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魔導書製造者  作者: 樹
獣人族の攻防
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試練

 黒い龍は僕を食べようとしているのか大きく口を開けて襲い掛かってくる。僕はそれを避け、龍の体にウィンドスピアを叩き込むがまるで効いてない。鱗が堅すぎて攻撃が通らない。通るとすれば凪川のデュランダルだろう。


「谷川」

「は、はいっ!?」

「回復魔法と防御魔法を死ぬ気で発動させ続けろ。僕か凪川が死んだらお前らも死ぬぞ」


 この事態についていけてなかった土屋たちもようやく自分のするべきことを把握したようで素早く戦闘準備を進めていく。


「連携を見るって、こういう事なんだね…」

「どうやらそうらしいな」


 凪川と僕はそれぞれ武器を構える。連携でしか乗り越えられない試練だというのなら是非もない。生きて帰ってあいつら殴る。

 龍は吠え、口に炎の塊をためていく。おそらくはブレス攻撃。


「ダークホール」


 龍の吐いたブレスをダークホールで受け止めようとするも止め切れない。


「ガーディアン!」


 谷川が魔法を使ってダークホールの前に防御呪文を発動させる。ブレスは何とか防いだものの連続で防げるとは限らない。できるだけ早く決着をつけなければいけないが…


「お前ら」


 僕の言葉に全員が反応する。


「自分の身は、自分で守れるな?」


 そして僕の質問に全員が頷いた。

 戦闘に参加させずに逃げさせるなんてできそうにない状況だ。それにおそらく破壊の勇者はこいつよりも数段上。こんなところで立ち止まってはいられない。


「行くぞ」


 僕はフラッシュで龍の目を潰し、凪川がデュランダルで斬りかかる。デュランダルは堅い龍の鱗を切り裂き血を降らせる。龍は吠えて腕で凪川を薙ぎ払おうとするも凪川は上にジャンプしてそれを避ける。


「視界が復活する!」

「こっちも準備完了!」


 谷川がアスクレピオスを地面に突き立てる。すると地面が盛り上がり、砂が龍を縛る。サンドバインド。上級拘束魔法だ。ロックバインドとは違い砂なので壊れることはない。しかし発動時間は十秒と短い。


「刻光斬!」


 エクスカリバ―に光が集まり龍の右翼を切り裂く。龍は叫び声をあげて痛がっているが、まだ死んだわけではない。むしろ今ので怒ってしまったようで動きは雑になったが所構わず辺りを壊している。

 そして、龍の鱗が盛り上がり、棘のようになる。あれだけ堅い鱗だ。振りまわされて当たったら体が切り刻まれる。


「ガーディアンアーマー!」


 谷川が僕たちに防御付与の魔法をかける。透明な鎧が体を包む。


「まだ!?」

「あと少し!」


 凪川が切羽詰った声を出す。正直、結構限界だが作戦の成功は目前だ。なんとしてもべリアと土屋の邪魔をさせるわけにはいかない。

 龍は体を丸めて転がるように突進してきた。

 この攻撃は予想外だ!


「ガーディアン!」


 谷川がガーディアンで進行を妨げようとするも威力は衰えそうにない。僕もダークホールを発動させようとして思いとどまる。

 違う。何かあるはずだ。この状況を凌げる何かが…


「…凪川!」

「何!?」

「協力しろ!」


 僕は大声で凪川に作戦を伝える。僕はウィンドコントロールで龍の周りに酸素を集め、凪川のファイヤドライブという中級魔法火炎魔法を使ってその酸素を爆発させる。

 本当は上級魔法のエクスプロージョンが使えたらよかったんだが、これで充分だろう。

 隆起した鱗の間から炎が龍の体を焼く。龍は突進をやめてその場に恨めしそうに僕たちを見ている。


「谷川!大丈夫か!」

「後一回くらいしか上級魔法使えんよ!」


 一回あれば十分だ。


「準備完了!」


 土屋の声に反応して僕たちは一斉に動き出す。谷川は一人で上空に上がり僕は土屋を抱えて上空に避難。少し遅れて凪川もべリアを抱えて上空に避難してくる。

 よし、終わらせよう。


「蟻地獄!」


 土屋とべリアが魔法を発動させる。土屋とべリアには龍の周りにウィンドコントロールを設置してもらい、べリアの魔法発動遅延魔法ルーズマジックを使ってもらい発動を遅らせた。そしてウィンドコントロールを全て同じ速さと方向で回転する形で発動させればウィンドコントロールがかみ合って一つの巨大な渦を作り上げる。

 新魔法、蟻地獄。これで龍は身動きができなくなった。


「ホールバインド!」


 谷川の発動させた魔法で龍をホール状の結界に閉じ込める。そして僕はそのホールバインドの天井にあいた穴から中に向かってウィンドコントロールで空気を外に逃がす。


「サウザントサンダー!」


 凪川によってほぼ真空状態になったホール内に巨大な雷が投入られる。電気は真空状態でも通るので龍は感電し、渦巻く砂に飲み込まれていった。そして砂は止まり僕たちは地面に降り立つ。


「勝ったー!」


 土屋の嬉しそうな歓声とともに暗い空間は崩壊し、灼熱の大地とこっちを見て嬉しそうに拍手している三人が目に入る。

 殴ろうかと思ったがそんな気力もない…

 僕たちが疲れて恨めしそうに三人を見ていると後ろからフェルが走ってきて僕たちに水を渡してくれた。


「ご苦労様でした」

「本当にな…」


 手渡された水の美味しさに感謝すら覚えつつ砂漠の強化合宿は幕を閉じた。

 しかし、フェルは今までどこにいたんだ?



 どこかの空間。影は水晶に映るトーギたちを見てため息をついた。

 成長はしているが…ここまで来るにはまだ早いか。


「急いては事をし損じるぞ」

「…いたのか」


 影は水晶をしまってフードのほうを向く。

 どうしてもこいつは苦手だ。


「気づかれたみたいだな」

「そうだな。予定通りだ」

「あぁ。予定通りだ」


 そう。まだ焦る時間じゃない。予定通りに物事は進んでいる。予定を外れるのは破壊の勇者の事件を解決した後でいい。

 影は何も言うことなく姿をけした。フードは心配そうに影を見るが特に何も言わない。

 創造主のどうしようもない過去を思い出し、同情する。フードにはそれしかできなかった。

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