異種
魔導書というのは文字通り魔法を行使するための媒体であり、よくある物語では危険なものだったりする。そしてそれを作り出すことのできるのが僕の能力だというのなら僕自身かなり気を付けなければいけないだろう。でも――
「……いいね」
思わず呟いてしまった。でも、そうだろう?僕の絶対記録とこのスキル。十分すぎるほど強いじゃないか。この世界に魔法がどの程度あるのか知らないが知識を欲している僕にとってこれ以上ない代物だ。
「だ、大丈夫!?」
「心配するんなら勝手なことしないでくれ……」
それだけ言っておいた。怒りもあるが正直今はそれ以上に好奇心がある。自分のスキルがどれほど使えるのは試してみたいという気持ちがどんどん湧いてくる。
「おい、ガキ」
急に話しかけられた子供はビクッと身を震わせた。この子供、よく見てみると耳が長い。しかも目が緑色だ。
「ちょっと、恐がらせちゃダメだよ」
「知るか。ここにいたら命がいくつあっても足らねぇんだよ。そのガキに大人がいるところに案内してもらうのが一番だろ」
「そうだけど!もうちょっと優しく!」
「じゃ、お前が聞け」
僕は周りを見回し、モンスターがいないことを確認して再び魔導書を取り出した。
「そういえば、ステータスはどうなっているんだ?」
心の中でステータスと呟いてみる。
トーギ=アザガミ
男 17歳 Lv 12
HP 400/400
〈スキル〉
魔導書館
レベル12になっている。かなり上がったものだな。
魔導書館とクリックしてみた。
・魔導書館
【一冊目 UNKNOWN】 『熱探索』
題名は決まってないのか。しかも一冊目って、いったい何冊まで作れるんだ。この熱探索っていうのはさっきの蛇の魔法だろう。
「使ってみるか」
熱探索を使ってみた。とたんに土屋とガキの体がサーモグラフィーのように見える。なるほど。こうやって獲物を探すのか。
「おい、聞けたか?」
「えっと……この子も迷子なんだって」
「……おい」
この近くに住んでるとかじゃないのかよ。どうする?土屋のことだから捨てて行くなんて言わんないぞ絶対。
「そういえば……おい土屋、お前のスキルで探せないか?」
「何を?」
「モンスター以外の誰かに決まってんだろ」
「うん。やってみる」
土屋は目を閉じ、むむむ……と唸る。そしてカッと目を見開いた。その目にはなぜか眼鏡が。
「見える!大勢の人たちが見える!」
「どこのインチキ占い師だお前は」
ノリが完全にインチキ占い師だが見えているらしい。
「どんな容姿だ?」
「えーっと、耳が長くて……目が緑色で……弓とか剣を持ってる!」
「ガキの同族か」
エルフとでもいうのだろうか。このガキを探しに来たか?
「行ってみるか」
「そうだね。行こ?」
「……ん」
ガキは差し出された土屋の手を取り立ち上がり、僕たちは歩き出した。
「ねぇ、君の名前はなんていうの?」
「………」
「ご両親はどんな人?」
「………」
ガン無視だった。というか諦めろよ土屋。
「私は土屋。土屋美月。こっちのお兄ちゃんは浅守燈義くんだよ」
「勝手に個人情報をばらすな」
「別にいいじゃん」
僕個人としては得体のしれない奴に名前は知られたくないものだ。そもそもエルフが人間を毛嫌いしていたらどうする。子供は単純でも大人は複雑だ。このガキが一緒に歩いてくれていたって。
「何をしに来た人間!」
「その子を離せ!」
ほら。殺気立ってる。どうするんだよこれ。