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魔導書製造者  作者: 樹
エルフの戦争
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潜入

 五人の兵士とともに遺跡に潜った僕たちは、兵士が死なないように護光を発動させつつ遺跡の中を進む。遺跡のことは隠すため、トーレイに蓋を閉めてもらっているので遺跡に中は完全に暗い。

 いくらエンドが無効化できても骸骨自体が死ぬわけではないので盾役、もしくは攻撃役として兵士は使える。もちろんある程度死なないように努力はするものの別に死んだから何だという話なので僕としてはどうでもいいのだが全体の士気にかかわりそうなのでちゃんとしておこう。


「もうこれ森の下じゃないか?」

「確かにそれくらい進んだかもねー」


 しかし、どれだけ進んでもあるのは出現する骸骨と所々にある遺跡を構成していた石の破片ばかり。

 というか、ネイスの両親は誰にもどうやって気づかれずにこの遺跡に管理室なんてものを作ったのだろう。どうやってもばれるような気がするが。


「管理室って、遠いね…」

「そうですね」

「ま、そう簡単にたどり着いても困る」


 すでに息を上げている土屋をよそにフォンとフェルは疲れなど全く見せず進んでいく。さすが武術をたしなむ王女様と武術にたけている元信者。

 しかし、本当に遠い。しかも骸骨が増えてきている。


「すこし休憩するか」

「…賛成」

「うむ。そろそろ休憩したほうがいいかもな」

「では、あの石の陰でいたしましょう」


 フェルの指さす先には大きな石があった。僕たちはそこに移動して見張りを五人の兵士に任せて地面に座る。


「どこまで続くんだ…この遺跡は」

「そうだな…」


 周りを見回してみる。

 …あぁ、成程。

 フォンの言葉を聞いて周りを見回りようやく気が付いた。確かにこれはたどり着けないはずだ。こんなくだらないことに付き合っていたとは。


「全員、ちょっと離れてろ。それと周辺警戒。護光を切る」

「了解しました」


 フェルは僕の言葉に即座に反応して土屋を連れてすぐに離れた。フェルを見てフォンと兵士も僕から離れる。

 オーバーパワーとウィンドスピアを使って思いっきり壁を破壊した。その先に見えるのは、ピラミッド。


「成程。とんだ茶番だったわけだ」

「迂闊でした」


 つまり、僕たちが歩いていた通路は円形になっており、いつまでたっても同じ場所をぐるぐる回っていたのだ。トーレイに蓋を閉めてもらっていたのが災いしたが、見覚えがあったので確信した。


「それじゃ、行くか」

「…うん」


 僕たちは五人の兵士を先頭に壁の向こう側へと足を踏み入れる。一応護光を出してはいるもののなぜかここは松明が燃えていて明るい。


「大きいな…」


 ピラミッドというものを写真でしか見たことがないのだが、大きい。なぜここにピラミッドがあるのかとかどうやって作ったんだとか知りたいことはあるが今は後回しだ。このピラミッドこそ管理室なのかもしれない。

 僕たちはピラミッドに開いていた入口から中へ入った。


「中も松明が燃えてる」

「どういう仕掛けなんだ?」


 魔法だと言ってしまえばその通りなんだが何かしらの原理があるのではないかと気になる。


「さて、時間だ」


 遺跡潜入からちょうど一時間。トーレイに蓋を開けてくれと頼んでおいた時間だ。今日の収穫としては十分だろう。それに、まだ朝の使者について全く分かっていない。


「帰ろうか」


 あからさまにほっとしている兵士をよそにピラミッドから出て僕たちは上に上がった。



 トーレイによると、あれから王都は特に何も言ってこないらしい。村人も僕たちのことを匿ってくれているようだが、この村に再び兵士が来ないなんてことはないだろうから一刻も早く管理室を見つけなければいけない。


「ネイスの両親ってどんな奴だった?」


 参考までにとトーレイに聞いてみるとトーレイはどこか遠い目をして


「父親は子供みたいな奴、母親はその姉といった感じだった」


 と言った。子供みたいな奴、ということは残すものも子供っぽいということ…なんだろう。分かりそうで分からないこの感じ。


「朝の使者、ね」


 使者というのは何かを告げに来るもののことだ。それは動物でも、空想上のいきものでもいい。ましてやここ、オアツトクには神すらいるんだ。朝を告げる神なんて結構な数いる。

 だが、ネイスの両親は管理室をトーレイあたりに見つけてほしかったはずだ。だとしたらネイスの両親らしく、分かりそうで分からない問題をだすと思うんだが。


「時間帯、使者、朝を告げる…」


 朝を告げる…朝の前触れ…?


「あっ…」


 思い至った。そうかそういうことだ。これはくだらないなぞなぞだったんだ!


「…こんなことに悩んでたのか…」


 夕焼けになった空を見てため息をついた。

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