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魔導書製造者  作者: 樹
巻き込まれ召喚
3/258

例外

 勇者。聞きなれた言葉だ。僕が読んできた本の中に何度も登場した。悪を倒して世界に平和をもたらす存在だってことは知っている。でも、自分が勇者になるということにおいては話が別だ。

 とりあえず今、僕が言うべきことはただ一つ。


「ふざけんな家に帰せ。あと無くなった鞄返せ」

「「「  」」」


 ……なんだ今の間は。すべての音が消失したぞ。別に変なこと言ってないだろ。


「聞こえなかったのか?」

「い、いや。聞こえておる」


 おっさんは驚いているのか目を白黒させている。

 あぁそうか。このおっさん王様か。そりゃ驚くな。こんなガキに命令口調で言われたら驚く。が、遠慮はしない。呼び出したのはそっちだ。遠慮なんざするか。


「もう一度言うぞ。家に帰せ。鞄返せ」

「おい!」


 僕の肩を凪川が掴んだ。何か怒っている。


「何だ」

「話ぐらい聞いたっていいじゃないか!」


 こいつ、僕の突飛な言葉を聞いて理性を取り戻しやがったか。ウザったい正義感をまき散らすなよ。

 だが、話しを聞くくらいなら別に問題はないか。


「……分かった。聞こう」


 僕の言葉を聞き凪川は僕の肩から手を離した。確かに話を聞いたほうがいいかもしれない。そもそも帰る方法があるとも限らないか。


「実は、我がスレイク王国は滅亡の危機にさらされている」

「滅亡……?」

「ここから北にある魔族の国、ホーメウス帝国に魔王がおる」

「魔王……」


 魔王か……いや、勇者を召喚するんだからそれ相応の危機があるんだろうが……

このおっさん。なんか僕たちを警戒してるぞ。異世界から召喚したんだから警戒するのも当たり前だと思うが……これはなにか違う気がする。


「つまり、ぼくたちに魔王を倒してほしいってことですか?」


 王様は頷いた。魔王を倒せ、か。


「しかし、困ったことがあるのじゃ」

「困ったこと?」

「うむ。召喚される勇者は四人のはずなんじゃが…」


 四人?いや六人いるが……


「つまり、二人は巻き込まれたってことか……」


 僕の言葉に全員が互いの顔を見合わせる。この中に勇者じゃないのが二人。そいつらって戦えるのか?


「確かめる方法はないんですか?」

「うむ。心の中で念じてみよ。ステータスが現れるはずじゃ」

「ステータス……」


 それなんてゲーム。まぁ確認できるのはいいことだが。

 心の中でステータスと呟いてみる。すると頭の中に情報が表示された。


 トーギ=アサカミ

 男 17歳 Lv 1

HP 100/100

 〈スキル〉

 魔導書館


 魔導書館ってなんだ。だがとりあず勇者ではないな。


「どうじゃ?スキルの中に勇者はあるかの?」

「あ、あります」

「あるな」

「わたしもあります」

「あたしも」


 ふむ。どうやら巻き込まれたのは僕と土屋のようだ。土屋は全員を見回し、最後に僕を見た。

 僕は土屋から目をそらしこれから先のことを考える。


「勇者じゃない……」

「僕も違う」


 王様は一つため息をついた。周りの大臣は一斉にひそひそと話し始める。どうやら巻き込まれたのは僕と土屋らしい。

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