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魔導書製造者  作者: 樹
エルフの戦争
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攻略

 教皇が死んでから三十分後、フォンが帰ってきた。僕たちはこれまで起こったことをフォンに話した。フォンは驚いた顔をしたもののすぐに教皇のいた部屋を捜索する。そして落ちている教皇の服や貴金属を見てため息をついた。


「これで教皇のスキルが解けるのか?」

「いえ、偽装のスキルはラーの加護によって成り立っていますからラーのスイッチを切らないとどうにもならないかと」

「しかも教皇を殺さないといってしまったのだろう?だったら王都に行ってラーに接触できる可能性は低い」

「あいつらの忠誠心は薄かったけどな」

「薄くてもありはする」


 ま、後で必要になるかもしれないから攻略はしておいたほうがいいだろう。わざわざ王都に戻って危険にさらされることもない。それに遺跡にはこの世界に関する何かがあるかもしれないし。


「今は深夜、あと二時間くらい休んだら行こうか」

「そうだな」

「了解しました」

「うん」


 僕たちはそれぞれの用意された部屋に戻る。ケータイのアラームを設定して目を閉じた。



 二時間後、ケータイのアラームで起きた僕はまだ起きていない三人を起こしに行こうと部屋の扉を開ける。

 扉の前にフェルが座っていた。しかもしっかり起きている。


「おはよう。なんて挨拶は早いか」

「そうですね。ですがこんばんわという気分でもないでしょう」


 僕は動じることなくフェルに挨拶を済ませてとりあえず近い部屋であるフォンの寝ている部屋の扉をノックする。しかし返事はない。もう三回ほど強くノックして声をかけてみるが返事はなかった。ドアノブに手をかけてみると普通に回ってしまった。

 仕方がない。踏み込もう。


「フォン、入るぞ」


 扉を開けて中に入る。フォンは確かに布団の上で寝ていた。

 

 布団もかけず、全裸で。


「あー…いるよな。全裸で寝る奴」


 いろいろと見てはいけないものが見えているが僕は気にせずフォンに近づきフォンの頬を叩く。フォンは少し眉間にしわを寄せてうっすら目を開けた。そしてその目で僕の姿をとらえたフォンは目を見開く。

 身の危険を感じて後ろに飛んだ直後にフォンの剣が僕の前髪の先をかすめた。


「なにすんだ」

「何をしているんだ!」


 近くに落ちている毛布で体の全面を覆い僕に非難の目をむける。僕は特に動じることなくフェルにこの場を任せてフォンの怒声が響く部屋を後にした。


 フォンの部屋の次は土屋の部屋だ。一応ノックして声をかけてみるもののやはり返事がないので部屋に入る。

 土屋はしっかりと気持ちよさそうに寝ていた。ちゃんと服は着ているのでフォンのように暴れることはないだろう。


「起きろ」


 フォンと同じように頬を叩く。土屋は毛布を頭まで被って抵抗する。

 地球ならこの毛布を無理やり剥ぎ取るだろうが、いやそもそも地球にいたらこいつを起こすこともないだろうが、僕はリモートウォーターで水を集めて毛布の上からかけた。


「つめたーーーー!」


 勢いよく起きる土屋。僕はかけた水をまた集めて窓から外に出す。


「何するの!?」

「起きないからだ」


 土屋は僕に対して怒鳴り声を上げる。

 知っている人も多いと思うが、人間は起床の際冷たい水をかけられるのが一番すぐに起きる。本当は霧吹き状のものがいいと聞いたがさすがにそこまでできそうにないもで普通に冷水をかけた。

 心臓麻痺とか問題があったと思うがHPがなくならない限り死なないので問題ないだろうと思って実行した。

 死ななかったからいいけど。


「行くぞ。日の出が近い」

「そうだけど…」


 まだ何か言っている土屋を放っておいて部屋を出て入口まで行く。入口にはフェルと、しかめっ面のフォンがいた。


「そう怒るなよ」

「怒るよ!」

「起きなかったお前が悪い」


 フォンは納得していないようだったが特に何も言わない。すぐに土屋も来て全員がそろった。

 さて、時間はあまりない。そろそろ暁に入るし昼になれば王都にいる兵士がまた来ないとも限らない。


「行くか」


 僕の言葉に三人は頷いた。蓋をあけて遺跡に潜る。

 攻略を開始しよう。



 『朝の使者の使者に訪ねよ』という暗号は子供の考えたクイズのようなものだ。まず、訪ねよというのは言葉の通り時間帯を表す。そしていつ訪ねればいいのかはもちろん朝の使者という文字に示してある。

 使者というのは何かを告げに来るもののことを言う。つまり朝を告げるものということになる。そして朝を告げるもの、朝の前兆である時間帯は、深夜だ。

 正直、答えを出した僕自体半信半疑だ。でもこれぐらいしか考え付かない。間違えていたら管理室に入れないだけだろうし、何かあれば転送魔法で戻れる。


「しかし、本当にこれが正解なのか?」

「それを確かめに行くんだよ」


 遺跡に潜り護光を使う。前に開けた穴を見つけて中に入った。そして灯る松明。

明るくなったピラミッド状の遺跡は不気味に映し出される。

 ホラー映画でよくあるシチュエーションだな。

 最初に僕、そして土屋、フェル、フォンの順番で遺跡に入る。


「トラップとかありそう…」

「床がいきなり抜けたりとかな」


 僕がそういった瞬間に僕たちの後ろのほうの床がガコッと音を立てて抜けた。そして僕たちのほうに向かってどんどんと床が抜けてくる。

 今の言葉はフラグだったのだろうか。


「走れ!」


 フォンの怒声とともに僕たちは全力で走り出した。どんどんと床が抜けていく。

 まずい、追いつかれる。


「止まってー!床抜けないでー!」


 土屋が走りながら叫ぶ。途端に床が抜けるのが止まった。


「た、助かった…?」

「みたいだね…」


 僕たちはフェル以外早速息切れしている。

 しかし、何故いきなり床が抜けたんだ?僕たちが最初通ったときは特に異常はなかった。まるで僕の言葉が引き金になったように…


「床が抜ける」


 僕がそう呟いても特に何も起こらない。やはり気のせいなのだろうか。


「大丈夫ですか?」

「あぁ。大丈夫。息も整った」

「そうですか。床に落ちなくてよかったです。たいていこういう場合は落ちたら即死ですから」

「確かにな」


 床の下を見てみるとブクブクと泡を立てているマグマがあった。落ちた床もマグマで溶けてなくなっている。

 これは、確かに即死だな。


「即死?」


 なんだろう。すっごく引っかかる。

 フェルを見て考える。最初に声を発したのは土屋、そして僕、そして僕が「床が抜けたりとかな」と言った直後に床が抜けたが床下の熱気は感じなかった。これだけ近くにあるのなら熱気を感じるはずなのに。今でも熱気はしっかりあるのに。


「フォン、マグマが無くなったと言ってみてくれ」

「何だそれは」

「いいから早く」


 フォンは怪訝な顔をしたものの「マグマはなくなった」と言った。直後に床下のマグマがなくなった。


「なるほど」


 そういうことか。どうやってできているのか知らないが便利で面倒な機能もあったものだ。


 遺跡に入った順番に具体的な事象を言うとそれが具現化する。それがこの遺跡の能力らしい。

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