銀髪
会議は難航したもののフォンが調べた資料により方針は決まった。日食まであと一週間と五日。天碌山に住んでいるモンスターは平均二十五レベル。強い奴は三十レベルまでいくらしい。
一方、僕たちのステータスは。
トーギ=アザガミ
男 17歳 Lv 21
HP 900/900
〈スキル〉
魔導書館
ミツキ=ツチヤ
女 17歳 Lv 19
HP 850/850
〈スキル〉
ラプラスの魔
挑むにはギリギリのレベルだ。囲まれでもしたら命はないし天碌山に人員を割いていたら教会の連中が何をする分からない。フォンすら暗殺しかねない。
だから僕たちは森でレベル上げしつつ何かしらのヒントを二日以内に見つけることになったんだが、従うつもりはない。
「燈義くん。どうするの?」
「教会の戦力を落とす。けどあの攻撃信者は厄介だ。ネタが分からない限り勝つことはできない」
脅しても問答無用で殺してきそうだし、土屋に頼んでも脅しに協力してくれそうにない。そもそもあの信者を脅すことできるのか?
「なんか怖かったよね。あの子」
「だな」
まるで容赦のない動き。人を殺せと言われたら問答無用で殺しにかかる。ギルデもあいつに殺されたんだろう。
「情報収集だ。ルースに聞くか」
「ルースさん親切だもんね」
脅されていることを知らない土屋はルースを感心していた。
ルースは闘技場のような場所で訓練をしていたので案内させるのを諦め二人で回ることにした。城の中は当然だが広く、所々に日本庭園のような場所がある。城もすべて木でできていて松明があった。
「綺麗なお城だよね」
「あぁ。火災が不安だがな」
火災防止魔法をかけてあるんだろうが火災が発生したらひどいことになるんだろう。
「あの教会の人たちどこにいるんだろうね」
「教会だろ」
見えはしないが教会があるんだろう。そしてそこに太陽神の結界発動装置があるんだろうか。
「ねぇ、迷ってない?」
「ない」
城内のいままで通った場所は全部覚えている。だから教会の場所をさがしているのだが…
「ここの城ってどうやって出るんだ?」
「出入口ないねー…ていうか誰もいないね」
歩けば歩くほど誰もいなくなっている。人間を嫌っているのか誰も目を合わせようとしなかったしあからさまに離れていく人もいた。
「やっぱりルースは必要だな」
「そうだね。ルースさん優しいもんね」
それに爆弾握ってるしね。
しばらく歩いていると一番奥に会議場よりも大きくて頑丈そうな扉を見つけた。
「なんだろうここ?この先はないみたいだね
「入ってみるか」
扉の前に立っても自動で開かない。鍵でもかかっているのかと扉を力一杯押してみると少し動いた。
「開くな」
オーバーパワーを使い扉を開けた。扉の向こうにはドームのような広い場所があった。だがほかの部屋とは違い床が木ではなく土だ。しかし綺麗に整備されていてコンクリートみたいだ。
そしてそこの中心に銀髪の少女が歌っていた。僕や土屋より背は低く見た目十五歳くらいだろうか。綺麗な声をしている。
「綺麗…」
土屋が呟いた。少女はこちらに気づくことなく歌いきる。
「すごーい!」
パチパチパチ!と土屋が大きな握手がドームの影響もあり響いた。少女は驚いたようにこちらを見て何か投げた。
僕と土屋の顔の間に剣が突き刺さった。
「…なにこれなにこれぇ!?」
しばらくフリーズした土屋が叫ぶ。僕はそれを無視して少女を睨んだ。
あいつだ。さっきの攻撃信者。ギルデのときの黒ローブ。
「外したんじゃなくて外れたのか」
少女は無表情で僕たちを見ている。無機物のような目にはとても見おぼえがある。
「やってくれるなチビ」
「死ね」
また剣を投げてきた。今度は当たりそうだったので刺さっている剣を抜き飛んでくる剣を落とした。
「すご!?」
「剣の速度は覚えたしトーレイのおかげで剣技も身についてたからな」
一度見たものは忘れない。剣技を覚えたのならそれに沿って体を動かせばいいだけの話だ。
「ここから出てけ」
「でも!」
「邪魔だ。扉の陰に隠れてろ」
土屋は何か言いたげだったが黙って頷いた。
「…気をつけて」
土屋は扉から出て扉の陰に隠れる。
剣にセットウィンドをかけ少女と向き合う。少女は両手に一本ずつ剣を持っていた。
少女が僕のほうに走ってくる。僕も剣を構えて突っ込んだ。




