真実
遺跡の中を散策している僕とフェルは襲い掛かるトラップを破壊しつつ進んでいた。トラップと言っても管理室の時のような面倒な仕掛けはなく普通に岩とか矢とか飛んでくるだけで特に障害にはならない。
所々に落ちている人間の骨や腐りかけた死体を無視しつつ僕たちは広い部屋に出た。
「ここは神殿でしょうか」
「みたいだな」
小さいが確かに神殿のような場所だった。そこには巨大な時計があり、十字架があった。
「動いた」
時計の短針が一分だけ動いた。しかし一分過ぎても再び動くことはない。
十二時まであと十五分ってところか。これは何を現しているんだ?
時計の謎は解けそうにないので無視して先に進もうとするも扉が開いていない。
「トーギさん」
「だろうな」
僕は天蛇の書を取り出し辺りを見回す。案の定、上から大量の卵が落ちてきてすぐに卵を破って巨大なムカデが大量に出てきた。
キモイな。土屋が来ていたら絶叫して逃げ出していただろう。
「ファイアウィップ」
焼き払うため火で薙ぎ払うもすぐにまた湧いてくる。一体一体は大したことないが数が多すぎる。
「フェル」
「はい」
フェルが望破帝を使い、ムカデたちを押し潰した。そのまま床が陥没し、ムカデたちがその穴を進んでくる。僕はそこに火を放った。
「ギイィィィイィィ!」
奇声を上げて燃え尽きていくムカデを見つつ先にある扉を見ると開いていた。僕たちは燃え尽きていくムカデを尻目に通り過ぎていく。
しかし、炎の中から巨大なムカデが出てきて僕たちを締め殺そうとするように僕たちの周りに渦巻いている。
「合体か?」
「そのようですね」
巨大ムカデの体は鎧のように堅い。波の攻撃では効果はないだろう。だが生憎、堅い鱗を持つ敵にはもう会っている。
僕は天蛇の書の中級魔法、スラッシュコールという斬撃魔法を発動し、ムカデの体に傷をつける。その傷をフェルの望破帝で破壊することで広げ、そのにウィンドスピアを撃ちこむ。相次ぐ激痛に悶えているのか巨大ムカデは体をぐねらせる。
「死ね」
僕はさらに現在唯一回復魔法で使える上級魔法『オールアイスエンド』という対象のすべてを凍らせる魔法でムカデの体に流れる血液を凍らせ動きを止める。
「邪魔です」
ムカデはフェルの望破帝でバラバラに砕け散って光となって消えた。僕たちは扉に向かう。扉を開け、目に飛び込んできたのは金銀財宝や古代の書物などではなく、もっと不可解で、もっと重要なものだった。
これは…冗談だろう?予想していなかったわけではないが正直以外過ぎて言葉が出ない。
「これが、創造主の真実か…?」
「……はい」
フェルが意を決したように答える。
「そう。これが真実だ」
突然、目の前に創造主が現れた。
そして、創造主はその姿をさらした。
襲い掛かってきた騎士をすべて斬り、王様にデュランダルを向ける。王様は悔しそうに唸り俺たちを睨む。
ダメージは少し喰らったけれど回復はもう済んでるし、後は聞き出すだけだ。
「王様、答えてください」
「だ、誰のおかげでその力が手に入ったと思っておる!この薄情者!」
「…力については、感謝しています。偶然だとしてもこの世界に召喚してくれたことも感謝しています」
だが―
「それでも、あなたを許せない」
王様は俺の言葉に観念したのかうなだれ、王座を指さした。俺は王座に近づき王座を調べてみると、少し動いた。王座をどかしてみると隠し通路が出現した。俺たちは王様を放っておいて階段を降りる。
階段は意外に短く、すぐに下に着いた。
「これは…」
「そんな!」
装置らしき鏡はバラバラに破壊されていた。鏡は切り刻まれたらしくもう修復は不可能だろう。
そんな…ここまで来て…
「ようやくか」
突然後ろに出現した誰かが呆然とする俺たちに声をかける。俺たちが振り向くとそこにはフードの男がいた。俺たちはとっさに後ろに退避しエクスカリバーとデュランダルを構える。
いつの間に…気が付かなかった。
「やめなよ」
フードの男はどこからともなく刀を取り出し、俺に向かって投げて渡した。受け取った俺は刀を見て愕然とする。
「あ、あぁぁぁ!」
俺は叫び、フードの男に斬りかかる。
殺す!こいつだけは殺す!
悠子ちゃんの制止を呼びかける声を無視して斬りかかるものの日本の剣で受け止められた。
「そんな…まさか!」
俺は愕然として離れる。
「ギアトさんは死んだよ」
フードの男は悲しそうに言った。
「ごめん。これ以上時計を進ませるわけにはいかなかったんだ」
「どういうことだ!」
フードの男がフードを取る。
凪川裕也が、姿を現した。
僕の目の前に出現し、姿を現した創造主はついにその姿を現した。
浅守燈義が姿を現す。
「これは、何の冗談だ?」
「冗談じゃないことは一番よく分かっているだろう?」
燈義は自嘲するように言った。僕はもう一度その部屋にあるもの、壁画を見て全てを悟る。
壁画に描かれているのは崩壊する大地と争う神々、そして二本の聖剣を構える凪川裕也に魔導書を広げ泣く浅守燈義。それに寄り添うフェル。
そして僕の腕の中で息絶えているであろう土屋美月。
「これが世界の真実か?」
「そうだ」
燈義は語りだした。この世界の真実であり誰も予想しなかったオアツトクの始まり。
そして創造主である浅守燈義が辿った悲劇を。
諸事情により、しばらく投稿できません。
お詫び申し上げます。