真意
今度はこちらから質問させてもらう。
「人間の経済ってそんなにヤバいのか?」
「あぁ。かなり不味い」
やっぱり。勇者召喚の根幹はそこか。
「人間はそもそも魔法技術が発達していない。この世界は魔法が全てだ。確かに魔法以外でできることはある。だが魔法を使ったほうが遥かにできることが多い」
「例えば地下資源を取り出したりとか、か?」
「そうだ」
地下資源が取り出せないのは致命傷だな。街の様子もかなり荒れていたんだろう。犯罪横行にふざけた価格。崩壊寸前ってことか。
「それに、人間は神と交信しようとしない」
「……神?」
「あぁ。神だ。お前らの世界にはいないのか?」
「さぁな。死んでからのお楽しみってかんじだったよ」
つぅか、神って何だ。場合によっては魔王よりも不味いんじゃないか?
「神は絶壁の山奥や海の底や遥か上空に住んでおられる」
「へぇ…お前らはその神ってやつと交信できるってわけか」
「特定の神とだけな。神は資源や災害などを予測してくださる」
ふぅん。まるで神話の世界だ。人間が神と交信しないのは過去に嫌われることでもしてきたからか。自分で自分の首を絞めてどうするんだよ。
「で、森に棲んでる魔族も神様から生まれた感じか?」
「そうだ。それにこの森に棲んでいるのは魔族ではなく魔獣だ」
「何か違うのか?」
「魔族はここからさらに北に行った場所で国家を築いる。多種族と貿易もしているぞ」
「貿易?」
「魔獣は危険だが魔族は魔法技術も高く資源も豊かだ。おおらかでたいていの亡命者も受け入れている尊敬すべき国だ」
なにその国。天国?
「まぁ犯罪者には容赦がないがな」
「例えば?」
「最高刑は回復しつつ拷問ののち打ち首だ」
……こわ。
「最高刑など連続殺人かクーデターでもない限り執行されることはないがな」
「そうであってほしいよ」
つまり、あのジジイは僕たちが何も知らないのをいいことに魔族の資源を奪わせて独占し、自らの国を繁栄させるつもりなわけだ。
「えっと……どういうこと?」
「ようやく話したと思ったらそれか……これくらいの話なら理解しろ」
「無理だよ!アイアム一般人!」
「生憎だが、元だろ」
元を強調し、土屋を黙らせる。こいつに説明してやるほど僕は甘くない。
「で、僕たちの処遇は?」
「まずは君たちに本当になんの能力もないか調べさせてもらう」
「能力がなかったら?」
「森の外まで送っていこう」
「あったら?」
「遠慮なく利用させてもらう」
利用か……自分のスキルもよくわからないし、エルフのほうが魔法に詳しいというならそれに乗らない手はない。
「OK。甘んじて受けさせてもらおう」
「素直なのはいいことだ」
というわけで僕たちは大神殿と呼ばれるところに行くことになった。