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魔導書製造者  作者: 樹
エルフの戦争
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護光

 魔鏡に魔力を込め、太陽に向ける。魔鏡は太陽の光を反射し、角度を調節して五枚の魔鏡が反射を繰り返し、階段においてある魔鏡に反射して床下にまで届いた。


「よし、いくか」

「了解です」


 床下に届いたからといって勿論、遺跡全てが光で照らされているわけではない。だが二人分立てていれば十分だ。

 そしてフェルが一番先頭、その次にフォン、僕、土屋と続いていく。骸骨だって無限に湧き出てくるわけじゃない。根絶やしにすれば出てくることはないだろう。


「どうだ?連中は」

「寄ってきましたね」


 やはり光に反応するのか。骸骨はガシャガシャと音を立ててこちらに向かってきた。


「フォン、戦えるんだな!」

「戦えるとも。一国を治めるには武力も必要だからね!」


 骸骨は顎の骨をカタカタと動かしてあの黒い球、『エンド』と呼ばれる即死魔法を放った。フェルとフォンはエンドを避けようと射線から外れるが、エンドは誰にもあたることなく光に当たって消滅した。


「実験成功」


 普通の日光ならエンドを打ち消す力はもちろんない。だが魔力を帯びた日光は太陽神の加護を得た日光はフォンの言った通りエンドを消滅させた。


「さて、第二段階だ。土屋!」

「大丈夫!予測通りだよ!」


 魔力を得た日光は準魔法といった感じになっているという予測の元土屋に解析を頼んでおいたが成功したらしい。僕は土屋の解析結果を新しい魔導書に書き込んだ。


「新魔法の完成だ」


 二冊目の魔導書の記念すべき一頁目には新しい魔法、『護光』が書き込まれた。護光の効果はただ一つ、自分の周りに光属性のバリアを張るというだけ。対闇魔法用の魔法だ。まぁこの魔法があればエンドは怖くない。だが他の魔法を発動してしまってはバリアの強度が下がってしまう。だからこそフェルやフォンといった攻撃要因が必要だ。


「上に戻るぞ」

「はい」

「了解した」

「分かったー」


 上に戻り蓋を閉める。

 さて、後は朝の使者の解読だけだ。


「トーギ!ミツキ!」

「どうしたの?ネイスちゃん」


 ネイスが慌ててこっちに走ってくる。表情がかなり緊迫していることからなにか面倒なことが起きたらしい。


「うわ、嫌な予感」


 こっそり窓から見てみると案の定、教会と兵士がいた。もう少し待ってくれよ。タイミング最悪すぎるだろ!


「床下に戻るぞ…!」

「待て…!動作感知装置が起動し始めた。今動くと見つかるぞ!」


 教会の人間の手には紫色の水晶があり、村人は地面に座って誰も動いていない。


「ネイスはここにいていいのかよ」

「子供、だから、見逃された」


 ネイスは心配そうに外を見ている。僕たちは窓の下に身をひそめて聞き耳を立てる。


「おい!そこのガキ!」

「!?」


 ネイスが呼ばれた。ネイスは一瞬僕たちのほうを見て外に出て行った。土屋が心配そうにしているが大丈夫だろう。そう簡単に村人に危害は加えない…はずだ。


「これで全員か?」

「はい!」


 隊長らしき兵士が確認している。教会と兵士を合わせてざっと二十人ってところか…蹴散らせないこともないが騒ぎになるのは困るな。


「家の中も調べろ!匿っているかもしれん!」


 当然、そう来るよな。どうする?兵士捕まえて気絶させて僕たちの中から影武者でも作って報告するか?


「いや、そこまですることはない」


 あ、なんか嫌な予感。

 兵士はネイスに近づき、剣を抜いてその首に当てた。


「情報によれば標的はこのガキの家に匿われていたらしい。だったらこのガキを痛みつければ―」


 兵士が剣の柄でネイスを殴ろうとした瞬間、トーレイの拳が兵士の顔面に飛び兵士は吹っ飛んだ。トーレイは兵士を踏んでさらに攻撃を加える。


「貴様らは決していけないことをした」


 トーレイは冷気を発しているのではないかというくらい冷めた目で、冷たい表情で兵士を踏みつけた。周りにいた兵士は突然のことに混乱したもののすぐに怒声を発しながら剣を抜く。


「…もうなるようになれ、だ」


 僕たちは窓から出てこっちを見てさらに混乱した兵士をフォンとフェルがぶっ飛ばした。


「トーギ!」

「もう乱戦になっちまってるんだ。隠れても見つかるんなら戦うさ」


 フォンが腰から抜いた剣で兵士をなぎ倒していく。その動きは洗練されていて隙がない。

 フォン、フェルよりも強いんじゃないか?


「本当に強かったんだな」

「言っただろ?」


 フォンはにっこりと笑い、最後の兵士を倒した。兵士はうめき声をあげて転がっていて、村の住人はもう遠くまで非難していて、こっちを驚きの目で見ている。

 こいつら、まだ王都で反乱を起こしたことを知らなかったのか。


「王女…様?」

「あぁ。そうだ」


 老人がおそるおそる聞いてきた。フォンはため息をつきつつ僕たちとトーレイとンリスを後ろに下げた。


「どうした?」

「いや、ちょっとな」


 フォンは僕たちの前に出て、ふぅ…と息を整えカッと目を見開き僕たちの前が光に染まり、村人が同情の目でこっちを見ている。


「おい…なにした?」

「記憶を変えた」


 記憶を変えた?村人全員の?


「わたしのスキルは『記録変換』は対象者の記憶を書き換えるんだ」

「で、僕たちにとって有利な記憶に書き換えたのか?」

「いや、真実を教えただけだ」


 成程。だからこいつらは僕たちに対して同情したわけだ。さてと、村人のほうは何とかなっているとしてこの兵士はどうしよいうか。


「…レッツ遺跡調査だな」

「では運びましょうか」


 兵士を遺跡探索に使う。この上なく正しい使い方だろ?

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 老人がおそるおそる聞いてきた。フォンはため息をつきつつ僕たちと「トーレイとンリス」を後ろに下げた。 トーレイとネイス〇 [一言] 面白いです。 引き続き読みます
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