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魔導書製造者  作者: 樹
エルフの戦争
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再会

 僕たちはあのオーガに襲われた中継地で破壊されなかったログハウスの中で休んでいた。


「ルースさん、大丈夫かなぁ」

「さぁな」


 ルースを助けるのは無理と判断して置いてきてしまったが、まぁルースも偽装のスキルの影響下にあったから危険と判断されることはないだろう。


「で、これからどうする?」

「トーレイを頼る」

「でも大丈夫か?彼らにまで危険が及ぶ可能性もあるぞ」

「大丈夫だ。トーレイの家に住むってわけじゃないから」


 警戒しなくてはいけないのはトーレイ以外の誰かが告げ口することだが、対策が立てられないわけじゃない。教皇のスキルは強力だが条件がそろえばそもそも影響すら受けないだろう。


「でもフォンさんが無事でよかったです」

「君たちのおかげさ。ところでミツキ、どうやってあの檻を壊したんだ?」

「解析しました!」


 本や漫画ででてくるのだが、どんなに硬いものでも叩く場所で一発で割れるという話。実際できるとは思ってないしできるという本も知らなかったが土屋の解析スキルをもってすればできるのではないかと思ってやらせてみたらできた。できなくても他に案はあったし、教皇もフォンが奪還されることを望んでいたから教皇体制が盤石なものになるまで手は出してこないだろう。


「ま、一種の魔法だな」

「それはそうと、この現状を打破するのは一筋縄ではいきませんよ」

「そうだな。でも手がないわけじゃない」

「というと?」

「ネイスの両親のことだ」


 要は教皇にフォンに抱いている以上の不信感を持たせればいい。


「暗殺なんて、やましいことがないとやらないだろ」

「でも教会がやったって証拠はないよ?」

「ないならでっち上げればいい。要は不信感を持たせることが重要なんだ」


 真実なんてどうでもいい。そんなもの改竄して厄介な部分を葬り去ればいい。

「…転移魔法が使えるようになった。行くぞ」


 転移魔法を発動させ村の中ではなく魔像の森、一番最初に飛ばされた場所に移動した。村に中に移動して目につくと困る。


「フェル、トーレイを呼んできてくれ」

「分かりました」


 唯一顔を知られていないフェルにトーレイたちを呼びにいかせ、僕たちは木の陰に隠れることにした。蛇に見つかると面倒くさいが今の僕たちなら何とかなるだろう。


「まさかこんな形で帰ってくることになるなんてね」

「生きて帰ってこられたんだからよかったろ」

「私も死ぬかと思ったしな」


 そうだろうよ。反乱が成功した場合たいていその時の権力者は殺されるもんだからな。ましてや王女となればなおさら。


「でも、ネイスちゃんのご両親のこと調べるにしろ何をどう調べるの?」

「そこはトーレイ次第だ。ネイスの両親を一番よく知っていそうなのはあいつだけだからな」


 トーレイ自身調査すると言っていたし、あれから進展はあったのだろうか。それにネイスの両親が書き残していた『大事』はあの会議に参加していたエルフは知っているはず。教皇が動き出す前になんとかしなくてはいけない。


「本当に厄介なことになった…」


 もう一つの書き残しである管理室が鍵となっていることは明じゃだが情報網は向こうのほうが上だ。だったらこっちの強みはなんだ?フォンの権力はあてにならない。となると…


「呼んできました」

「お、早かったな」


 フェルが戻ってきたので木の陰から出てみると、トーレイがこっちを見て目を丸くしていた。



 トーレイの協力もあって僕たちは全員床下の部屋に匿ってもらった。部屋は全員が寝られるスペースはあるのでトーレイに食料を持ってきてさえもらえればしばらくは住めるだろう。


「それで、なぜこんなことに?」


 疑問符を浮かべるトーレイに王都で起きたことを説明した。トーレイは驚きを顔に浮かべるもののすぐに懐から一冊の本を取り出した。


「これは?」

「わたしなりに管理室について調べたのでな。その報告書みたいなものだ。悪いが調べたいことがあるので先に行かせてもらう」

「フェルを手伝わせようか?」

「…手を借りよう」


 トーレイとフェルは出て行った。


「さて、どれどれ」


 トーレイから受け取った調査書を開いてみる。


『事の始まりはカッサンドラの予言だった。予言によれば近いうちにエルフが崩壊するらしい。だから彼らは最初悪神かと思って調査を開始した』


「彼らってネイスちゃんの両親かな」

「だろうな」


 読み進める。


『だが王都に行ったときおかしいことに気が付いた。教会が動いていない。悪神はエルフ存亡にかかわる大事、だが彼らより正確な予言を手に入れられる教会が動いていなかった』


「教会はより正確な予言が手に入れられるのか」

「太陽神様の加護が一番強いですから」


 頁をめくる。


『不審に思った彼らは独自の調査を開始してそしてたどり着いた。結論に』


「それが反乱計画だったわけだ」

「うん…ネイスちゃんの両親は反乱のせいで…」

「これが大事の正体だったのか」


 さらに頁をめくる。


『そして彼らは対策をたてる。それが管理室』


「ようやく管理室か」

「気になるね…」

「あぁ…」


 ようやく答えにたどり着ける。僕はゆっくりと頁をめくった。


『管理室とは、ラーの結界を一時的に操作できる装置。故に教会の情報網を警戒し詳しい場所は調べないと分からない』


「…すごいもんを作ったものだな」

「そうですね…」


 そうか。さっきトーレイ言っていた調べたいことってのは管理室についてか。


「ちょっと外に出る」

「私も!」

「わたしも行くぞ」


 土屋とフォンが立ち上がる。

 残していくより連れて行ったほうがいいか。転移魔法ももう使えるからいざとなったら逃げられる。

 僕たちは上に上がり、こっそり図書館から出てトーレイとフェルがいるという森の中に入る。森は日の光が所々から差していて綺麗だ。モンスターが居なければいい場所だったのだろうに。


「意外に奥まで行くな」

「そうだね…モンスターでないかな…」

「出ても問題ないだろう。トーギがいればな」

「自分のことは自分でやれ」


 特にフォン。そういえばこいつのスキルは聞いてないな。教皇が偽装のスキルをこいつに使わないのはこいつのスキルのせいなんだろうが一体どういうスキルなんだ?


「ねぇ、あそこ光ってない?」

「本当だ」


 しばらく歩いていると光が見えた。光の元へ行ってみるとトーレイとフェルがいた。


「おい、これは何だ?」

「トーギさん!」


 フェルが僕の元に駆け寄ってくる。光っているのもをよく見るとそれは鏡だった。四方におかれた鏡が光を発している。


「何が起こっている?」

「管理室の場所を特定するのだ」


 トーレイの声が光の中心から聞えた。光は強くなっていてトーレイの姿は見えない。


「これで管理室の場所が分かるのか?」


「分かる。四方におかれた魔鏡で太陽の光を集めれば太陽神代替である管理室まで導かれるはずだ」


 魔鏡は魔力を宿した鏡のことらしい。魔鏡の光はさらに大きくなり、僕たちは光に飲み込まれた。光は暖かく、体を包んでいくような感覚があり、一気に離れて行った。


「放出!」


 トーレイが空に両手を上げる。光は光線となって空に上がり、消えることなく曲がった。

 光の指し示す先は―

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