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魔導書製造者  作者: 樹
それぞれの戦い
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別道

僕と土屋とフェルはコーホジークに行くための準備をしている。とはいえ持っていくものは貰った衣類や携帯食料や魔導科学道具くらいのものだが。

 僕たちがコーホジークに行くことになった理由はちゃんとあり、フォーラスによればコーホジークでなにかしらの組織が暗躍しているらしい。その組織はやはり破壊の勇者と通じておりこの機に乗してコーホジークを乗っ取るつもりらしい。

 僕は自分の荷物をまとめつつフォーラスから貰ったコーホジークや電脳種に関する資料を読む。


 電脳種は魔力が磁石のように周りの物質を集めて意識を持ったものが始まりと言われており、その魔力の構成は神々と類似点が多い。だからか電脳種は神々との交信は行っていないらしい。そして始まりの電脳種、リマスターと呼ばれた存在は自らの魔力を分け与え魔導科学道具の始祖であるアーキアと呼ばれる古代兵器を創り出し最終的に電脳種と言う種族を次々と創りあげ、最終的に国を持つほどの人数となったらしい。


 敵はアーキアを狙ってくるのだろう。大体のアーキアは古代の電脳種が封印し封印場所も残していないそうだが偶然見つけることも十分にあり得るだろう。


「そういえば、電脳種には老いがないんだよね」

「そうだな」


 電脳種は機械を組み立てつつ自分の魔力を注ぎ込んで種族を繁栄していくから老いはなく、言うならば性別もない。女性体として組み立てられてもパーツさえ変えれば男性体になることもできるらしい。とはいえ魔力もHPもあるので扱える武装はレベルによって限られるらしい。

 ちなみに、電脳種の平均寿命は五十年だそう。核となる魔力が尽きれば活動を停止する。元となった骨格は残るが魔力核はなくなったので同じ個体がまたできることはないらしい。


「フォーラスくんって何歳なんだろう」

「どうだろうな」


 そういえば聞いていなかった。あんな子供のような外見だがそれでも見た目相応と言うことはないのだろう。


「準備できたか?」

「うん。できた」

「万端です」


 バック片手に入るだけの荷物をもって僕たちは部屋を出る。このバッグも魔導科学道具で、こう見えて結構物が入る。


 僕たちは部屋を出てギアトの墓。ルグルス内に特別に造られたギアトの墓にはもう凪川たちがいた。

 そういえば凪川たちも今日、ホーメウスに行くんだったな。確かホーメウスでは次代魔王継承者を巡って国内で分裂が生じており時折テロまがいのことをする者までいるそうだ。リュートたちは事態収拾のために名を上げてきた勇者を味方につけることで力を誇示するらしい。もちろん邪魔も入るだろうが、凪川たちなら大丈夫だろう。


「次に会うのは一年後だね」

「不測の事態が起きなければな」


 多分起きないだろうが。

 僕たちはギアトの墓に手を合わせる。僕たちはほぼ同時に顔を上げる。


「またね」

「あぁ」


 短い別れのあいさつを終え僕たちはそれぞれ別れる。 一年後、すべてを終わらせるために僕たちはぞれぞれの道を歩く。



 浅守と別れ俺はリュートさんが用意した馬車に乗る。ホーメウスまでは街を中継しつつ約三日の旅らしい。


「君たちのステータスはどうなっている?」

「えっと」


 リュートさんに聞かれて俺たちはステータスを確認してみる。


ユウヤ=ナギカワ

 男 17歳 Lv 63

HP 1250/1250

 〈スキル〉

 勇者 剣

 英雄 デュランダル



 ユウコ=タニカワ

 女 16歳 Lv 60

HP 2100/2100

 〈スキル〉

 勇者 杖


 スキルにデュランダルが追加されている。

 俺も悠子もかなり成長していた。でも浅守たちのほうが成長しているのだろう。

 俺と悠子はリュートさんに自分のステータスを伝える。リュートさんは感心したように頷いた。


 ちなみにリュートさんのレベルは98だそうだ。文字通りレベルが違う。


「この世界ってレベルに上限ないんですね」

「そうだな。百年前の勇者はレベル200だそうだ」


 レベルどころか次元が違った。

 若干引きつった笑いを浮かべた俺たちを乗せて馬車は動き出した。



 馬車に揺れつつ俺たちは何もない道のりを行く。その間リュートさんから色々と剣術や剣術魔法について講義を受ける。悠子も真剣に講義を聞き、べリアは俺の膝の上に座って眠たそうに眼をこすっている。

 そもそも魔法にはレベルの他にも属性と言うものがあり、この世界の住人は補助魔法を除いて炎、水、重力、風、大地のうち二つの属性の魔法しか使えない。リュートさんは炎と重力らしい。ただ俺は全属性の元となる光が使えるため全属性が少しづつ使えるらしい。ただ使えても中級魔法までだそうだ。

 それともう一つの特異属性である闇は魔王しか使えないらしい。


 そう思うと浅守ってかなり特殊だよね。全属性どころかレベルさえあれば光と闇の最大級魔法すら使えるわけだし。


「普通、次期魔王になれるのは魔王の血筋の中でも選ばれた者にだけ現れる闇属性の魔法が使える者だけがなれるのだが…」

「今回は二人に現れたんですか?」

「いや、二人とも現れなかった」


 それはまた…面倒なことに。

 そういう事態もあるのだろう。属性は生れた時から決まっている。

 とにかく会わないとどうしようもならないね。

 馬車に揺られつつ講義は続く。



 日が傾きはじめ、もうすぐ街に着くだろうというときに、急に馬車が止まった。倒れそうになるべリアちゃんを支えつつ敵襲かとエクスカリバーを構える。

 しかし目の前に現れたのは全く予想しない人物だった。


「魔王…さま?」


 リュートさんが呆然と呟く。馬車の前に立っているのは十代後半の爽やかそうな青年だた。

 って、今魔王様っていった?じゃぁこの人が今の魔王ってこと?


「違う。オレはまだ魔王じゃない」


 どうやら次期魔王候補のほうだったらしい。どちらにせよどうしてこんなところに?


「占い屋に言われて来たんだが…成程」

「?どうなさったのですか?」


 リュートさんが不思議そうにしている中青年は馬車にあがってきて、俺の前で止まった。青年の目線の先は、悠子。


「見つけた。運命の人」

「へ?」


 青年は悠子の手を握る。


 えっと…へ?運命の、人?


 全員が混乱に陥る中青年は決定的な一言を発した。


「結婚して下さい」


 一瞬の静寂。


 そして千里先まで届くんじゃないかってほどの驚きの声が青年以外の全員の口から無意識に出ていた。

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