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魔導書製造者  作者: 樹
エルフの戦争
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起動

 深夜、僕たちは管理室にいた。いよいよこれから管理室を起動させる。

 パスワードは打ち込んだ。モニターに文字の羅列が表示されてその文字の羅列の最後に『READY?』の文字。

 後はパソコンのエンターキーを押すだけ。


「さて、全部元通りにしようか」


 僕はエンターキーを押した。


 エンターキーを押すとモニターの文字が消えて『GO』の文字が表示され、部屋が揺れた。モニターが光って遺跡から光が漏れた。光は地脈を伝ってエルフの領地全体に流れてラーの機能を一瞬だけカットした。王都のエルフにかけられた加護が感知できないほどの一瞬だけ切れて偽装のスキルも消えた。

 王都のエルフは自分が騙されていたことを知り一時混乱したものの王都の兵士の働きで事態は沈静化した。


 そして、フォンの王都帰還が決まった。



 フォンが王都に帰還するとき、僕たちは土屋を置いていくことにした。トーレイとネイスに協力してもらって出発の時間を土屋に偽って伝えた。

 あいつはこの先、死ぬ可能性のほうが多い。王都を壊滅させるほどの戦力を持つ相手に土屋がいたとして何ができる。ただ犠牲者が増えるだけだ。


「きっとミツキは恨むだろうな」

「死ぬよりましだ」


 恨めるってことは生きているということだ。生きているのなら恨んでくれても怒ってくれてもいい。


「転送開始するぞ」

「あぁ」

「了解です」


 僕は転送を開始した。そして景色が切り替わり中継地へと飛ぶ。中継地にはもう兵士が待っていた。


「お疲れ様です!」

「はい。お疲れ様」


 兵士長がフォンに敬礼し、フォンも敬礼を返す。そこから転送魔法が使える魔導士に転送してもらい、王都に着いた。

 最初にもそうしてくれよと思ったがあの時はフォンが独断で来ていたらしく護衛もそういなかったので魔導士が居なかったらしい。ホント何してんだよこのじゃじゃ馬王女は。


「それと、報告が!」

「報告?」


 兵士長が慌てた様子でフォンに報告する。

 現在考えうる限り最悪の報告を告げる。


「悪神襲来まで、残り一日です!」



 すぐに王都へと転送してもらう。

 やられた!教皇のかけた偽装は僕たちだけではなく悪神についての認識まで偽装させられていた!僕はフォンからしか日食について聞いてないしフォンも人づてに日食を聞いたのだろう。だからこそ気づかなかった。この世界には天気予報すらないのだから。

 それに、予言を管理していたのは教会なのだから!


「対策は講じてあるのか!?」

「兵の準備と市民の避難を大急ぎで行っております!」


 城の中は誰もが走り回っていてゆっくりとしているのは僕とフェルぐらいなものだ。


「君たちも手伝ってくれ!」

「…仕方がないな。ルース!」

「は、はい!」


 走り回っているルースが僕の声に反応してこちらに走ってくる。


「お前のスキル、使わせてもらうぞ」

「え゛!?でもスキルって…」

「安心しろ。お前のスキルは今だけは役に立つ」

「は、はぁ…」


 フェルとの決闘前夜に聞いたルースのスキルを使えばアペピを怯ませることくらいはできるだろう。僕はケータイに入っているあの写真をルースに見せてスキルを使わせた。

 後は…ラーの確認をしておこう。


「フェル、ラーの場所を知っているか?」

「はい」

「じゃ、案内よろしく」

「了解しました」


 フェルに案内してもらいラーのある場所へ、教会の本部がある大聖堂のさらに奥に進み黄金の部屋のさらに奥に進むと巨大な部屋に出た。その部屋の中心にそれはあった。

 ラーは巨大な黒い魔鏡といった感じだ。巨大な部屋は屋上に穴が開いていて光がラーに当たりラーは神から受け取ったという無尽蔵ともいえる魔力を吸収した光と合成させて結界を発生させている。

 一体この黒い魔鏡にどれほどの力が埋まっているのだろうか。


「一説では、アペピはラーの内臓魔力を狙って王都に攻め入ろうとしていると言われています」

「でもこれを切ると天碌山にいる魔物が攻めてくる」


 ノーリスクハイリターンなどという幻想はやはりないらしい。

 しかし、悪神襲来まであと一日だ。これを稼働させることに意味があるのだろうか。


「悪神、どうしますか?」

「全員でかかればなんとかなる…なんて甘い事態ではないだろうがやれることをやるしかないさ」


 正直、僕は逃げようと思えば逃げられる状況だ。だがそうしないのは土屋の願いというものがあるからなのだろうか。

 どちらにせよ、ここで引くつもりはない。


「確認した。他にも知りたいことがあるから案内してくれ」

「了解しました」


 僕はフェルに案内してもらい城の中を調べつくした。設備や武器の貯蔵、兵士と魔導士の数に市民の避難完了まであとどれくらいかかるのかまで調べつくした。


 そして、夜がやってくる。カッサンドラの予言によればアペピの襲撃は明日の正午。王都の残ったエルフは最後の晩餐と称して飲みあさっている。

 僕はフェルとともに自分の部屋にいた。


「明日死ぬかもな」

「その時はご一緒いたします」


 フェルの前なので無感情に言った僕に対してフェルは感情がこもっているのかよくわからない声でしっかりと返した。

 そして僕は眠りに落ちる。アペピに対抗する作戦は思いついただけでも十個。しかしそれのどれもが通用する気がしない。


 全員の不安が掻き立てられる中、運命を決める朝が来た。

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