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魔導書製造者  作者: 樹
エルフの戦争
34/258

夜中

「君たちはバカだ!」


 食堂で夕食を食べた後、僕と土屋はフォンに怒られていた。原因はもちろん明日の決闘のことだ。


「何で勝手なことしてるんだ!?」

「戦ってはないだろう」

「そういう問題か!?」

「そういう問題だ」


 僕はフォンの言うことを気にも留めずそっぽを向く。


「ミツキ!君も止めてくれ!」

「ごめんなさい。今回はしっかりしないといけないと思うんです」


 土屋にまで言われてフォンはため息をついた。そして僕たちの頭に軽く拳骨を食らわせた。

 フォンの心配も分かる。ここに来たばかりの僕たちでさえフェルの強さは並はずれていることが理解できた。まぁだからこそフェルに勝負を挑んだわけだが。


「勝てるよ。安心しろ」

「簡単に言うがトーギ、レベルは!?」

「二十一」

「彼女は三十だ!」


 そいつはまた高レベルで。だが人間以上エルフ以下の生物を相手するのにレベルはあまり関係ない。確かにレベルが高ければ戦術の幅が広がるものの別に戦術がないわけじゃない。


「情報は手に入っている。対策も立ててあるさ」

「だが彼女をなめないほうが…」

「その彼女ってのはフェルのことか?」

「えっ?」


 フォンが疑問の声を上げる。


「教皇もスキルを持ってる。警戒すべきはべきはあっちだ。司教のスキルって知らないか?」

「…分からん」


 そうか。分からないか。だったら土屋にいてもらわなくちゃな。土屋の解析で防げるだろう。


「まぁ決まったことだ。とやかく言うなよ」

「決まっているからとやかく言っているんだよ!」


 それもそうだ。

 この後フォンの説教は二時間ぐらい続いた。



 部屋に戻ったのは日が完全に落ちてからだった。廊下では松明が燃えていて部屋では天井に松明が燃えておりなぜか部屋全体が明るい。反射魔法でも使っているのかと思って解析してもらったら魔法ではなかった。太陽神の加護なのかもしれない。


「お風呂いこ」

「そうだな。もういい時間だし」


 部屋を出て浴場に向かう。浴場は男女分かれておりもちろん僕たちは分かれて入った。

 風呂はでかく、銭湯くらいある。木の壁が自然の感じを出していて心地いい。


「さて、入るか」


 そういえばこの浴場は兵士も使うらしい。だが兵士は訓練が終わると同時に入りに来るので今はもういないらしいが。僕は一通り体を洗って湯船につかるために浴槽へと進む。


「広いな」


 だが湯気がすごい。目を凝らしながら進んでいると誰かいる。


「誰だ…?」


 さらに進むと誰か分かった。


「よう。ルース」

「と、トーギ…さん」


 随分と言いにくそうな「さん」だな。まぁどうでもいいか。


「兵士はもう入っていると思ってたんだが」

「後片付けを任されまして…」

「押し付けられたんだろ」


 ルースはズーン…と沈んでしまった。図星か。こいつは部隊でも気弱なのか。


「まぁ、頑張れ」

「はぁ…」


 僕に頑張れと言われても複雑なんだろう。だが使い倒すけどな。


「なぁ、フェル=テンってどういう奴なんだ?」

「フェル=テンですか!?」


 なぜそこまで驚く。


「あの人はヤバいですよ!エルフと人間の混血で魔力も少ないから捨てられた所を教会が拾って戦闘を叩き込ませたんですよ!あの人に勝った人今までいませんよ!」

「ふぅん」


 確かに強かったがそこまでとは。全力を出していないのは向こうも同じか。


「どうしてフェル=テンを調べてるんですか?」

「明日決闘なんだ」

「トーギさんバカです!!」


 フォンと同じ反応しやがった。


「死にますよ!?」

「死ぬつもりはない」


 僕は湯船から立ち上がり浴場から出た。そのまま浴場から出ようとして立ち止まる。


「なぁルース、お前のスキルって何だ?」

「ぼくですか?ぼくは―」


 ルースのスキルを聞いて僕はにやりと笑う。いいこと聞いた。



 部屋に戻るともう土屋がいた。しかもベッドの上で寝てやがる。


「仕方ない」


 起こしてとやかく言われるのも嫌なので毛布を引っ張り出してソファーに寝転がる。そして初心の書を出して頁を開く。

 この魔導書に書かれている魔法はモンスターの人生でもある。全てではないがあのオーガや蛇は生きていて、この書の礎になった。もちろん最大限活用するがモンスターの人生を犠牲にしてもらってまで使っていることを理解しなくてはいけない。

 そうしないと僕は最底辺以下の人間になっている。何も考えず欲望のままに行動する、自分すらも捨てる最底辺以下の人間と同じだ。最底辺の人間は自分にためにしか頑張らない。


「あのさ、いつまでそこにいるんだ?」


 思考を中止して窓の外にいるフェルに声をかけた。フェルは窓から入ってきて僕の前に立つ。僕は体を起こしフェルを見る。

 相変わらず無機物のような目だ。


「何の用だ?暗殺か?」

「返しに来た」


 フェルは手に持っている絆創膏を差し出した。


「いらねぇ」

「そう」


 絆創膏を近くにあるゴミ箱に入れフェルは僕をじっと見た。


「なんだ?」

「何故あいつは私を心配したんだ?」

「それが土屋だからだ」


 土屋は一般人だ。だからけが人を放っておけないのだ。甘い考えだが人間関係を構築するために必要な感情でもある。


「礼でも言いに来たか?」

「違う。確かめに来ただけ」


 フェルは土屋を見て少し笑った…気がした。こいつにはまだ心がある。なら試してみる価値はあるか。


「おい人間」

「なんだ狂信者」

「私の生きている意味は何だと思う?」

「知るか」


 簡潔に答えるとフェルは頷き出て行った。明日は決闘だしっかり休もう。

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