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魔導書製造者  作者: 樹
エルフの戦争
31/258

教会

 二時間がたち全員が会議場に集まり、会議が開始された。議題は変わらず悪神について。


「資料を読んではみたものの管理室や大事については分からなかった」

「管理室はともかく大事は悪神のことでは?」

「決めつけるのは早い。王女様が狙われたのだ」


 だがちっとも進まない。疑問をぶつけて複雑化させているだけだ。


「管理室も大事も悪神問題の関係だろ。まずは悪神について話すべきだ」

「黙れ人間!」

「そもそもここにいること自体が間違いなのだ!」

「ほぉ?わたしの決定に異を唱えるか?」


 フォンが睨むとエルフは黙った。口々に「そんなことは…」と言っている。意気地なしが。


「さて、トーギ。ネコとはなんだ?」

「僕たちの世界にいた愛玩動物だよ」


 神話ではアペピは大猫に化けた太陽神ラーによって退治された。だから弱点を挙げるとすれば猫のはずなんだが…いないのか。


「猫に似た動物はいないんですか?」

「そもそもネコとはどういった動物なんだ?」

「こんな感じだ」


 僕はケータイを取り出して猫の画像を表示する。全員が僕のケータイを覗き込み首を傾げた。


「ていうか猫の画像なんて持ってたんだね」

「買ったときに入ってたんだ」


 ケータイはメモ帳くらいしか使わないからデータフォルダはいじっていない。今回はそれが功を奏したようだ。まぁいないのなら意味はないが。


「だがこれに似た動物はいるぞ」

「そうなのか?」

「あぁ。天碌山の頂上付近にいる」

「天碌山って、あの強い魔物がいる場所ですか?」

「そうだ。オーガも住んでいる」


 行きたくないな。しかも頂上付近かよ。どんだけ強いんだよその猫もどき。


「弱点が分からなければどうとも言えないな…」

「だから話し合っているのだよ」


 議論が途切れてしまった。みんなが唸る中突然扉が開いた。入ってきたのは綺麗な女性と集落でも見た黒い人々。

 これが、教会か。


「教皇、何の用で?」

「悪神についての会議が開かれていると聞いてね。我々も参加しなくてはと思ったまでよ」


 教皇は全体を見て失笑した。僕たちを見下している。


「田舎者が集まって何ができる?落ちたものねフォン」

「落ちたつもりはないよ」


 悪口にも動じずフォンは笑顔で返す。だが目が全然笑ってない。これが権力者たちの会合か。小説の中ぐらいでしか見えないと思ってた。


「あら、そちらは…人間?」

「そうだ」


 肯定すると教会の黒服がざわついた。

 教会は人間に対してよく思っていないらしい。会談で宣戦布告されたとはいえなにか違うような…そう、まるで僕たちを恐れているような感じだ。


「なぜ人間がここに?」

「別にいいではないか。人間を入国禁止にするという法はない」

「ですが人間側の間者ということも」

「間者が魔像の森の奥に飛ばされるものかね?」


 教皇は僕たちを憎々し気に睨む。土屋はすっかり萎縮してしまい僕の後ろに隠れている。


「それで、会議に参加するかい?」

「ないわ。汚らわしい」


 よし、仕掛けてみるか。

 土屋に目くばせをすると土屋は教皇を解析し、微妙な顔になった。そして僕にこっそり耳打ちする…なるほど。


「汚らしいのはどっちだ」

「なんですって?」


 会議場が静まり返る。司教は僕を見て鼻で笑った。


「弱い獣ほどよく喚くものね」

「醜い老婆が顔を偽るくらいにか?」


 教皇の額に青筋が立つ。だが言葉を緩めることなく、むしろ嘲笑うように話す。


「幻想魔法か?くだらないな。そんなことに気を遣う余裕があるのなら悪神について調べたらどうだ?」


 教皇は自分に幻惑魔法をかけているらしい。


「この、ガキ!」


 図星を突かれて怒った教皇が右手を上げる。教皇の後にいる黒服の中から一人出てきて右手をかざすと僕の座っていた椅子が吹っ飛んで壁に当たり粉々に砕ける。

 かかった。


「謝罪しなさい」

「断る」


 まだだ。まだ緩めるな。こいつらは僕を殺せない。


「ずいぶんと便利な信者だな」

「口を閉じなさい塵」

「人殺しもそいつにやらせてるのか?」


 バン!と壁に穴が開いた。

 頃合いだな。


「フォン、会議の続きをしよう」

「…そうだな。再開しよう。教皇たちは参加するのか?しないのなら出て行ってほしいんだが」

「わたくしにあんなこと言って許されると思ってるの!?」

「許されるもなにも先に手を出したのはそちらだ。太陽神様の経典にもあるだろう?暴力を振るっていいのは相手が暴力を振るっているときだけである。と」


 教皇はフォンと僕を交互に睨み出て行った。会議場は静まり返り全員僕を見ている。僕はフォンを見て言った。


「椅子どこ?」

「そこの棚の中だ」


 あまりに当たり前の言葉に全員が拍子抜けしている。土屋を見ると親指を立てている。

 敵を知るには多少は危険を冒さないとな。

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