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魔導書製造者  作者: 樹
獣人族の攻防
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到着

 運よく洞窟を見つけた。しかし億のほうに生命反応があるとフォーラスが言ったので確認のため奥に進んでいる。


「寒くなったな…」

「そうだな。こればかりは魔法ではどうにもできないし」

「寒さは感じません」


 相変わらず何も感じていないらしいフォーラスはしれっとしている。いちいち反応していては体力が持たないので何も言わない。

 それにしてもこの洞窟、結構広い。奥にいる生命体って一体なんなんだ?巨大な魔獣とかだと勘弁してもらいたいんだが。


「光だ…」


 リュートが呟く。リュートの言う通り洞窟の奥のほうから光が見える。僕たちは光のほうに向かって慎重に進む。

 だんだんと光が広がっていき…


「湖…?」

「みたいだな」


 そこにあったのは大きな空間と、大きな湖。湖はキラキラと光り輝いている。どうやら湖の底に何か発光するものが沈んでいるらしい。


「これ飲めるのか?」

「毒はないようです」


 フォーラスが水質を調べたらしく、そう言った。僕たちは水の中を覗き込んでみる。水の底には黄金色に輝いていた。

 まさかこれ、全部黄金?


「怪しいな」

「怪しいね」

「怪しいです」


 試しにそこらに落ちていた小さい石を投げ込んでみたが、特に何も起こらない。

 罠だと思うんだが…検証しないことには水は飲めない。


「生命体はどこにいるんだ?」

「おそらく、この水の中かと」


 水中か…水の中から出てこられないタイプなら心配いらないのだが陸に上がれないとも限らない。

 どうにかして確かめられないものか…


「あ、蟹」

「あぁ、クロークラブか」


 リュートがクロークラブを見つけた。クロークラブにしては珍しく一匹だ。

 これは使えるか?試してみよう。

 僕はクロークラブに捕獲魔法をかけて攻撃されないように素早く湖の上に投げた。すると湖が盛り上がり、巨大な触手のようなものが出てきてクロークラブを握りつぶした。


「蛸、だよな」

「蛸ね」

「個体名称検索…オクトパスと推測されます」


 オクトパス。確か巨大な蛸の魔獣で、幻覚を見せて水の中に来た生物を襲う。見た目は巨大な蛸で、時には陸に上がって来る。

 それにあの触手の長さじゃ洞窟の端で休んでいても襲われかねない。


「殺しておくか」

「そうだな。それが一番だ」


 僕は水中にサンダースピアを撃ちこむ。電気は水に伝わり感電したオクトパスは水の中から出てきた。そして僕たちを見つけ、触手を振り上げる。その瞬間を見計らってグランドエフェクトという自分の周りの地面を自由に変える魔法を使って地面を槍状に尖らせ、それを発射して二本の触手を天井に縫い付けた。

 その隙を狙ってリュートがさらに二本の触手を斬る。これで残り四本。


「オォォオォォォオオオ!」


 オクトパスは唸り声をあげて残りの四本で僕たちを攻撃してくる。フォーラスは上空に回避し、僕はオーバーパワーで強化して触手を避け、リュートに至っては壁を縦横無尽に駆け回り攻撃を避けつつ攻撃している。

 すごいな。さすがにあの戦法は思いつかなかった。


「ブレス来ます」


 フォーラスが上空から僕たちに忠告する。フォーラスの言った通りオクトパスは下にある口をこちらに向け超高速で飲み込んでいた水を発射しようとしている。

 狙いは僕か…さすがにこれを避けるのは無理そうだな。

 僕はウォーターカッターで対抗する手も考えたが威力負けする可能性もあるし当たる可能性も低いので諦め、リュートに頼ることにした。僕が目くばせするとリュートは頷き、壁を蹴る。

 水が発射される直前、アウトオーバーによって強化されたリュートが槍を横凪に振り、オクトパスの向きを変えた。水は超高速で僕の右のほうの壁に向かって発射され、壁を傷つける。

 よかった。あれを避けるのは至難の業だからな。


「終わらせるぞ。フォーラス」

「準備できました」


 フォーラスが腰から取り出したのは折り畳み式の巨大な銃。あれも魔導科学道具の一つで、魔力を込めて発射する銃らしい。


「ファイア」


 銃口から炎の弾が発射された。それはオクトパスの巨大な頭に当たる。オクトパスは水中に逃げようと体を沈める。


「逃すか」


 アイスアラウンド。水を凍らせる魔法。中級魔法だし発動までに時間がかかるものの効果は絶大。オクトパスの周りの水は凍り、オクトパスの身動きが封じられる。

 そして身動きの取れないオクトパスにリュートが槍を投擲する。


「これで終わりだ!」


 高速で投擲された槍はオクトパスの頭を貫き地面に刺さる。オクトパスは一度ビクンと痙攣して粒子となって消えた。

 終わったか。


「これで心置きなく休めるな」

「そうだな」

「就寝の準備をしましょう」


 寝袋を敷いて寝転がると今日一日の疲れがどっと押し寄せてきた。僕はすぐに眠りに落ちた。



 翌朝、あまりの暑さに目を覚ます。もう太陽が昇っている。


「さてと、行くか」


 携帯食料を食べて水を飲み、オアシスを目指す。距離的にはそろそろのはずだ。魔獣の反応もないみたいだし、今回はこれで終わりか?


「あっ」

「どうした?」


 リュートが何かを見つけたようだ。リュートが指さすほうを見ると、砂漠を歩いている奴が三人ほどいる。

 あれは…土屋たちか。


「行くか?」

「いや、その必要は無さそうだ」


 どうやら土屋たちも僕たちを見つけたようだ。手を振りながらこっちに走ってきて、体力が切れたようで途中で止まった。

 バカか。



 土屋たちと合流し、お互いの道のりを報告しあう。どうやら土屋たちは土屋たちで苦労しているようだ。


「でも無事でよかったよ」

「そうだな」


 正直、土屋は途中で諦めると思ったが、こいつには結構根性があるらしい。僕たちはさらに先へと進む。



 正午ぐらいだろうか。砂漠の向こう側に木々が茂っているのを見つけたのは。土屋とフォーラスが確認するも、どうやら蜃気楼や幻覚魔法の類ではないようだ。


「ようやく終わりかぁ…」


 土屋が疲れ切った声を出す。べリアと凪川と土屋は真っ先に駆け出した。


 あれ?ちょっとおかしくないか?


「おいフォーラス。なんで景色が歪んでるんだ」

「そういう仕様ですから」


 フォーラスがそう言った直後、僕の足元に転送魔法の魔法陣が出現する。

 あ、やられた。

 僕はオアシスの前まで転送される。熱い土に倒れていると上空でこちらを見ているタマモとギアトを見つけた。


「逃げて!」


 そしてどこからともなく聞こえてくる谷川の声。

 あぁ、成程。これが今回の目的か。

 景色の歪みが広がり、僕たちを飲み込む。出現したのは荒涼とした大地と僕たちを涙目で見ている谷川。そしてその後ろにいる巨大な黒い龍。


「さぁ、君たちの連携を見せてくれ」


 タマモの声が振ってきた。訳の分かっていないべリアたちを放置して事態は進んでいく。

 竜が吠え、襲い掛かってきた。

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