むので、老妻が「もしや鶴を助けたことがあるのではないか」と聞くと老爺が「そんなことがあった」というので「それでは恩返しに来たのだ」と二人は納得した。

欲の深い老夫婦は全財産をはたいて高級な糸を買ってくると娘は「絶対に覗かないで」と夫婦に言い渡して部屋にこもり、三日三晩不眠不休で布を一反織り終った。

「これを売ってまた糸を買ってきてください」と娘が託した布は大変美しくてたちまち町で評判になり高く売れた。味をしめた老夫婦は親戚中から借金をして、更に高級な糸を買い付け娘は二枚目の布を織り、老夫婦はそれを町に売りに出掛けた。

だが店で広げた布は鶴の羽ではなく汚れた山鳥の羽が織り込まれていた。一瞬にして財産を無くし、借金をしょった老夫婦は家に戻ると娘を問い詰めようとした。

だがそこには娘の姿はなく、片足のない鶴が空に飛び立つところであった。「鶴の仕返し」だった。


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