集落
エルフの集落は近くにあった。僕たちは好奇の目に晒されながらネイスの家に上がり込んだ。
「ちょっと、まって、て」
ネイスは一番大きな部屋に僕たちを座らせどこかに行ってしまった。
ネイスの家は木でできていて、結構広い。二階まである。
「土屋、お前のスキルは身体強化なのか?」
「ううん。違う」
「じゃぁなんだよ」
「えっと、ラプラスの魔だって」
ラプラスの魔ってことは解析とかそういう感じか?いやでも森でネイスの声を聞いたし、エルフがネイスを探していたのも見たはずだ。なのに解析?どういうことだ。
「解析……」
「あの、そんなに考えなくても」
「この先使えるからな。考えるさ」
「この先…ついて行ってもいいの?」
「いやなのか?」
「ううん!別に!」
土屋があわてながら否定する。土屋のスキルは使い道が多いからな。連れていくことに損はない。
「解析……」
………そうか。そういうことか。
「便利だな。お前のスキルは」
「へっ?」
土屋が驚く。僕は気にせず考えをまとめる。
解析の能力で森の中に飛び交っている音を解析し、ネイスの声を聞き分けた。そして森にある光を解析してエルフの姿をとらえたのだ。効果範囲はあるだろうが十分に使える能力だ。
「僕たちにもそれなりにスキルが使えるのか」
「そうみたいだね」
解析と魔導書館…どうにかして有効活用できないだろうか。
「遅れたな」
ネイス父がやってきて僕たちの前に座る。
「わたしはトーレイという。わかっていると思うがネイスの父親だ」
「浅守燈義」
「土屋美月です!」
互いに挨拶を済ませ、本題に入る。
「勇者とは四人と聞くが、いったいどのような人間なんだ?」
「ヘタレだよ。魔物は殺せても人は殺せない。平和なところで育って勇者になってテンション上がってるけど戦じゃ全く戦えない雑魚だ」
「そこまで言わなくても…」
「じゃぁお前は人を殺せるか?」
「無理だよ!」
「な?こんな奴らだ」
「戦で役に立たない勇者など意味があるのか?」
「あるだろ。兵士を奮い立たせたりとか」
それ以外にはおそらく何にもできないだろうが。殺されたら殺されたで魔族戦争の大義名分ができるだけだし。
「国王は勇者を捨て駒として使うつもりか?」
「今のところは何とも言えないが、使えなきゃ洗脳なり捨て駒なりするだろ。実際僕たちは使えないと判断され捨てられた」
「…人間とは愚かな生き物だな」
「違うな。多くの人間が愚かなだけだ」
「では少なからずよき人間もいると?」
「いるだろ。あんたの子供を身を危険にさらしてまで助けたバカが」
土屋は自分のことが言われたことに驚いて「どうも…」と小さくいった。トーレイも「ありがとう」と小さく返す。
「それで、質問は以上か?」
「いやまだある」
トーレイは生徒会の面々の名前、性別、年齢、性格など細かく聞き、ようやく僕が質問できるようになったのは二時間後だった。
二話連続投稿です。