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魔導書製造者  作者: 樹
エルフの戦争
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迷宮

 僕たちは黙々と遺跡の中を探索した。あれから僕の予想を確認するために色々と実験した結果、個体名とそれに起こり得る事象を言葉にするとその通りになるらしい。

 さっきのフェルの言った「落ちたら即死」というのは床下という個体名の元、落ちたら即死という事象からフェルが想像したものが具現化したらしい。そして生物の名前で事象を言っても効果はなく、場所移動ができないことも分かった。


「しかしこれは…」

「凄い場所だよね。こんな場所が沢山あるんですか?」

「さすがにそうそうないよ。わたしもこんな現象が起こる場所には初めて来たし」

「確かに、このような遺跡はそうあるものではないですから。ここは神の庇護下におかれているか、神の住居の一つなのでしょう」


 思ったよりもすごい場所だった。

 確かに、王都を守り続けているラーに介入することができる場所ならば何らかの神との関係があったとしてもおかしくはない。むしろ何の関係もなく介入ができるほうが不自然か。


「言葉には気を付けなければな」

「だな。特に土屋。順番が回ってきてもすぐにくだらないこと言って消費しろ」

「ひどいこと言った!」

「適切な判断かと」

「フェルちゃんもひどい!」


 土屋が何か喚いているがいつものことなので気にしない。僕たちは煉瓦のような壁に挟まれた廊下を進んでいく。


「壁は固定された」


 僕がそう言うとガキッと音がして壁がロックされた。少しずつ狭まっていた壁は動かなくなった。

 罠も満載だなここは。一筋縄じゃいかないな。


「よく気が付いたね」

「壁の位置が0.5ミリ狭まってた」

「よく分かったな!」


 絶対記録を持つ僕には造作もないことだ。だが罠があると分かった以上油断はできない。特に次は土屋だし。


「土屋、くだらないこと―」


 後方からガッコと音がした。振り返ってみると強大な玉がすごい速度で壁を削りながら迫ってきていた。


「い、岩ー!?」

「違―」


 !?声が出ない!あぁクソ、ネタバレ禁止か!上等だ言葉以外でも伝える方法はある。

 僕は走りつつウォーターカッターで壁を削る。刻むのはただ一つ。


『元素26』


「鉄球砕けろー!」


 土屋が叫ぶと鉄球が粉々に砕けて破片が散乱する。また全速力で走って息切れをする僕たち。


「ナイスアシストだよ…!」

「どーも…」


 僕たちの高校では一年生の四月に暗記した元素記号の26番目、鉄を意味する元素記号を壁に刻むことで土屋に伝えることができた。土屋は腐っても生徒会役員だったので元素記号くらいは覚えていた。

 まぁ、普通は覚えているものだが。


「何でもありな遺跡だな」

「全くだ」


 一瞬の隙も許されない。通路を辿り管理室に着くまでいったいどれほど面倒なことがあるのかを考えると気が遠くなった。

 もし最上階に管理室があるとしたらこのピラミッドは十階建て。最悪の場合はそこまで行かなければいけない。

 こういう時セーブポイントが欲しい。いや、現実にはないが。


「階段は…あそこか」

「そうみたいですね」


 逃げた先にちょうど階段があった。この先には通路がないからどうやら端まで来てしまったらしい。


「各階の端に階段があるのか?」

「そうかもね」


 階段を注意しながら上がり二階に到着した。特に変わりのない一本道だが今まで通り罠が仕掛けてあるのだろう。気を付けなくては。


「行くか…」


 慎重に道を歩いていく。次はフェルが発動させる番だから問題はないと思うが一応安全確保のためフェルのも気を配っておく。

 しばらくは何も起きなかった。そして何事もなく端にたどり着いてしまう。


「着いたな」

「着いたね」


 着いた。これ以上先に道はない。だが階段もなかった。完全な行き止まり。


「壁を破壊」


 フェルの言葉に応じて壁が破壊された。そして目の前に道ができる。

 が、それを喜ぶ暇はなかった。壁が破壊という事象はこの階の壁全てを破壊するということにつながり、両端の壁も破壊されてしまった。そして両端の向こうにはあの骸骨が蠢いている。


「護光」


 護光を発動させて走る。この遺跡に入ってから走ってばかりだが文句を言っている暇がない。立ち止まったらエンド以外で普通に殺される。

 なんで壁にあんなにモンスターがいるんだ。


「戦ってたら死ぬな」

「分かっているから走っているんだ!」

「よしフォン、お前の番だなんとかしろ」

「なんとかって…わたしたちの走った後の床が抜けた!」


 フォンの言った通り後ろから床が抜けていき骸骨たちは落ちて行った。死んではいないだろうからまだ追ってくるだろう。

 次は僕だ。確実にとどめを刺しておこう。


「床下に落ちたら、即死」

『ヴォオオオオオオオオオ!!』


 骸骨って鳴くんだな。

 床下から響いてくる断末魔を聞きながら先に進む。幸いなことに階段がはすぐそばにあったのでマグマを消すのは階段を上がってからでよかった。

 土屋にマグマを消してもらって階段を上がる。三階に到着した。


 三階は金色の部屋だった。壁が黄金でできている。


「すごーい…」

「確かにな」


 土屋が感嘆の声を上げる。敷き詰められた黄金は眩い輝きを放っていて全部売ったら一生遊んで暮らせるのではないかと思えるほどだ。

 だがさっきも壁に骸骨が潜んでいたから不用意に触れることはできない。何かの拍子に罠が発動したら面倒だ。


「これ全て黄金なのか…」

「しかし喜べませんね。持っていこうとすると罠が発動しそうですし」

「だねー」


 どうやら考えていることは全員同じようで黄金の壁には触れようともしない。僕たちは周りを警戒しながら先を進む。

 三階の中間に来たあたりだろうか。ガコンと前方と後方から音がした。そしてあのゴロゴロという音。

 鉄球だ。前方と後方から。


「後方の床、抜けた」

「鉄球砕ける!」


 フェルの言った通り後方の床が抜けて後方から迫っていた玉は落ちた。そしてフォンの言った通り前方の鉄球は壊れた。

 しかし、砕けた鉄球はすぐに再生してこっちに迫ってくる。


「黄金の壁が僕たちの前に立ちふさがる」


 僕がそう言うと黄金の壁は形を変えて僕たちの前に立ちふさがった。その向こう側でゴーン!と音がした。

 再生するのならぶつからせて止めればいい。おそらくそのために黄金だ。

 そのあとすぐに土屋が立ちふさがった黄金の壁に穴を開けさせ通り抜ける。そのすぐ先に階段があった。僕たちは四階に上がる。


 しかし、四階に通路はなかった。階段の先には壁があり、文字が刻まれている。


『二人は楽園。残りは地面』


「これは、この先は二人しか進めないということか?」

「どうだろうな」


 何か意味がある気がする。そんなことを考えていると階段の下から何かが上がってくる音がした。よく見てみるとあの骸骨が上がってきている。


「階段は後方に立ちふさがる」


 フェルが言うと階段は…動かなかった。そういえ階段でこの力が使えるか試していない。そしてどうやら使えないらしい。


「どうするの!?二人選んで楽園に!?」

「全員地面だ」


 みんなの驚愕の視線が僕に集まる。僕が言い終わると同時に床が光ってまるで空中に投げ出されたかのような無重力を感じる。その感覚が収まると僕たちは四階の通路にいた。


「どうして?」

「地面は僕たちがいる場所、楽園は死者が向かう場所だ」


 オアツトクでは神々の庭と呼ばれている場所だ。楽園というと響きはいいがそんなものはこの世にはない。だからこそ地面を選んだ。

 僕たちはまだ生きているから、地面にはいつくばりながらもなんとか生きているからこそ選んだ。


「さてと、先に進むぞ」


 僕たちはさらに先へと進む。管理室まではあとどれくらいかかるだろうか。

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