クラス
「長田さん、この授業、何か必要だった?」「移動教室、一緒に行きましょ」「さっきの授業、ここ、どういうこと? 本当に復習かな?」「お願い! 写させて!」
彼女はよく他の生徒から声を掛けられていた。彼女にはいつも誰かが居ると言っていい。しかし、今でこそそんな状況であるが、彼女の中学生時代はとてもではないが人が集まるような人間ではなかった。むしろ目立たず、かげがうすく、いてもいなくても何も変わらない静かな存在だったのだ。彼女はそれが嬉しく思う一方、不思議で仕方がなかったようだ。その疑問に対し、彼はこう答えた。
「お前が色々困った生徒にお節介やいちまったから、他のみんなが調子に乗って頼ってんだよ」
「お節介って! 貴方が『ああいうやつらに構ってやってほしい』とかいうからじゃない!」
「すまん。でもな、ほかの皆も、慣れない高校生活で不安なんだよ。ほら、だって。お前の行動は的確だから皆がついていきたがるんだ。そういうものなんだ」
彼女は喜ぶべきかわからなくて、取りあえず「ふーん」とこたえてやった。
「話かわるけどよ! ここ、最近できた店なんだよ! 大食いチャレンジがあってよ、誰か挑戦させてみたくね? あの杉原さんとか桑田君とかやってのけそうじゃん! 今度誘ってみてくれよ!」
「……。貴方が私にそんなことをさせるから、私についてきたら面白いことが見れる! と思ってついてくるんじゃないの? 私、周りからどんなキャラに映ってるんだろ……」